episode.12
ご機嫌よう、皆様。
前回の流れから何かを期待してしまってる方!
はい、手を挙げて!
残念でしたわね!
このキティ・ドゥ・ローズ!
貴女方の思い通りになどならなくてよ!
「はぁ……尊い…….」
転生してから溜まりに溜まった超貴重美麗スチル(脳内)を眺めながら、私は惚けた溜息をついた。
中でも最貴重、SSSRスチル【君が好きだよ】を取り出して(脳内)あまりの美麗さに手足をジタバタさせて身悶える。
………クラウス様の膝の上で。
「今日も楽しそうだね、キティ。
すごく可愛い」
そう言ってクラウス様は私の耳に髪を掛けると、そのまま耳にキスをした。
全身の熱がキスされた耳に集まり、私は身体をプルプル震わせる。
今日はお兄様のブリザードも吹き荒れない…。
最近では側近それぞれ学園やお家の事で忙しく、たまにこうしてクラウス様と2人きりになる事があるのだ。
1番忙しい身であるクラウス様がどうして私とこうして呑気に王宮の中庭でお茶してるのかは謎なのだ。
更に、お兄様も来れないのにどうして私が呼びつけられているのかも謎なのだ。
なのだ。
「クラウス様……私の歳を知っていまして?」
涙目で睨むとクラウス様は楽しそうにニコニコ笑う。
「勿論。俺がキティの事で知らない事なんて1つもないよ。
3ヶ月前に誕生日を迎えて15歳になったね、改めておめでとう、キティ」
「ありがとうございます。クラウス様もおめでとうございました」
初夏生まれのクラウス様は17歳になっていた。
現在、王立学園高等部の2年生。
いや、そんな事より、今不穏な事も一緒に口走らなかった?この人。
「今年の縁談も丁重にお断りされたなぁ」
ギクっ!
クラウス様の続く言葉に私は体を強ばらせた。
クラウス様はクスクスと笑っている。
「と、とにかく!私も来年の春には社交界デビューを控えている淑女の端くれですからして、このようにいつまでも膝の上に抱っこされているのはいかがなものかとっ!」
私の言葉にクラウス様ははぁ〜っと深い溜息をつき、拗ねたように私の髪に顔を埋めてスリスリしている。
「5年前の俺の告白を盛大にスルーした挙句……」
ギクっ!
「それからも縁談は丁重に断れ続けて……」
ギクギクっ!
「その上大好きなキティの膝抱っこまで奪われた
ら……」
………たら?
「俺はどうなってしまうか、分からないなぁ…」
いやぁぁぁぁぁぁあっ!
黒い黒い黒いっ!
背後からの気配が真っ黒ダークマターッ!!
私はガタガタと震え、全身から嫌な汗が噴き出した。
5年前、クラウス様から好きだと言われた私は、驚きすぎて固まってる間にお兄様に脱兎の如く連れ帰られ、穴の空いたコインにヒモを通した物を目の前でユ〜ラユラされつつ『さっきのは現実に起きた事じゃない。夢、幻、幻想。良いかい?忘れてしまうんだよ』と言い聞かせられ、ボーっとした頭でコクコク頷いた。
それから本当に忘れてしまっていたのだが(お兄様の催眠術スキルカンストッ!)次に会った時にクラウス様に『この前の俺の気持ち、考えてくれた?』と問われあっさり思い出し、またお兄様に催眠術で忘却され、またクラウス様に……を繰り返す内に、お兄様の催眠術がお母様にバレてお兄様はお母様にこっぴどく叱られたようで、私に催眠術を使えなくなった……。
お陰で超SSSRスチル【君が好きだよ】をゲット出来た訳だが、やはり縁談同様、気持ちを素直にお受けする事は出来ない(血涙)。
来年の今頃には既にヒロインと出会い、テレテレもじもじ恋心を育てていくような人に、そんな事を言われても、答えようが無い。
何も言えずピキーンと固まってる私の髪を、いつもの如くスリスリハムハムスンスンしながら、クラウス様は切なげにはぁっと溜息をつく。
そのあまりの悩ましげな様子に、私は思わず首を捻ってクラウス様を見つめて聞いた。
「クラウス様、何か悩み事ですか?」
まぁ、政務のことなど私の分からない事だろうから、聞いたところで何の意味も無いのだろうけど。
「……実は、大変ゆゆしき事態に直面していてね……」
あら?私に話して良い内容なのかしら?
