episode.9

ごぎげ$%%*$%%*$<##なさま。

キティ€$^%*$*+^%*€%%*ざいます。

なんと第二くぁwせdrftgyふじこlp!



……………………はっ?

私はお父様の言葉により、一気に大気圏を突き抜け、果てのない宇宙に放り出された。


ダイニオウジカラノエンダン…?

カラノ?

からの?

か〜ら〜の?


私はワンチャン、お父様からの「な〜んちゃって」を期待し「も〜お父様ったら、ご冗談がお上手ですわ」ポカポカとすかさず返せるように、ギュッと拳を握った…。

が、ついぞお父様から「な〜んちゃって」を頂く事は叶わなかった…。


は?えっ?待て待て待て?

何故こうなった?

キティは産まれた時からクラウス王子の婚約者候補ではある、あるのだが、順位はめちゃ低い。

もう、下から数えた方が早いくらい低い。

それが何故縁談に繋がるのだろう?


何速飛びしたらそんな事が起きる訳?

いや、普通にありえないでしょ!


戸惑いながら、私はお父様に聞いてみた。


「どうしてそんなお話が?私の婚約者候補の順位は下から数えた方が早いくらい低いのに」


「んっ?」


「えっ?」


「はっ?」


私の言葉に3人が同時に目を点にした。


「えっ……?」


私は3人の反応に驚き、首を傾げる。


「キティ……どこでそんな勘違いをしてしまっていたの?」


1番最初に正気に戻ったのお母様だった。

お母様のその言葉に、お父様もハッと我に返る。


「そうだぞ、キティ。

我がローズ侯爵家の令嬢の順位がそんなに低い訳がないだろう?」


そう言われて、私はますます混乱する。


「あの、では私は婚約者候補の何番目辺りなんですか?」


私の問いにお父様は自分の顎を摩りながらう〜んと唸った。


「今のところは、4位だが…」


えっ!はっ?よ、4位っ!

思ってもいなかった高順位に、私は思わずお父様の方にぐぐぐ〜っと身体を前のめりにさせた。


「だが今、順位1位のアロンテン公爵家のシシリア嬢が第三王子に望まれていてね。

まぁこれは色々と難しい話になるのだか……。

ほぼ確定しそうだと言う事だから、キティは実質3位になるだろうな」


へっ?あっという間にまた順位が上がった!

ほぼ最下位からのメダル獲得っ!

奇跡が起きない限り、こんなの有り得ないでしょっ!


アワアワと慌てる私に気づかない様子で、更にお父様は続ける。


「まぁ、それも、我が侯爵家が妃争いに興味がないからの順位であって、本気でキティが望めばトップに押し上げる事など造作も無いが」


えええ〜〜っ!銅から一気に金に昇格も有りっ?

えっ?ちょっと待って?ちょっと待って?

これはアレなの?もしかしてアレなの?

私が望めば、クラウス王子と婚約!果ては結婚?

あ、有りえるのっ⁉︎


そこまで考えて、私は急速に冷静さを取り戻した。

スン。


いやいや、無い無い。

だってアレだもの。

8年後には王立学園にかの方が入学していらっしゃるじゃない?


空前絶後超絶怒涛一騎当千!

この乙女ゲームの世界の唯一無二唯我独尊!

最・強・主・人・公!

そうよっ!この世界はヒロインの為にあるのだから!


むしろ下手にクラウス王子の婚約者になっちゃったりしたら、公然と主人公と浮気された上に婚約破棄よっ?

そんなの耐えられないっ!

自殺まっしぐら!

断頭台まっしぐらだわ!


そう、その可能性もあるのよね……。

婚約者になる事で、本作にはなかった断罪イベントが発生しちゃったら?

唯一のキティの美点(?)だった死罪の無い死に方が変わっちゃうかも!


それにそれに……私がクラウス推しだったのも、主人公が現れて心惹かれても、彼は浮気をしない(その時点で婚約者が居ないので浮気にならない)ってところなの…。


そんな大好きな彼の一部分が私という婚約者のせいで歪んでしまうのは、ちょっと…。

ファンとして許容出来ないわ。


私は完璧に冷静さを取り戻し、居ずまいを正してお父様に聞いた。


「それで、どうして私との縁談なのですか?」


お父様は私の様子に一瞬意外そうな顔をしてから答えてくれた。


「それがなぁ、順位5位までであれば、王子の側から早々に指名する事も可能なんだよ」


えっ?そんなルールあるの?

