【モブ憑依】知っているゲームの序盤で救助されるモブに憑依したので人の良い主人公に寄生したら人が良すぎて心配な件
寄生モブ 第1話 要救助者に憑依した
――あらすじ――
気がついたら知っている救命系RPGゲームで序盤に助けられるモブキャラになっていたので、人の良い主人公に寄生して楽に暮らそうとする話。
なお、主人公の人が良すぎて楽するどころではなくなる模様。
「俺の寄生する準備は万端だぞ、
――お話はここから――
波の音響く白い浜辺にて。
俺は仰向けになって倒れていた。
照りつける太陽と波の音にリラックスしたいところだが、じくじくと痛む肩に触れると手にべったりと血がこびりついた。
普段は目にしないような重傷にゾッとしてしまう。出血のせいもあってか、考えも上手くまとまらない。
直射日光に照らされているので体は温かいが、もしかしたら大量に出血しているかもしれない。
――血を……血を止めなければ……。
訳も分からずに手のひらで出血して居るらしい肩を押さえようとすると、鋭い声に制止される。
「待って!」
「な、んだ?」
波が打ち寄せる以外の音に顔を向けながら渇いた口を酷使して聞けば、肩で息をした赤毛の少女が片手の手のひらを前にして俺を制止していた。
「砂まみれの手で傷に触れてはダメ! 今、応急処置するから!」
俺の肩から服を引きちぎった彼女は傷を大量の水で洗い流した後、素早くヌメヌメしたモノを塗り込んでくる。
……驚くべき事だが、すぐに痛みが和らいで痒くなってきた。
――助かったのか?
返事も聞かずにテキパキと処置を進める少女は、よく見ると見覚えがある。
彼女は俺のハマっていたゲームの主人公セラだ。
人の良い、人の良すぎる救命士志望の彼女はどんな依頼も受けてしまう悪癖を持つ。
目にもとまらない速度で包帯を圧迫しながら巻いた彼女は、仕上げといわんばかりに小さな杖を抜いて俺に光を放ってくる。
その光を受けると、かゆみも吹き飛んで調子が良くなった。
「簡単な魔法で治療したので、もう大丈夫です! 街まで肩を貸しますね!」
街まで肩を貸して貰っている道中、彼女の安心したような横顔を見てつい悪い考えが浮かんでしまう。
治療されて調子の良くなった頭が皮算用を始めてしまったのだ。
ここが俺の知っている世界で、彼女が俺の知っているセラならば……。
「迷惑ついでにお願いがあります」
依頼の常套句を口ずさむ。
これはゲーム内での定型文である。
誰も彼も彼女にこの言葉で依頼をしてくるのだ。
ケガや病気を治して経験値を得るゲームシステム上、大体のNPCは彼女の患者であり、接触機会=救命になるので仕方が無いのだが……。
「はい! なんでしょうか?」
「どうやらこの周辺の記憶が無い……助けて欲しい」
「え? ええ~!? 大変です!」
フッ、嘘は言っていない。
記憶系統の魔法や薬剤制作のスキルツリーはかなり後半。だから長期治療コース。
これで知ってるようで知らない世界に放り出される心配は無くなった……はずだ。
お前の人の良さにつけ込んで寄生してやるぞ。
#####
数日後。
「何時も手伝ってくれてありがとうございます!」
「世話になっているしな。この程度は当然だ」
寄生宣言をした俺だが、現在セラの手伝いをしている。
俺が人が良いと称したセラであるが、人が良すぎて毎度仕事を持ってきては働くモノだから、ついに倒れてしまったのだ。ゲームシステム的には過労……。働き過ぎだな。
働き過ぎは危険なステータスだ。
一旦休息をとって疲労を何とかするか、お手伝いさんを雇って仕事自体を減らす必要がある。しかし強情な彼女は休まずに働き続けるし、お手伝いさんを雇うのは診療所を建てたばかりで無理らしい。
そうだな。最序盤はお手伝いさんが解禁されていないから仕方ない。
ということで俺の出番となった。
治療は全然分からんが、薬や薬草の見た目はきっちり覚えている。フィールドワークのお供や診療所内の助手程度は出来るからな。
寄生するのも大変だ。
セラという宿主が倒れてしまえば、寄生している俺まで共倒れだからな。手伝いの対価としてお小遣いまで与えられているので、少しずつフィールドワークの装備も充実してきている。
スキル上げも自分で好きにやれるから順調だ。
お手伝いキャラのクソAIには苦労したので、鬱憤を晴らすようにスキル上げしてやったぜ。……正直なところ手動操作はゲーム内で実装して欲しかった。
俺は寄生する準備万端だぞ、
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