episode.19

皆さま!事件ですわっ!(2回目)。

シシリア様が!何故ヒロインの出会いイベントの事をっ⁈

須く見よっ!ですわっ(興奮)。






私がシシリア様と、シシリア様の馬車に乗り込もうとしている時、クラウス様がどこからともなく現れた。


「キティ?どこに行くの?」


「私の家で、女の子同士の交流会ですわ」


クラウス様の言葉にシシリア様が答える。


一瞬、お二人の間でバチバチッと火花が飛んだような……?

……ふっ、まさかね。


「クラウス様は生徒会のお仕事があるのでは?

キティ様の事は引き続き、私にお任せ下さい。

夕食前には王宮にお帰し致しますわ」


にっこり微笑むシシリア様に、クラウス様は溜息をつき、仕方無さそうに頷いた。


「では、護衛騎士を5人ほど」


「必要ありませんわ」


クラウス様の言葉に被せ気味で答えるシシリア様。


「我がアロンテン家と、私を侮らないで下さいまし」


ギラリとクラウス様を睨み付けるシシリア様。


「そんな事は、俺の単独討伐数を超えてから言ってくれ」


ニヤリと笑うクラウス様に、負けじとシシリア様もニヤリと笑う。


「あら?討伐数なら私今貴方と同列に並びましたけれど」


クラウス様は一瞬目を見開き、直ぐにやれやれといった感じで溜息をついた。


「……お前と一緒なら、ファイヤードラゴンくらいなら退けられるか」


シシリア様はクラウス様にすぐさま不満そうな声を上げた。


「あら、レヴィアタンくらい、退けますわよ」


クラウス様はますます深い溜息をついた。


「分かった。夕食までには必ず帰すように」


念を押すようなクラウス様の言い方に、シシリア様は片眉を上げて鼻で笑った。


「はいはい、お約束致しますわ」


面倒そうに答える。


何だか……とっても仲良し?

会話の内容とか分からなかったけど。

シシリア様とフラワー5って皆んなとっても仲良しよね?


えっ?もしかしてっ!

シシリア様こそがヒロインっ⁈

裏ヒロインっ⁈

そういう展開っ⁈


ぐわっと目を見開いて、今自分の気付いた新説に鼻息荒くシシリア様を見つめていると、シシリア様は楽しそうに笑った。


「もう、キティ様は分かりやすいですわ。

でも、違いますわよ」


エスパーっ!

口に出してもいないのに、否定された。


ちぇ〜っ。衝撃的な新展開になると思ったのに〜。 


口を尖らせていると、何故かそこにクラウス様がチュッとキスしてきた。


「キティ、いい子でね。

また夕食の時に」


そう言って颯爽と去っていく……。


私は口を尖らせたままの顔で固まってしまった。


くっ、油断したっ!

神聖な学舎で、不埒な事をしてくるなんて……って、乳揉まれながら登校しといて、油断もなにもないけど……。


「さっ、キティ様。

邪魔者も居なくなりましたし、早速参りましょう」


まったく動じないシシリア様に連れられて、私はシシリア様の邸に向かう。


シシリア様の邸は王宮から程近い場所にあった。


ものすごい豪邸に、私は口をあんぐりさせる。


門にたどり着いても、入り口までまだまだ遠い……。


何かしら……蜃気楼?