私はクラウス様の膝の上で、せめて横向きに座り直し、じっとクラウス様を見上げた。
その私の腰をまるで逃がさないとでも言うようにクラウス様がグッと引き寄せて、艶かしい溜息をつきながら、私の耳に唇を寄せる。
「キティ……俺は今、どうやらお年頃というやつでね?
自分ではどうしても抑えきれない衝動に苦しんでいるんだ……」
そう言ってクラウス様は私の腰を捕まえていた手をお腹のお臍の辺りに移動する。
んんっ?と思いながらも私は答えた。
「まぁ、それは大変ですのね。
私にできる事があれば、何でもお申し付け下さいまし」
私がそう言うと、クラウス様はぱぁっと明るい顔になって、嬉しそうに笑う。
クラウス様が嬉しそうだと私も嬉しくなる。
「良かった。実はキティにしか出来ないことがあるんだ」
まぁ、それは一体何かしら?
何か発散出来ればいいのよね?
なら、やっぱりスポーツ?
スポーツなら私、ドッチならちょっと自信ありますわよ!
前世何度、生意気な男子に土をつけ「ボサ子のくせにっ!」と悔し涙を流させてやった事かっ!
「それで、私は何をすれば宜しいのですか?」
「何も。だだこうして動かないでいて欲しいんだ」
えっ?
ドッチ?ドッチだよねっ!
とワクワクし始めていた私は、クラウス様の返事に肩透かしを食らい首を傾げた。
膝抱っこで動くなって、いつものことじゃない?
それで何が発散されるのだろう。
不思議に思っていると、クラウス様が私の髪に顔を埋める。
またいつもの事かと思っていると、チュッチュッと髪の至る所にキスをし始めた。
あれっ?えっ?
っと不思議に思っていると、スススッとその手が太ももの上に伸びてきて、優しくゆっくり撫でてくる。
えっ?あれっ?
前世1度も経験ないけど、これ、セクハラ?セクハラじゃないっ⁈
お腹の上に回した方の手でお臍の辺りをサワサワ、反対の手で太ももサワサワ、髪や耳や頬にチュッチュッされまくって私は涙目になりながら辺りを見回した。
いやぁ〜〜!この人、セクハラ!痴漢!ちか〜ん!
助けを求めて近くのメイドさんと目が合えば、ツツツーと逸らされ、それならばっと反対側にいる従者さんと目を合わせてはスススーと逸らされ……。
アウェイっ!お兄様達がいないと誰も止めに入れないよね!そりゃそ〜だよねっ!
かといってこのまま好きにされてる訳にもいかないし、私はとにかく自分で何とかしないと、と口を開いた。
「ク、クラウス様、お戯れは、これ以上のお戯れは……はにゃんっ」
その時丁度クラウス様の唇がうなじに当たって、間抜けな声が出てしまった。
瞬間、ガターンとクラウス様が私を抱えたまま立ち上がる。
「キ、キテイ?ちょっと林の方に散歩に行こうか?」
えっえっ?と戸惑っていたが、よく見るとクラウス様の目の瞳孔が開いているっ⁈
はうはうとガタガタ震えながら、私は黙って何度も頷いた。
クラウス様はギッと振り返ると「誰もついてこないように」とだけ言って、スタスタと林に向かった。
林の入り口辺り、でも外からは絶妙に見えない場所に着くとやっと私を下ろしてくれた。
そのまま何故か私を木に向かい合わせて立たせる。
そして自分は私の背後に立ち、私の後ろ髪をそっと左右に分けて、うなじにそっとキスをしてきた。
「ひゃっ!」
キスされたところからゾクゾクした感覚が脳を突き抜け、私はまた間抜けな声を上げた。
クラウス様のハァハァという荒い息が耳にかかる。
「やっぱり。ココがいいんだね、キティ」
そう言ってクラウス様は何度もそこにキスしたり、たまにチュッと吸ったりを繰り返す。
「やっ、んっ、ダ、ダメです、クラウス様、いけません、んんっ」
ゾクゾクした感覚とクラウス様のハァハァという息遣い、堪えきれずに木に両手を付いてる私を後ろから押さえ込むクラウス様……どう見ても野外プレイです。ありがとうございます。
ややしてクラウス様は満足したのか私を自分の正面に向け、今度は唇に何度もキスをしてきた。
角度を変えて何度も何度も。
たまに唇で私の唇を食んでみたり、舌で舐めてみたり。
その度に私は今まで感じた事のないゾクゾクした感覚が止まらず、身体を震わせた。
私がもじもじと太腿を擦り合わせると、クラウス様はそれに目敏く気付き、服の上から足の付け根の中心部分からお臍まで、すーっとゆっくり撫で上げた。
「やっ………」
私はそれに敏感に反応して、自分でもびっくりするくらい甘い声を出してしまう。
私のその声にクラウス様は一層息を荒くして、私の耳元ではぁっと熱い吐息を吐いた。
「キティ……ここが切なくなっちゃった?」
(イケメン声優cv)
は、孕むっ!耳から孕むっ!
