追放令嬢 第2話 森の中(2)
ゴブリンは藪を通り抜けたり、木の根をくぐりながら逃げていきます。
私を撒こうとしているのでしょうが、こちらを見失っているみたいでキョロキョロと周囲を警戒しながら逃げていきます。
彼の探している私は鳥の血抜きをしつつ、彼の死角となる枝から枝へ飛び移り追跡しているわけですが……。
――立派なお鼻ですが嗅覚は大した事ないみたいですね。
しばらく怯えるゴブリンを追跡していると、ボロ屋の並ぶ集落にたどり着きました。
これで雨が降っても安心です。
「案内ご苦労さまです」
彼の背後に音もなく着地した私は、肩をポンと叩いて労ってあげます。
亜人相手でも礼節を忘れないなんて流石は私です。
肩を叩かれて感動してしまったらしいゴブリンは、その場で泡を吹き気絶してしまいました。
大げさなリアクションです。
騒がしくなってきた集落の入り口に、大小のゴブリン達が集まってきます。
「殊勝な心がけですね」
歓迎なのか囃し立ててくる群衆の中から、特に抜きん出た大きさのゴブリンが出てきて私にハグを仕掛けてきます。
ゴブリンは腰ほどの大きさをした頭でっかちな緑の小人なのですが、巨大ゴブリンは普通のゴブリンの三倍ほどの大きさであり、見上げるほど大きくて頭だけが小さい……というか普通のゴブリンと一緒の大きさです。
「おさわりはダメです。汚れるので」
せっかくの歓迎なので受けようと思ったのですが、土や泥にまみれた手を見て考えが変わります。
汚いです。
こちらに伸びる手の手首を取った私は相手の勢いを利用して投げ飛ばします。
浮遊魔法で相手の重量を消して投げる小技です。
投げ飛ばされた巨大ゴブリンはボロ家に直撃し、土の壁と草の屋根で構成された家を粉砕しました。
ちょっと勢いがつきすぎてしまったみたいです。
囃し立てていたゴブリン達は、ポツポツと話し合うだけになってしまいました。
残念ながらゴブリン語はわからないので、胸の前で腕を組み態度で私の正当性を主張しつつ、様子見です。
貴族はメンツを売る商売なので、簡単に謝ってはいけないとパパも言ってました。
「身体を清めてから出直してください」
私の一言で、ゴブリン達は一斉に膝まづいて地に頭をつけます。
しかし土で身体を洗おうとするとは、流石の私も面食らってしまいました。
ゴブリンは不思議な種族みたいです。
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