邸が蜃気楼に見える……。


門からそのまま馬車で玄関に向かう。

辿り着いた立派な玄関には、使用人の方々がズラーリ。


「お嬢様、おかえりなさいまし。

ローズ侯爵令嬢様、ようこそおいで下さいました」


私はにっこり微笑みで答える。

スカートの中はガクガク震えっぱなしだ。


「中庭でお茶に致しましょう」


私はそう言うシシリア様に着いて、立派な中庭に出る。


中央に置かれた豪華な机の上には、既にティーセットの準備が出来ていた。


私は静かにそこに座り、自分の前に用意されたカフェオレに驚いた。


「この前、お好きだとお聞き致しましたので」


優しく微笑むシシリア様に、私もにっこり笑い返した。


「覚えていてくださったのですね。

ありがとうございます。」


シシリア様に勧められるまま、私はカフェオレと美味しいお菓子を頂いた。


「最近、コーヒーの飲み方も色々と帝国から伝わってくるようになりましたね」


へ〜っと私はクッキーをもぐもぐしながら、頷いた。


「キティ様のお好きな飲み方は、カフェ・オ・レと言うそうですよ」


再びへ〜っと頷いて、私はシシリア様を見た。


「ですが、王国ではすっかりカフェオレと呼ぶのが定着しましたわね。

第二王子殿下のご寵愛厚いキティ様が、いち早くその飲み方を実践されて、流行りに敏感な王宮の淑女達がこぞってカフェオレを飲み始めましたから」


え〜!発信、私?

私はちょっと照れて頭を掻いた……。

そして、一気に冷や汗を吹き出した。


「帝国より飲み方が伝わる前から、カフェオレは王宮の淑女達のステータスとなってしまいましたわね、ね、キティ様」


に〜っこり笑うシシリア様に、私は蛇に睨まれた蛙のように、ガマ油をダラダラ流す。


「ちなみに、私のこの飲み方も、ブラックと呼ばれ始めたのは、つい最近なんですの」


えっ?と私は目を見開いた。


「最初、王宮では、これをコーヒーと呼んでいましたのよ。

他の飲み方など知りませんでしたから。

キティ様の考案されたカフェオレと比較して、ブラックと呼び出したのです」


そう言われて、私はぶわっと【祝義の謁見】に向かう途中の廊下で、シシリア様と交わした会話を思い出した。


『キティ様はカフェオレ派なのね、私はブラックが好みなの』


そうだ、あの時!

シシリア様は既にカフェオレやブラックという飲み方を知っていたみたいだった!


私がますます目を見開いてシシリア様を見つめると、シシリア様はそれは楽しそうに笑っていた。


「私達にはコーヒーの方が身近だったものね。

当たり前過ぎて、やっぱりあの時の会話に違和感を感じて無かったのね?」


瞬間、私はガターンと立ち上がった。

机の上の食器がガチャっと音を立てる。

淑女にあるまじき行いだわ。

でも今、それどころじゃないのっ!

ごめん遊ばせっ!


「や、や、やっぱり!

シシリア様も転生者っ⁈」


私の素っ頓狂な声に、シシリア様はとうとう堪え切れないと言ったように大きな声で笑った。


「アッハハハハッ!けっこーヒント出してきたのに、ぜ〜んぜん気が付かないんだものっ!

あ〜可笑しいっ!」


シシリア様が目の端に涙を滲ませて笑い転げているのを、私は真っ赤な顔で見つめた。


き、気付いてましたぁっ!

そうかな?もしかして、そうなんじゃないっ⁈て思ってましたぁ……。


ヒロインの出会いイベント云々言われた辺りで……。


それ、もう正解言ってくれてんじゃんっ!

とか、野暮は言わないで……。

今、自分の鈍さに茹で上がりかけてるからっ!


「シ、シシリア様は、いつ気が付いたんですか?」


私が周りを気にしつつ小声で聞くと、シシリア様は目の端の涙を拭いながら、ふふふと笑った。


「防音と幻影の結界を張ってあるから、好きに喋ったり振る舞ったりして、大丈夫よ。

周りに音は漏れないし、私達の姿もお淑やかにお茶しているようにしか見えないから」


えぇっ!そうなのっ?

魔法⁈いつの間に魔法発動したのっ!


私はキョロキョロと辺りを見渡してみるけど、魔力量の少ない私では探知する事など当然出来ない。


ガックリと項垂れて椅子に座り直す私を、シシリア様は相変わらず楽しそうに眺めていた。


「それで、さっきの質問ですけど、私が転生に気付いたのは10歳の時。

キティ様もそうだと気付いたのは、割とその直ぐ後ね」


シシリア様の返答に、私はあんぐり口を開いたまま、動けなくなった。


「私も〈キラおと〉が好きでよくやっていたから、貴女があのキティ・ドゥ・ローズだと直ぐに分かったし。

だから、原作のキティとは違う事にも気付いたの。

もしかしたら、この子も転生者じゃないのって思って注意して見ていたら、あっ、間違い無いなって思う事ばかりで」


ええ……そうでしょうね。

だって私、努力したもの。

めっちゃ努力したもんねっ!