私の頭は羞恥と未知の感覚に加えて耳からのご褒美に完全に茹でダコ状態。
顔を真っ赤にして、涙目でクラウス様を見上げた。
「やっ…も、ダメェ…赤ちゃん出来ちゃうぅ…」
私の言葉にクラウス様は、バッと両手で顔を覆うとそのまま天を仰いだ。
急に自由になった私はキョトンしたが、解放されて一先ず安堵する。
クラウス様はプルプルと身体を震わせ、くぐもった声で言った。
「キティ……キスで赤ちゃんは出来ないよ……」
知っとるわーーいっ!
ちがっ、違くてっ!
耳から孕むを知らない素人さんにどう説明したものか、そもそもさっきから一杯一杯で、頭茹でダコだから、私っ!
それだってそもそも貴方がセクハラやら痴漢やら野外プレイやら、何の免疫も無い私に、色々……色々するからでしょーがっ!
カッと更に赤くなって、それくらい知ってます!と言おうとした私をクラウス様がガバッと抱きしめ、またキスを繰り返す。
先程より激しいそれに私はたちまち翻弄され、うっとり瞳を閉じてしまった。
クラウス様は現在177㎝、対して私は148㎝。(そう!公式キティと同身長!ここからが勝負よっ!)
圧倒的な身長差に、こうして抱き合っていると私は爪先立ち(なんならちょっと浮いてる)だし、クラウス様はだいぶ屈んでくれている。
腰に悪そうだなぁ……。
流石にヒロインに出会う前にメインヒーローの腰が曲がってたら、すまないじゃ済まないよね。
上手い事言いながら(言ってない)私は急に心配になってきて、キスの隙間を何とか見つけて口を開いた。
「ぷはっ、ク、クラウス様……」
私の呼びかけにクラウス様は、んっと顔を上げると、どうしたの?と首を傾げた。
「あの、あの、し辛く無いですか?」
「ん?何がだい?」
私はクラウス様の腕から離れて地面に降り立つと、自分の頭とクラウス様の頭を両手で比べて比較する。
「ですから、身長差がありますから。
クラウス様はし辛く無いですか?
苦しかったり、腰が痛くなったりしませんか?」
私がコテンと首を傾げると、クラウス様は堪えきれないと言うように口を片手で押さえて、横を向いた。
「キティ、君って人は……無理矢理襲われている側が相手の心配なんて……っ」
あっ、自覚はあったんですね。
ヨカッタデスー。
またしても頬を染めてプルプルしているクラウス様に私はプウっと頬を膨らませた。
クラウス様はガバッと私を今度は抱き上げて、同じ目線で見つめて言った。
「これなら、そんな心配いらないね」
いや、これもこれで私の体重分負荷がかかって、腰に悪そうなんですか……。
にこにこ嬉しそうに笑うクラウス様に、もう何も言えず、私はこくりと頷いた。
クラウス様は私の肩に顔を乗せるとスリスリしながら溜息をつく。
「あー、幸せだよ、キティ。
君に出会えて俺はもうずっと幸せだ」
顔を上げて、チュッと軽く口づけて、蕩けるように微笑む。
「これからもずっと、側にいて?」
その〝ずっと〟は来年までなんですけどね……。
もちろんそんな事は言えず、私は戸惑いがちに頷いた。
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