気が付いたら婚約破棄からの華麗な追放を決められていたので、懐刀片手にサバイバルからのスローライフを目指します
追放令嬢 第1話 森の中(1)
――あらすじ――
気が付いたら迷いの森に追放されていた令嬢が、自決用の懐刀で色々とズンバラリンしながらスローライフをやる話。
――お話はここから――
まだ昼時だというのに暗い森の中。
特徴的な鳴き声が聞こえてくる。
その鳴き声は私の状況をあざ笑っているかのように聞こえます。
内心で鳥畜生に対して八つ当たりをする自らの性分に苦笑しつつ、場に相応しくない自分の格好を他人事のように確認します。
私の服装はパーティで着ていたピンクのドレス、靴は最近都で流行っていた背を高く見せるために踵を高く持ち上げるもので、どちらも森には相応しくないものです。
「とうっ!」
また特徴的な鳴き声が降ってくるので、我慢の限界を迎えた私は音もなく無拍子での垂直跳びを披露すると、木の枝の上から私を見下していたアンチクショウと同じ高さに滞空しながら、そのずんぐりむっくりした体をむんずと掴みます。
「ギョエエ!?」
「慢心のツケを払うのです!」
落ちながら鳥の首を握りしめる私は誓います。
「エエエッ! ……」
「この私を迷いの森に追放した手腕は中々ですが、武装を持たせたままだったのは慢心でしたね婚約者サマ……。必ず脱出し、この鳥と同じように慢心のツケを払わせてあげます!」
握力だけでクソ鳥の息の根を止めた私は、腰に差してある懐刀を引き抜くと首を落として血抜きをしながら、私をこの状況に追いやった婚約者への復讐を誓います。
――この鳥と同じように首を落としてやるのです!
誓いを胸に落とした首を蹴り飛ばした私は、こちらを見て棒きれを取り落とした魔物、緑の肌に腰蓑だけを付けている亜人型の魔物を見つけて微笑みます。
アレはゴブリンです。
渡りに船とはこのことで、亜人型の魔物は人が住めるような巣を作ります。
ちょうど良いです。
彼の家に住ませて貰いましょう。
その鼻は特徴的に尖っており、彼の足元に転がるクソ鳥のクチバシにそっくりです。それを見て良いことを思いつきました。
こちらを見ながら後ずさりをする失礼な彼に、クソ鳥の首を指さしながら提案してあげます。
「それと同じ姿にしてあげます。似ているので連帯責任です」
「ギャアアアア!」
棒きれを放置したまま、両手を挙げて逃げ出した彼をゆっくりと追いかけます。
ゆっくりと、ね。
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