「それで、私も悪役令嬢でしょ?

だから、何だか貴女の事も気になって見てたら、どんどん放っておけなくなって……」


「えっ?シシリア様が悪役令嬢っ?」


私の驚きの声に、シシリア様は目をパチクリさせた。


「そう、私も悪役令嬢。

〈革命!レボリューション キラメキ⭐︎花の乙女と誓いのキス2〉の悪役令嬢、シシリア・フォン・アロンテン公爵令嬢、が、私」


えっ?えっ?えっ?


「〈革命!レボリューション キラメキ⭐︎花の乙女と誓いのキス2〉⁈

2?〈キラおと〉2⁈」


私は驚いて、また椅子から激しく立ち上がった。


シシリア様は目をパチパチさせ、ややしてハッとした顔で私に聞いた。


「キティ様って、前世で何歳で死んだの?

死亡した時の西暦は?」


私はそう聞かれて、申し訳無さそうに眉を下げた。


「……実はその辺、よく思い出せなくて……」


申し訳無さそうにシシリア様を見ると、シシリア様は納得したように頷き、自分の顎に手をやった。


「私は自分の死んだ時の事をよく覚えているから、キティ様もそうだと思い込んでいたけど、そうね、普通はそうかも……。

つまり、キティ様は2の発売前に亡くなった可能性が高いのね」


考え込んでいるシシリア様に、私はおずおずと聞いてみる。


「ちなみに、シシリア様の前世の死因は?」


「事故よ」


冷静にスパッと返されて、私は驚きを隠せなかった。

じ、事故って……。

大変な思いをしたのに、シシリア様強い!


「そ、それで、その。

〈キラおと2〉の悪役令嬢がシシリア様で……」


「〈革命!レボリューション キラメキ⭐︎花の乙女と誓いのキス2〉」


わざわざ言い直す、シシリア様。

せっかくお茶を濁そうとしたのに……。


「革命……」


「レボリューションよっ!」


シシリア様はバンッと机を叩いて立ち上がった。


「重複してんのよっ!!」


あちゃーーっ!

やっぱりソコですよねっ?

実は気になって仕方なかったのよ、ソコ。


「そんなアホっぽいタイトルの悪役令嬢に生まれ変わるだなんて……泣くに泣けないわ……」


私は静かに両手を顔の前で合わせた。

私もよっぽどだと思うけど……シシリア様も不憫すぎる……。


「ちなみに、攻略対象達は、あのバカ第三王子とそのアホ取り巻き達よ……」


ああ〜〜っと私は眉根を指で押さえた。


第三王子殿下とその取り巻き達は、たまに王宮で会うけど、アレだ。

なんかもうアレな人達だ……。


昔の日本でいうところの歌舞伎者?って感じで、まぁ、色々と拗らせてくれてる。


見てて、何だか忍びないのっ!

ぐっ!……俺の隠されし邪眼がっ!とか言い出しそうな服装してる人なんかもいて……。

分からないでもないけど、そ〜ゆ〜のは是非自室でどうぞ!お願いだからっ!

私の秘匿されし黒歴史を掘り起こさないでっ!


「前作がすごくよくある平凡な作品だったわりにそれなりに人気が高かったのは、従来の悪役令嬢スタイルを無視した、キティ・ドゥ・ローズの存在があったからよ」


あっ、まぁ確かに。

それでじわじわ注目されたのよね。

そして落とされる超美麗スチル沼……。

嵌まった淑女達の叫び声が、夜な夜なその沼から聞こえてくると言う……!


