episode.21
あら?ちょっと失礼?
前回、クラウス様にドナドナされた、私。
キティ・ドゥ・ローズが通りますわよ。
私はクラウス様に連れて来られた学園の一室をキョロキョロと見回した。
必要最低限の調度品。
大きな執務机とソファーとテーブル。
ファイルや書類や本でパンパンの本棚。
はうっ!ここは……。
生徒会長専用の執務室。
〈キラおと〉のクラウス様ルートで度々出てきた場所だわっ!
成績優秀なヒロインは入学早々、生徒会に勧誘されるのよね。
まぁ、そこまでにある一定の条件をクリアした上で、ミニゲームもクリアしないと生徒会メンバーに入れないんだけど。
でも生徒会に入れれば、攻略対象達との距離がぐっと縮まるのよっ!
別名、高速ルート。
ちなみに生徒会に入らないルートは、回り道ルートと呼ばれていたわ。
もちろん私はどちらも攻略したけどね。
この執務室は、高速ルートに乗って、クラウス様攻略ルートに入らないと出てこないのよ。
ここでも数々の貴重なクラウス様超美麗スチルが……!
思い出すだけで鼻血ものだわっ!
私は(安定の)クラウス様の膝の上で、あっ、あの辺りでクラウス様とヒロインがっ!
とか、このソファーでもクラウス様とヒロインがっ!
と、ワクワクドキドキが止まらず。
挙動不審丸出しで部屋中を眺め回した。
「キティ、ここがそんなに気に入った」
クラウス様の声に私はハッとして後ろを振り返り、フンスフンスと頷いた。
だってあの〈キラおと〉の舞台になった一室よ〜。
画面を越えての聖地巡礼っ!
尊いっ!
「そっか、じゃあこの部屋は今日からキティと俺の部屋だね」
えっ?
私は驚いて目を丸くした。
「だってキティとは学年が違うから、学園内ではなかなかこうして2人きりになれないだろ?
丁度、学園内にキティと俺だけの小さな邸でも増築しようかと考えていたところだったんだけど……。
キティがこの部屋を気に入ったなら、ここでも良いかな?」
私はクラウス様の言葉に慌てて何度も頷いた。
何故、学園内に邸を建てようとするっ!
あかんっ!
ダメっ!絶対っ!
「ねぇ、キティ、そう言えばさっきはたくさんお喋りしていたね。
人前では殆ど喋らないから、ビックリしたよ」
楽しそうに笑うクラウス様に、私は顔を赤くした。
あんな貴族ぜんとした事、偉そうに言っちゃったけど、大丈夫だったかな?
「でも、あんな風に俺の事、婚約者として言い切ってくれて、素直に嬉しかったよ。
ありがとう……」
クラウス様は私の顎を優しく掴んで、そっと上を向かせ、唇にキスをした。
甘いキスに吐息を漏らすと、自然に舌が入ってきて、私の舌と絡む。
それに私も必死で応えた。
舌を優しく吸い上げられたり、上顎をなぞられる内に、甘い痺れが脳を揺らす。
小さな水音を立て、唇がやっと離れた時には、私の身体はすっかり火照っていた。
クラウス様は優しく微笑んで、親指で私の唇をなぞった。
「でも、残念だな。
俺は今からキティにお仕置きしなきゃいけない」
クラウス様の言葉に、私は驚いて目を見開いた。
「お……し、おき?」
私が聞き返すと、クラウス様はくすくす笑って、頷いた。
「そう、お仕置き」
私はショックでさぁっと青くなる。
えっ?何でっ?
やっぱりアレ?
何かが不敬レーダーに引っ掛かった?
不敬罪で一発アウト?
私の運命、デッドオアデッド⁈
焦ってワタワタしていると、クラウス様はふふっと楽しそうに笑って、私の後ろの髪をかき分けうなじにチュッとキスをした。
「うひゃあっ!」
不意を突かれて、間抜けな声を上げる。
クラウス様は私のうなじに顔を寄せたまま、あははっと笑った。
「うひゃあって、キティ、可愛すぎるんだけど」
そう言ってうなじにキスを繰り返す。
私は訳が分からず、姿の見えないクラウス様に声を上げた。
「あ、あのっ、クラウス様っ!
お仕置きってどうして?
私、何かしましたか?」
私の問いに、クラウス様は顔を上げて、う〜ん?っと首を捻った。
「キティは何もして無いかな?
でも、キティが魅力的なせいで、男ばかりか女まで寄ってくるのは頂けないね」
クラウス様の言葉に、私はカッと頭に血が上るのを感じた。
なっ!理不尽っ!
それ、私本当に悪く無いしっ!
ってかね、女までって言うけど、フィーネ嬢は私にじゃなくて、貴方に寄ってきてたんじゃないっ!
抗議だっ!デモだっ!
理不尽許すまじっ!
