episode.18
皆さま、ご機嫌よう。
数々のご令嬢様方の婚期を逃すところでした。
正に悪役令嬢、キティ・ドゥ・ローズでございます。
……本当にごめんなさぃぃぃぃっ!(土下座地面めり込み)
麗かな春の日差しが暖かき今日の良き日。
キティ・ドゥ・ローズ。
王立学園の入学式でございます。
どっどっどっどっどっ!
朝から早鐘のように鳴る心臓。
流れる冷や汗。
もはや青いを通り越して、土気色の顔色。
今日も絶好調だわ⭐︎私。
……そんな訳は無い。
そんな訳は無いでしょーがっ!
王宮での暮らしにも少し慣れて来て、お忙しいクラウス様もお茶の時間や夕食には顔を出して下さり。
何だか呑気に暮らしてたものだから、余計に今日という日がキツい……。
覚悟はしていたけどもっ!
キツいもんはキツいのっ!
学園の制服に袖を通しながら、私は今朝何度目かの溜息をついた。
「お嬢様、緊張しておいでですか?」
着替えを手伝ってくれながら、マリサが聞いてきたので、心配を掛けまいと私はブンブン頭を振った。
「違うわ、ちょっと眠たいだけ。
大丈夫よ、マリサ」
私はそう言ってにっこり笑った。
だ、大丈夫かな?顔、引き攣ってないかな?
「ヤァ、おはよう。俺の愛しいキティ」
その時、クラウス様が部屋に入って来た。
「おはようございます、クラウス様」
私はクラウス様の姿を見て、心臓が1メートルは前に飛び出したと思う。
だって、クラウス様っ!制服っ!
〈キラおと〉で何度も見た、あの制服姿だっ!
み、み、見たかったやつーーっ!
今まで見る機会が無くて悔しい思いをしていたけど、生制服姿ーーっ!
生だっ!生だっ!生制服クラウス様ーーっ!
私は鼻血を抑えるのに必死だった。
〈キラおと〉の世界がぐっと身近に感じられて、何だかんだと興奮しちゃう。
所詮は廃ユーザーですありがとうございました。
ちなみに私は原作キティの校則丸無視、何故か1人だけミニスカ(ロリッ子の宿命)フリフリスカートではなく、ちゃんとしたくるぶし丈の淑女スタイルの制服。
よ、良かった〜。
実は密かな懸念材料だったのよ、スカート丈。
髪型もツインテでは無く、落ち着いたハーフアップにしてもらった。
これでヒロインに会っても、私がキティだとはバレず、人畜無害なモブとして認識してもらえると思う……。
ヒロインの、主人公の為の主人公による主人公だけのスキル!ゲーム強制力発動っ!
を、使われないようにしなきゃ……。
「そうだ、キティ、君の入学のお祝いだよ。
気に入ってくれると嬉しいんだけど」
そう言われてクラウス様から渡された箱の中には、綺麗なブルーの宝石がはめ込まれた繊細な細工のネックレス……。
でもこの宝石、宝石というより、魔石?っぽいような……。
でも魔石だとしたら、こんな大きさあり得ないし。
魔石はとても貴重だ。何せ魔物や魔獣の核が材料だし。
高位の魔術師なら自分の魔力を使って生成出来るらしいけど、そんな人はこの王国には数える程度……。
決して入学祝いなどで頂ける品などでは無い。
無い……よね?無いと言って!
私は、これは宝石、見たことない珍しい宝石っ!っと自分に暗示をかけ、クラウス様に向かってにっこり微笑んだ。
「ま、まぁ、素敵な贈り物をありがとうございます」
あっ、ちょっと動揺が表に出ちゃった。
「貸して、俺がつけるよ」
クラウス様はにこにこしてご機嫌で私の首にそのネックレスをつけてくれた。
「ああ、やっぱりよく似合う……一狩り行って正解だったな……」
後半のクラウス様の呟きに、私の顔が引き攣った。
えっ?あの狩りゲーの事ですよね?