「それに味を占めた製作陣が、今度はそれをヒロインで再現しちゃったのが〈キラおと2〉な訳」


えぇ……もう嫌な予感しかしない……。


「ヒロインは破天荒な男爵令嬢。

校則なんて関係ないわ!な改造ミニスカ制服で、貴族のしがらみや淑女の嗜みなんかをバッタバッタと薙ぎ倒す!

学園で気が合った第三王子とその愉快な仲間をお供に連れてっ!

そう、学園革命!」


「レボリューションっ!」


私は思わず、シシリア様と同じように右手を天に向かって突き上げ、叫んだ。


シシリア様は力が抜けたように、ヘナヘナと座り込んだ。


「もう、ね。どっから突っ込めばいいのやら……」


「心中お察しします……」


私は静かに黙祷を捧げた。


「それで、シシリア様はどんな悪役令嬢なんですか?」


私の問いに、シシリア様は自重気味に笑った。


「対する悪役令嬢である私は、超優等生の歩く貴族辞書。

貴族はこうあるべきーとか、口煩いロッテンマイヤータイプね」


えーーっ!すごくまともっ!

キティとの格差がエグいっ!


「じゃあ、断罪イベントも?」


「あるわよ」


アッサリ言い放つシシリア様に、私はぶんぶん腕を振って興奮気味に聞いた。


「どうやって断罪イベントを回避するつもりですか?良ければアドバイスをっ!」


「しないわ」


「えっ?」


私の間抜けな顔を見て、シシリア様はちょっと笑いながら言った。


「しないわ、断罪ルート回避。

必要ないから」


???

私は訳が分からず、首を傾げた。


「ちなみに、キティ様にも必要ないわよ」


続くシシリア様の言葉にますます首を傾げる。


「そもそも、ゲーム自体始まらなかったでしょ?」


あっ!

そのシシリア様の言葉に、私はぶんぶん腕を振る。


「そう、それっ!

何でヒロインの出会いイベントが起きなかったのっ⁈」


私の問いに、シシリア様はピッと私を指差して、ニヤリと笑った。


「それは、キティ様が何もしなかったから」


シシリア様の返答に、私はますます首を傾げる。

もう傾げ過ぎて、ちょっと痛い。


「〈キラおと〉の出会いイベントをもう一度、正しく思い出してみて」


「えっ、だから、正門の近くで転けてしまったヒロインを……」


「キティが、お前!この方を誰だと思ってるのっ!お前如きが道を塞いで良い方じゃないのよっ!て、キャンキャン」


シシリア様が続けてくれた言葉に、私はポンッと自分の手を打った。


あっ、そうそう。

それで、クラウス様が、キティに言い過ぎだと怒って、ヒロインに手を差し出して、抱き起こす。(キミ、大丈夫?超美麗スチル発動っ!)


「で、うちのお兄様の時は?」


「えっと、キティが、男爵家の癖にそんな難しい本読める訳ないのにっ!見栄を張っちゃって、本当に浅ましいっ!て、キャンキャンヒロインにウザ絡みして……」


そう、それで呆れたレオネル様が、キティを追い払って、ヒロインの持っている本が自分の物と一緒だと気付いて……。


「ノワールの時は?」


「だから、キティが、お前に水をやられる花が可哀想だわっ!男爵家の浅ましい手で水をやられた花は直ぐに枯れるわねっ!

って、キャンキャンウザ絡みして……」


んっ?待ってよ?


そこに偶然通りかかったお兄様が、うちの妹がごめんねって、流れになって……。


あら?あらら?


そうよっ!ジャン様もミゲル様もっ!


木刀が飛んできて危ない思いをしたヒロインに、キティが、ザマァみろっ!男爵家如きが云々キャンキャン……で、キティはジャン様に怒られて……その後ジャン様はヒロインにって流れで。


教会でも、お前如き、神様の視界にも入らないのに厚かましいっ!てキティがキャンキャン……。

キティはミゲル様に諭されて、追っ払われて。

その後落ち込むヒロインに、ミゲル様が、神はどなたにも門戸を開いておいでですって優しく話しかけるのよね………。


全ての出会いイベントを細かく思い出した私は、大変な事に気付いてしまった!


