【TS】雑草聖女は草を生やす ~掲示板で自称神を煽ったら『草生える』とかいうクサスキルを生やされて異世界に飛ばされたんだが?~

雑草聖女 第1話 草を生やされて大草原

 ――あらすじ――

変なスレを見つけたので草を生やしたら異世界に飛ばされてしまった。

ソウルライクゲーみたいな異世界に飛ばされた私が、勝手に生やされたスキル『草生える』で色々なものに草を生やしながら、神からの啓示(掲示版)に導かれて世界の救済(スローライフ)を目指す話。【EX:神_聖女枠で飛ばした】


 ――ここから本編――


1:神

欲しいスキルを言ってみろ


2:名無しの転移者さん

草生える


3:神

よかろう


4:名無しの転移者さん

ふぁw

ここどこw

大草原なんだがwww


5:神

ああ、私の管理世界の一つだ


6:名無しの転移者さん

視界の端に掲示板が見えるw

どうしてw

笑いが止まらないんだがww


7:神

お前の求めたスキル『草生える』の副作用だ


8:名無しの転移者さん

求めてないがw

なんだコレw

元々生い茂っていた草がwww

更に生えてきたw


9:神

お前の求めたスキル『草生える』の力だ


10:名無しの転移者さん

だからw

求めてないってwww

オオカミ!?w

オオカミなんでw


11:神

ああ、騒げば魔物が集まるのは当然だな


12:名無しの転移者さん

オワタw

……w

オオカミから草生えたwww


13:神

私の与えた力に不備があるはずがない


14:名無しの神

横から視てたけど常に草が生えてて不備しかない件


15:名無しの転移者さん

他の神w

降臨w

もっと言ってやってwww


16:神

不備ではない副作用だ


#####


 無意識に書き込みをしてしまったが、視界の端に掲示板が見えるなんて明らかな異常事態だ。二重の意味で触らぬ神になんとやらである。


 ――基本的にROMっておこう。


 コテハンと名無しの自称神が一行レスバしているのを横目に眺めつつ、状況を確認する。

 部屋でパソコンをいじっていたはずが、大草原で動かないオオカミと一緒にいる。

 オオカミは全身から草を生やしてピクリとも動かない。

 自称神の言っていたことが本当なら、自分が手を下したということになる。その事実に、思わず胃液がせり上がってくるが、なんとか耐えながら現実逃避に周囲を見回した。

 

 ここは小高い丘らしく。高い壁に囲まれた街が見下ろせる。


 中心の城を囲うように防壁の築かれた街は、内側は整然としており、外側は雑然としている。何らかの階級差がありそうだ。

 付近に人里があったことに安心したのか、胃が落ち着いた。

 神が管理している世界などと言われてもピンとこないが、ありえない状況が重なりすぎているので信じるしかない。


「草生える」


 自分の出した声に軽く絶望する。

 舌足らずな可愛らしい声だ。自分の声とは、似ても似つかない声。どうやら変なスキルを生やされただけでなく。自分自身も変えられてしまったらしい。

 オマケに、意識して抑えているのに半笑い気味な声である。


 笑いに反応してか、周囲の草が伸びた気がする。

 このままでは生やした草に沈むことになりそうなので、その場から脱出しようとしたら、レスバに熱中していた自称神達がこちらに教えてくれる。どうやら神を名乗るだけあり、こちらの状況は常に見えているらしい。

 いや、神いわく、視えている、か。


 内心の自由も怪しいので、意識を集中して本心を伝えてみる。


 ――声もレスも全部に草が生えてしまうのは、どうにかならないのだろうか?


#####


30:名無しの神

副作用は要らな、あ、死体に触っとけ


31:神

副作用は必須だと、む、魂は収穫するべきだ


32:名無しの転移者さん

魂?w

死体に触れるとかw

嫌なんですけどwww


33:名無しの神

つま先でもいいぞ


34:神

魂の収穫は勝者の権利である


#####


 ――魂……?

 自称神たちの言葉に従い死体を軽く蹴ってみる。

すると光がこちらに飛んできて胸の中に入っていった。


 よりによってソウルライクゲー風。

 死亡前提の難易度になっていそうな異世界にさらなる絶望を覚える。絶望に連動してか、体から力が抜けて周囲が急に暗くなっていく。


「わろた」


 半笑い気味な諦めの言葉が舌足らずな声で出力された瞬間、腹筋が破壊された。


「アハハハハ!」


 草の絨毯に転がって笑い転げてしまう。


 笑いやすくなっているのは困りものだが、どうやら無理やり自分を笑わせる語句まであるらしい。しかし笑っていると不思議な事に力が湧いてきた。

 更には暗くなっていた視界も明るくなる。


 我慢しないで笑ったからか、私の転がっていた草の絨毯は、草のベッドまで急成長していた。


「ひぃひぃ。ふぅ。よし!」


 体からみなぎる出所不明な力に突き動かされ、草のベッドから飛び降りる。

 体の調子を確かめるように腕を回してみると、何でも出来そうな全能感が沸いてきた。


 ――いざとなったら、生やした草でも食って暮らそう!


 草を食って生きる覚悟を決めた私は、安全地帯っぽい街へ駆け出した。

 笑えば生えてくるんだから、実質無限の草を持っているみたいなものである。


 ――雑草聖女のわざ――

『草生える』草を生やす。笑うと更に草を生やす。

『わろた』強制的に自らを笑わせる。

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