リアルじゃないよねっ?リアルにじゃ無いよねっ?リアルは有り得ないよねっ⁈
「俺の魔力も併せておいたからね、俺と一緒にいない時も、きっとキティを守ってくれるよ」
二重掛けだった〜〜……。
ただでさえ超貴重な魔物の核に、クラウス様の魔力が込められているとか、もう聞きたく無いっ!
急に首がズッシリ重くなった気がする。
「さぁ、キティ、学園に行こうか。
入学式に遅れてしまうからね」
私は恭しくクラウス様に手を引かれ、マリサに見送られながら、クラウス様専用の豪華な馬車に乗り込んだ。
クラウス様専用の馬車は、中もとても広々としている……が、私の定位置は安定のクラウス様の膝の上。
使おうっ!せっかくこれだけ広いんだから、使っていこうよっ!この広さっ!
そんな願い虚しく、クラウス様はご機嫌で私の髪に顔を埋め、スリスリハムハムスンスンしている。
なんなら揉んでるっ!服の上から胸も揉んでるっ!
あ、朝からやめてーーっ!!
私の秘めたる淫乱Cカップ令嬢を呼び起こさないでーーっ!
早く着いてっ!学園に着いてっ!
私は涙目でただただ祈るのみ。
あんなに行きたく無くて憂鬱だった学園が、一瞬でこんなに早く着きたいと思う場所に変わるなんて。
危険だわ、クラウス様との登校……!
やがて馬車は念願の学園に到着し、私はクラウス様に手を引かれ馬車から降りた。
馬車の前には、ノワールお兄様、レオネル様、ミゲル様、ジャン様、それからシシリア様が揃って出迎えてくれていた。
まっ、眩しっ!美しっ!
何なの朝からこの神々しさっ!
贅沢過ぎて目が溶けるっ!
大丈夫っ?私の目、3になってない?
もはや簡略的な、3 3だけになって無いっ?
流石ヒロインの入学式イベント。
これだけの美を集結させるとは……。
ヒロインっ!恐ろしい子っ!
「おはよう、キティ。会いたかったよ」
そう言って、お兄様が私に向かって両手を広げる。
お兄たま〜〜私も会いたかった〜〜抱っこ〜〜。
私も両手を広げてお兄様に駆け寄ろうとしたところ、クラウス様に腰を抱えられ、グイッと引っ張られた。
ぐえっ!
潰れた蛙みたいな声が出ちゃったじゃないっ!
何なの?も〜〜!
「……ノワール、いくら兄妹といえ、婚約者のいるご令嬢に馴れ馴れしくするのは関心しないな」
クラウス様がにっこり笑って言うと、お兄様も負けじと微笑んで答えた。
「そのような狭量な婚約者殿では妹も苦労しますね……。
どうでしょう?妹が苦労する前に、我が家に返して下さるというのは?」
クラウス様とお兄様はおデコがくっ付きそうな距離でにっこり睨み合っている。
ああ、そんな……。
直ぐに禁断の扉を開こうとするんだから(キャッ)!
キ、キスまであと、20㎝……あ、あと15㎝!
あっそれ!BでL!BでL!
キャッキャッと2人の周りをクルクル回っていると、ジャン様の溜息混じりの呆れた声が聞こえた。
「……お前に絡むと碌な事にならないから、あんまり突っ込みたくないんだか……。
それは、何をやっているんだ?」
何?何って、美形男子が顔を近づけて意味深に見つめあってるのよ?
がっぷり乙で楽しむのが美しい所作というものですわよ?
私が信じられないと言う目でジャン様を見ていると、いつの間にか背後に来ていたシシリア様が耳元でボソッと呟いた。
「ジャン×ミゲルも捗りましてよ」
それを聞いて、パアァァァッと満面の笑顔で振り返る私。
「し、師匠とお呼びしても?」
私の言葉に、シシリア様は優雅に微笑み、ゆっくり首を横に振った。
「いいえ、どうか同志、と」
同志よーーっ!我が同志よーーっ!