私は拳を固く握り、クラウス様に物申そうとクルッと振り返って、すかさずクラウス様に唇を奪われた。
さっきより激しく舌を絡められ、甘い吐息を吐いてしまう。
すっかり蕩けさせられた私を、クラウス様は愛しそうに見つめ、優しく微笑んだ。
「ね、だから、お仕置き。
覚悟してね」
「……あっ……はい……」
私はうっかり了承してしまい、ハッと我に返った。
って、違ーーーーうっ!
何、……はい。とか言っちゃってんのよっ!
はい、じゃない、はい、じゃ。
そこはノーっ!
断固としてノーっ!
ググッと再び拳に力を込めた私は、だがしかし、クラウス様に後ろから胸を揉み上げられ、またしても、うひゃあっ!と間抜けな声を上げてしまう。
いつの間にかブレザーのボタンを外されていて、制服のブラウスの上からやわやわと胸を揉まれている。
「んっ、あっ、ちょ……と、クラウス様、私の話を……」
いかんっ!これは非常にまずいっ!
またこのままなし崩しに色々されたら絶対に気絶するっ!
気を失う自信しかないっ!
だいたい失神しちゃった後って、私どんな顔してんだろ?
いや絶対マヌケ面してるっ!
なんかそんな気がするっ!
いくら私が見た目気にしない喪女とはいえ、流石に失神顔をそう何度もクラウス様に見られたくないっての!
これでも乙女の端くれ……いや、ちょっと端くれも自信ないけど……でもっ、そのくらいの恥じらいはあんのよぉぉぉぉぉっ!
うっうっと心で咽び泣きつつも、クラウス様の手のひらに包まれている感覚がもう至福というか、何というか……。
布越しに感じるクラウス様の体温でバターみたいに溶けちゃいそうですとか、いや、そんな事は………。
「うん?何?キティ、話、してみて?」
意地悪く聞くクラウス様に、私はグッと唇を噛んだ。
ま、負けるな、私!
ここで負けたら、理不尽を許容する事になるんだから!
何かもうちょっと、そんな事どうでも良くない?と言う脳内の軟弱な私を張り倒し、私は自分を奮い立たせた。
「で、すから、私は何も……してなっ、あんっ!
してな…からっ!おしお…きは、もうっ…んっ、やめっ」
クラウス様の手の動きに翻弄され、私は既に息も絶え絶えだった。
堪えきれない熱が脳まで迫り上がってきて、焦ったさに息が上がる。
「うん、それで?」
耳元で優しく囁くクラウス様の声にまで、敏感に反応してしまう。
だけど私は、必ず勝つんだっ!と闘志を燃やして、涙目で熱い息を吐きながら、クラウス様を振り返った。
「あっ……もうっ、服の上から、いゃぁっ……もっと…ちゃんと触ってほしいのにっ……」
ノーーーーーーーーーッ!!!
大事な場面でっ!
呼んでもないのにっ!
淫乱Cカップ令嬢降臨ーーーっ!!
今この場面で、出てこない訳ないわよね……。
知ってた……知ってたけどっ!
……出来れば出てきてほしくなかったわ、相棒……。
「ああ、キティ、最高に可愛い。
大好きだよ」
羞恥で顔を真っ赤にする私の耳元で、クラウス様が熱い吐息と共に呟く。
私の痴態を馬鹿にしたり揶揄ったりせず、大好きだよと言ってくれる。
クラウス様は私のブラウスのボタンを素早く外して、下から下着をズラし、素肌を優しく撫でた。
布越しではない、クラウス様の熱い手のひらに胸を包まれ、私は歓喜の声を上げる。
その私の様子にクラウス様は更に興奮したように息を荒くした。
ハァハァと言うクラウス様の吐息に、身体が蕩けてゆく。
例の子爵令息の時とは全く違う。
嫌悪感なんて、微塵もない。
それどころかクラウス様が私に興奮してくれている事が、涙が出る程嬉しかった。
ああ、私、クラウス様にしか興奮されたくない。
そういった対象になるのは、クラウス様だけが良い。
私……クラウス様が、好き。
画面越しじゃない。
本物のクラウス様が、大好き。
画面の中の礼儀正しく品行方正な、理想の王子様じゃない。
いつも私を困らせて、でもとびきり優しくて、ドロドロに私を甘やかす。
いやらしくて変態な、クラウス様が、好き。
だけどそれを素直に伝える事の出来ないもどかしさを、私は目に涙を浮かべて耐えるしかなかった。
「ねぇ、キティ。
こんな風に君にちゃんと触るのは【祝義の謁見】以来だね?
あの時の事、ちゃんと覚えてる?」
そう言いながら、クラウス様は私のスカートをたくし上げ、太腿の内側を優しく撫で上げた。
「あっ、あっ……は、い」
私は息も絶え絶えに何とか答えた。
確かに、クラウス様は執務にお忙しく、私の私室を訪れる事は無かった。
中庭でお茶をしたり、夕食をご一緒したり、学園の登下校の馬車の中くらいでしか、2人きりになることも無い。
(正確には、2人きりではないが)
本当にあの時以来のクラウス様の感触に、私の体はずっと疼きっぱなしだった。
あの時の快楽を、私の体はしっかり覚えているらしい。
「本当かな?だいぶ時間が経ってしまったから、心配なんだ。
これは?どう?覚えてる?」
クラウス様の長い指が、ブラウスの上からお臍をなぞった。
「あっ、んっ、おぼ、覚えてい、ます」
私はもどかしさに膝を擦り合わせた。
「ねぇ、本当にこれだけで良いの?