じゃあ、現在4位、実質3位の私をクラウス王子が指名してきたって訳?

でも一体どうして?


私は再び混乱してアワアワと焦る。

そんな私の手をお兄様が優しく握って、顔を覗き込み言った。


「大丈夫だよ、キティ。

この話は断る事も出来るからね。

無理はしなくていいんだよ」


えっ?驚く私にお兄様が優しく微笑んでくれる。


「断れるのですか?でもそんな……不敬になりませんか?」


私の問いに、お父様が答えてくれた。


「いや、それは大丈夫だ。

この話はあくまで王子からの打診であって、王家からのものでは無い。

つまり、王命では無いんだよ。

王家では、第三王子とシシリア嬢との事で色々とあって……正直今それどころでは無いっていうのが本音だろうね。

それにクラウス王子本人がキティが気に入らないようなら断ってくれて構わない。

その事で我が家やノワールに責は問わない、と言って下さっている。

キティは何も気にせず、自分の思うがままに答えてくれれば良いんだよ」


ほ、本当に?いいのかしら?

それなら私の答えは決まっている。


「あの、とても光栄なお話ですが、私には荷が重く……お断りしたいのですが……」


おずおずと私がそう言うと、お兄様がバッと私を抱きしめた。


「ああ!良かった、キティ。

あんな変人のところに僕の可愛いキティをお嫁にやるなんて!

考えただけで頭がどうにかなってしまいそうだったよ」


「まったくノワールの言う通り!

あんな血の通わない王子に、息子ばかりか娘までなんてっ!

それにこんなに可憐なキティをあんな魑魅魍魎悪霊跋扈した王宮にやるなんて、正気の沙汰とは思えない」


あの、お父様……申し訳ありません、読めません。


夢のような話から一転、自ら最推しとの縁談を断った私、グッジョブ⭐︎

この血の涙もいつかは乾くと信じて、強く生きて行くのよ、私。


立ち上がって万歳三勝してるお父様とお兄様を尻目に、私は自分の健闘を密かに讃えていた。


そんな私の側にそっとお母様が近寄ってきて、隣に腰掛けた。


「ねぇ、キティ」


優しくそう言うと、そっと私の手を自分の両手で包んでくれる。


「貴女が何に悩んでいるのか、お母様には分からない。

でも、今はまだ幼いからいいけれど、いつかは向き合って決めなきゃいけない時が来るわ。

その時に、少しでも貴女が楽になるように、重荷があればお母様に分けてちょうだいね。

いつか貴女の悩みが晴れて、心から望む本当の選択を出来る事を、心から願っているわ」


優しいその言葉に私の瞳に涙が滲む。


「……っありがとうございます、お母様」


私は涙目でも笑ってお母様に答えた。

そんな私の髪を、お母様はいつまでもいつまでも、優しく撫で続けてくれた。


……お母様、私、本当はこの縁談を断りたくなかった。

本当は画面を込めて本物のクラウス王子と結婚したかった。


でも、駄目、出来ないの……。

彼は私以外を愛する運命だから。


でもきっと、その時が来ても、今の私なら自殺なんて選ばないと思う。

どうしても辛くて我慢出来なくて、死んでしまいたくなったとしても、その時はお母様にお父様にお兄様に沢山話を聞いてもらうから。

そして死ぬ事が馬鹿らしくなるくらい甘やかしてもらうんだ。


沢山泣いた後は、ちゃんと自分の足で立ち上がれるように、まずは自分の出来る事から少しずつ、頑張ってみようと思えた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





後書き


ルイスとソニア

2人肩を並べて自室に戻りながら……。


ルイス「まったく、ソニアが先にあんな事を言うからヒヤヒヤしたよ」


ソニア「あんな事ですか?」


ルイス「そう、キティがクラウス王子を慕っている様子だとか、何とか…」


ルイス「杞憂に終わって良かった良かった!」


ソニア「…さぁ、どうでしょうね」


ふふっと笑うソニア、驚愕に口をあんぐり開けたままのルイス。


こうして、ローズ侯爵はその夜一睡も眠れなかったとかなんとか……。

ちなみにその隣でローズ侯爵夫人はスヤスヤだったとかなんとか……。

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