この世界で初めて巡り会えた、BでLな同志に、私は感動に咽び泣いた。
シシリア様、なんてミステリアスで素敵な方なのっ?
私、一生ついて行きますねっ!
勝手に小判鮫宣言を密かにしていると、ズザサッという音と、可愛らしい女の子の小さな悲鳴が聞こえた。
「キャッ!……いたたっ!」
その声を目で追って、私は瞬時に凍り付いた。
キッ。
キッ。
キッ。
キターーーーーーーーーーーッ!!
ヒロインッ!
キタコレーーーーーーーーーーーッ!!
目の前に、ブラウンベージュのたおやかな髪、ヘーゼル色の大きな瞳の優しげな少女が、今まさに転けちゃいましたっ(テヘッ⭐︎)といった風情で倒れ込んでいる。
あわ、あわわわわわっ!
これ、これって、〈キラおと〉の、ヒロインとクラウス様の出会いイベントっ!
生だ!生生っ!生で見ちゃったっ!
画面越しじゃないっ!肉眼で見ちゃったありがとう、神様ありがとうっ!
尊死しそうな程、私は心臓をバクバクいわせて、そろ〜〜とクラウス様を盗み見てみた。
ここで、アレよねっ!
クラウス様が転けちゃったヒロインに手を差し出して、『キミ、大丈夫?』って、超絶美スチルがっ!
初めてのアップ、超美麗スチルのクラウス様に心臓根こそぎ持っていかれて、そこからクラウス様最推し廃プレイヤーになったのよね〜〜懐かしいわ〜〜。
さっ、クラウス様!
今よっ!今、今っ!
サッと格好良くヒロインに手を差し出して、ハイッ!
『キミ、大丈夫?』
「キティ、こっちにおいで」
……んっ?あれ?
クラウス様は優しく私の肩を抱いて、スタスタと歩き出した。
えっ?
あれっ?
いや、あの……出会いイベント……。
ちょっ、出会いイベントがっ!
超美麗スチルがっ!
クラウス様っ?クラウス様ぁぁぁぁぁっ!
私は目を見開いて、クラウス様とヒロインを交互に何度も見る。
あっ、ほら!ヒロインも、えっ!て顔してますよ!
ほらほらっ!
完全に困惑した私は、もうパニック寸前っ!
なのに、皆んな、目の前のヒロインを完全スルー……!
んんっ、いや待て!
100歩譲ってよ?100歩譲ってもですよ?
今のが出会いイベントじゃないにしてもっ!
目の前に派手に転けちゃったご令嬢がいるのに、スルー?
皆んなして、完全スルー?
……それって、どうなの?
社交界のフラワー5と呼ばれてる皆んなが、こんなのって、全然格好良く無いじゃないっ!
もうっ!こうなりゃ私がっ!
っとクルッと振り返ると、丁度ミゲル様がヒロインに手を差し出しているところだった。
ミ、ミゲル様ぁ〜〜。
「大丈夫ですか?」
「あっ……はい、ありが」
「気をつけて下さいね」
頬を染めてお礼を言おうとしているヒロインを、さっさと起き上がらせると、ミゲル様はさっこちらに追いついて来た。
えっ?それで終了?
私はう〜んと頭を捻らせた。
今のはどうだったんだろう……。
出会いイベントとしては、不発?
それとも、何故かミゲル様に変更されて、成功?
うんうん頭を捻る私に、シシリア様がちょっと冷たい声で言った。
「あのような場合、こちらの皆様がお手をお貸しする事はありませんよ」
えっ!と私はシシリア様を振り返った。
「身元も分からない者に無闇に近づけない高位な身分の方々ですから。
偶然を装って、何か思惑を隠して近づいてくる不埒者かもしれませんし。
そういった事が珍しくもありませんから」
えっ?そうなんだっ!