さっきみたいに素直に言って。
俺はキティの望みなら、何でも聞くよ?」
も、無理ぃぃぃぃっ!
許して!
所詮、へっぽこ淫乱Cカップ令嬢なのっ!
羞恥心を捨てきれないからっ!
死ぬっ!恥ずか死ぬっ!
そ、そりゃあ私だって、クラウス様とだったらもう少しくらい先に進んでも良いかな……とかチラッと思っちゃったりしちゃったりするけど、でもでもっ、やっぱ無理っ!
いくら好きでも無理っ!
だってクラウス様はヒロインと恋に落ちて、いつか私は婚約破棄されちゃうんだもんっ!
そんな人とこれ以上先を経験しちゃったら、もう私、目も当てられないじゃない?
婚約破棄後なんて燃えカスよ、カスよカスっ。
………あっ、でも待って。
どうせクラウス様に婚約破棄されたら、私一生誰とも付き合ったりしないし、そもそも生きているのかも分からない訳で……。
どうせなら、ほんのちょっとくらい経験しとくのも……アリ?
いやっ!アリませぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!
もう出てこないでっ!私の中の淫乱Cカップ令嬢〜〜〜っ!
ってかっ!今現在っ!生乳揉まれてるだけで一杯一杯だからねっ!
それもアンタがおねだりしたからこうなってるからぁぁぁぁぁぁぁっ(泣き)。
思考がとっ散らかってアワアワとしていると、クラウス様がクスリと笑って私の耳元で囁いた。
「ああ、キティ。可愛い。
今すぐめちゃくちゃにしてしまいたいくらい」
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーっ!
孕むっ!イケボで孕むっ!
なんか下腹部にダイレクトアタックしてくるぅぅぅぅっ。
私はキュウッと目を回してフラフラとソファーに横たわった。
クラウス様はクスクス笑いながらそんな私の側に跪いて、優しく髪を撫でたり、指先にキスをしてくれた。
「ああっ、夢みたいだったよ、キティ。
君があんまりに可愛くて美しくて……。
俺のフェアリー、お仕置きして、ごめんね。
でも、このお仕置きは気に入ってくれたみたいだね、良かった」
夢心地で語るクラウス様に、私は力無く微笑んだ。
……も、勘弁して……。
何か言いたくても、力が入らない……。
頭がまだ痺れていて、何も考えられない…。
私はクラウス様に触れられた感触の余韻に浸りながら、自分の姿に、ああ〜っと涙が出そうになった。
うっうっ、どうしょう……。
制服はぐしゃぐしゃに着崩れて、髪も乱れちゃってるし。
ベソっと情けない顔をしながら、私はそれでも何とかしないとと腕に力を込め上半身だけ起こした。
その時、はだけたブラウスの隙間から入学祝いにクラウス様に頂いたネックレスが、キラリと光を反射させ、胸元で輝いた。
それを見て、クラウス様が口を片手で押さえ、感嘆の声を上げた。
「ああっ、何てエロ……美しいんだ」
んんっ?何て?
今何か言い直さなかった?
裸にシャツとネックレスだけ、とかマニアックな注文をされる未来がチラッと垣間見えたような気がして、私は慌ててはだけたブラウスを胸元で掻き合わせた。
しかし、見れば見るほど私、ボロボロ……。
どうしよう……と、再びベソっとしていると、クラウス様がああっと思いついたように、手のひらを私に向け、短い呪文を唱えた。
「クリーン」
途端に私の姿は元に戻った。
ぐしゃぐしゃだった制服も、朝王宮を出た時のままピシっと皺一つなく、乱れた髪も元通り。
しゅごい、生活魔法。
便利過ぎるんですが。
私もせめて生活魔法くらい使えたらな〜っと羨ましげにクラウス様を見つめてしまった。
「これくらいなら、いくらでも使えるから。
今後も心配はいらないよ」
クラウス様の眩しい笑顔に。
あっ、あるんだ、今後……。
と、思わず考えてしまった。
神聖な学舎で、あるんですね。
あんな事やこんな事しちゃう、今後。
便利な生活魔法があれば、何の問題もないですもんね〜……は、はははは……。
ちなみに、防音魔法もバッチリかけてあったと教えられ、なるほど、〝今後〟は避けられないなっ!と、涙したのだった……。
お仕置き、怖い。
もう、お仕置きされないように気を付けよう……。
そう思った後、あれ待てよ?
今回のは気を付けようが無かったのでは?
っと思いあたり……。
理不尽だっ!
と、私は再び鼻息を荒くした。
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