「わ、私がもしかして、出会いイベント発生条件だったっ!」


「そうね〜。キティはストーリーの進行にはまったく関係ないんだけど、出会いイベントだけは別で、ガッツリ関係してくるのよね〜」


のほほんとしたシシリア様の声に、私はワナワナと体を震わせた。


「朝も言ったけど、あの人達がそもそも男爵家程度の身分の人間にこちらから話しかけたりはあり得ないのよ。

勘違いされて面倒な事になるのが目に見えているもの。

でもそれが、幼馴染の高位貴族のご令嬢をフォローする為であれば、話は別ね」


そ、そうだったのね……。

そうだったんだわっ!


私はシシリア様の言葉に、体だけじゃなく、歯もガチガチいわせて震えた。


私っ!なんて事をっ!

知らずにとはいえ、ヒロインの出会いイベントを全潰ししてたっ!


かたじけないっ!

かたじけなさすぎるっ!

何たる失態っ!


「わ、私、今からでもっ!」


今にも駆け出そうとした私は、何故か体がピクリとも動かず、そのまま自分の意志には反して椅子にストンと座った。


これって、シシリア様の魔法?

思った途端にドキドキワクワクしてしまった。


「必要ありませんわ」


急にシシリア様が、シシリア公爵令嬢然とした喋り方に戻る。


場がピリっとして、私は居住まいを正した。


「落ち着いた?いやね、厳しい淑女教育のせいて、体が勝手に反応しちゃうもの」


途端にシシリア様が厳しい表情を崩し、ふふっと笑った。


「キティ様はこのまま何もしなくていいのよ」


諭すように言われて、私は訳が分からずじっとシシリア様を見た。


「私、あのヒロインを朝からずっと観察してたの。

この世界だけに存在するオリジナルなのか、それとも前世の記憶を持った転生者か」


そう言って、シシリア様は溜息をついた。


「どうやら、彼女は後者のようね。

しかも〈キラおと〉を知ってる人間」


そこで言葉を切って、シシリア様は厳しい表情をした。


「つまり、自分が攻略を進めると、人が1人死ぬって分かっている人間」


あっ!……と私は小さく声を上げた。


「そうよ、いくらストーリーには関係なく勝手に死ぬとは言っても、自分が攻略を進める事でキティが死ぬ事は分かっている筈よ。

それなのに、彼女は出会いイベントを発生させようとした……」


シシリア様は冷え切った瞳の中に、微かに炎を揺らめかせ、蔑むように言った。


「そんな人間に、キティ様が何かしてあげるなんて、馬鹿げてるわ」


そうか、確かに。

ヒロインが攻略を進められ無ければ、もしかしたらキティは助かるかもしれない……。


まぁ、関係なく死にそうだけど……キティ故に。


でも、ちょっと希望が見えたかもしれない。

 

明るくなった私の表情に、シシリア様はほっと息をついて笑った。


「あっ、それで、シシリア様の方のヒロインはいつ現れるの?」


まさか同時進行とかでは無いよね?

ヒロインが渋滞なんて事、ややこしくて困るんだけど。


「私の方は来年の今頃よ。

2学年に上がった頃にヒロインは転入してくるの」


来年の今頃……。

原作キティは来年の今頃には、何らかの理由で死んでしまっている。

17歳の誕生日直前に、キティは死ぬのだ。


私も永遠の16歳になってしまうのだろうか……。

あっちょっとこのフレーズには惹かれるわね。


「大丈夫よ。貴女は私達が守るから」


シシリア様が、ギュッと両手を握って力強く言ってくれた。

私は頷いて、顔を赤くした。


「あの、ちょっと…お願いが……」


不思議そうに首を傾げるシシリア様に、私は思い切って言う。


「シシリィって呼んでも良いっ?」


顔を真っ赤にさせる私につられるように、シシリア様も頬を染めて、答えてくれた。


「もちろんよ。私もキティって呼ぶね」


そのまま私達は照れながら笑い合った。


思わぬところで出会った転生者仲間。

私達はちょっと特別な絆を確かめ合うように、両手を握り合った。

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