私はビックリして目を見開いた。
「そーそー。思惑とまではいかなくても、何とかお近づきになろうって奴らばっかりだからな。
あ〜ゆ〜時は、ミゲルか護衛騎士に任せとけばいいんだよ」
ジャン様の言葉に、私は首を捻ってミゲル様を見た。
ミゲル様は仕方なさそうに溜息をついた。
「私は神の信徒ですからね。
我が神は博愛の神、クリケイティア神ですから」
はーー。そうなんだ。
無神論者だった前世の癖で、この世界の神様にも関心の薄い私は、ミゲル様の博愛主義は神様からきてるのかーーっと間抜け面で頷いた。
お勉強になるな〜〜っとアホの花を咲かせながら、ほへ〜〜っとしていたが、私はハッと我に返った。
いやいや、待って待って?
じゃあ〈キラおと〉の出会いイベントってそもそもが成立しないって事だったの?
えっ?じゃあ、ヒロインはどうやって攻略対象者達とお近付きになるのっ?
無数の?がグルグルと頭の中で周り、私はとうとう頭から湯気が出始めた。
フリーズ。
思考停止。
「さ、キティ、少しの間お別れだけど、シシリアの側から離れちゃ駄目だよ」
クラウス様の言葉にコクコク頷く。
「キティ、シシリアの言う事をよく聞いて、良い子にするんだよ」
ノワールお兄様の言葉にも、コクコク頷く。
「お前も、ガキのお守り大変だな」
ジャン様の言葉も、コクコク頷く。
「可愛いキティ様とご一緒出来るなんて、光栄ですわ」
美しいシシリア様の微笑みに、コクコク頷く。
……そして、次に意識を取り戻したのは、生徒代表として生徒会長でもあるクラウス様が新入生に祝いの言葉を送る為、壇上に上がった時だった。
「暖かい春の日差しに包まれ、春の花も満開な今日の良き日に、この王立学園への入学を迎えた諸君、おめでとう。
在校生を代表し、諸君らを心より歓迎しよう」
堂々とスピーチするクラウス様の姿を、ほぅっと見つめ、そうそう、ここでヒロインがクラウス様を見て、あっ、さっき正門の所で私を抱き起こしてくれた方……第二王子様だったんだ……。
って気付くのよね〜〜!くぅぅぅ〜っ!
そう思いつつ、目だけでキョロキョロとヒロインを探してみると……。
いたーーーーっ!
そんでめっちゃガン見されてたーーーっ!
斜め前からわざわざこっちを振り返って、めっちゃ睨んできてるぅーーっ!
私は思わず咄嗟に下を向いて、カタカタ震えてしまった。
美少女の眼力こえーーっ!ハンパねぇーーっ!
私の挙動不審さに気付いたシシリア様が、ヒロインを一瞥して、薄く笑った。
「大丈夫ですわよ。私がついていますから」
優しいシシリア様の声に、私は縋るように頷いた。
その後、私達はそれぞれの教室に移動した。
私とシシリア様は同じSクラス。
ここは、貴族位が高く、尚且つ成績の優秀な生徒の集まるクラスだった。
次にAクラス。貴族位の高い生徒(成績に関わらず)と、成績優秀者が集まるクラス。
原作キティはAクラスだったから(貴族位だけは高いから)私、めちゃ頑張った!
何とかSクラスに入れるよう、めちゃ頑張ったんだよーーっ!
ヒロインもAクラスなんだよね。
成績優秀だから。
でも、男爵令嬢だから、キティにキャンキャン言われるの……。
まぁ、大した打撃は無いんだけど。
でもかなり鬱陶しかったと思うの。
毎日キャンキャン言われてたら。
だから、頑張ってSクラスに私は入ったのだ。
目的はただ一つ。
ヒロインへの、絡みませんよー、ウザ絡みしませんからねー、私。
アピールの為だ。
だから、ヒロイン最終奥義!ゲーム強制力発動っ!
使わないでねーー!
っと言いたい訳だ。
私は隣のクラスにいるだろう、ヒロインに向かって必死に念を送った。
それから私は、各出会いイベント発生場所に、コソコソと赴いた。
朝のあの一件で、何だか出会いイベントがおかしな事になってないか確認する為だ。
出会いイベント:レオネル様。
人気の無い図書館。
キティにキャンキャンウザ絡みされているヒロインをさり気なく救出してくれたレオネル様が、ヒロインの持っている本をチラッと見て。
『キミもその本を?奇遇だな』
同じ本を持ち上げてほんの少し微笑む、超貴重微笑みスチル!
……が、起きないっ⁈
ヒロインが例の本を持って近くをウロウロちらちらしてるのに、レオネル様、完全スルーっ!
しまいには苛立たちそうに、バタンッと読んでた本を閉じて出て行っちゃった……?
ど、どうなってるの?
じゃ、つ、次は?
出会いイベント:ノワールお兄様。
裏庭の花壇。
花に水をあげている心優しいヒロイン。
そこを通りかかったお兄様が。
『花が喜んでいるようですね。優しい貴女の心が花にも分かるのかな?』
薔薇を背負っての美麗スチル、はい!どーーんっ!
……しない……。
お兄様はヒロインの前を素通り……。
目もくれなかった……。
もう……もう、どうなってるのっ?
つ、次はジャン様!
鍛錬場で、誰かの手から滑った木剣がヒロインに向かって飛んで……来ないっ!
ヒロイン、覚悟を決めた顔でギュッと目を瞑って構えてるのに。
ジャン様、滑った木剣をほぼゼロ距離で受け止めちゃった!
瞬間移動並みの速さと動物並みの危険察知能力で、モブさんが手を滑らした瞬間に受け止めちゃったよ……それじゃ、ヒロインの所まで、飛んでいかないよ……。
それなら次は、次こそはっ!
人のいない学園内の教会でっ!
ミゲル様とっ!
って本当に人いねーーーっ!
人っ子一人どころか、ミゲル様まで居なーーーいっ!
ワッショーイっ!もうこれ、ワッショーイっ!
訳が分からず、完全にバグる私。
「キティ様、お気はすみまして」
真後ろからの涼やかな声に、ぴゃっと飛び上がり、慌てて背後を振り返ると、シシリア様がコロコロと笑っていた。
「なっ!どっ!いつの間にっ⁈」
私が焦って聞くと、シシリア様は不思議そうに首を傾げた。
「いつの間にも何も。
最初からずっとご一緒させて頂いていましてよ?」
えっ?
最初から?
じゃあ、図書館の入り口にへばり付いていた時も?
物陰や木の陰に潜んでいた時も?
草むらに這いつくばっていた時もっ⁈
居たのっ?
ご一緒に居たのっ⁈
バクバク鳴る心臓と噴き出る冷や汗。
「こ、声を掛けて下されば宜しかったのに……」
私の弱々しい非難の声に、シシリア様は何故か頬を染めてモジモジし始める。
「キティ様があまりに必死で……。
お可愛らしいかったから、つい」
ついって!
そして何故赤くなるっ⁈
それにしても、まったく気が付かなかったっ!
気配さえ感じなかったっ!
シシリア様、一体何者っ?
真っ青になる私を楽しそうに眺めながら、シシリア様が優雅に微笑んだ。
「ところで、キティ様?
もう放課後ですし、良ければ私の家にお越しにならない?
私、貴女と2人きりで一度お話がしたいと、ずっと思っていましたの……」
そこで、シシリア様は一度言葉を切って、意味ありげににっこり微笑んだ。
「例えば、何故今日、ヒロインの出会いイベントが起こらなかったのか?とか」
シシリア様の言葉に、私は金槌でゴーンっと頭を打たれたように、頭をグラグラさせた。
その場で意識を手放さなかった事を褒められてもいいと思うの……。
さっ、遠慮無く、どうぞ褒めて?褒め称えて?
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