寄生モブ 第2話 馬車事故に対処する
魔法救命士セラは今日も忙しい。
大通りで馬車の事故が起きたと言われて駆けつけてみれば、事故現場は野次馬達でごった返していた。この世界の住民は色々な動物の姿をした獣人が多いので、本当に馬の姿をした野次馬もいたりして少し面白い。
現場には馬車が横倒しになっており、ゴリラ的な獣人が腕を押さえて倒れ伏している。森の賢者も流石に馬車の衝突には負傷してしまったみたいだ。落ち着いた様子のセラが早速ゴリラ獣人に近づいて声をかける。
「大丈夫ですか」
「あ、ああ。腕がプラプラする意外は問題ない。お医者さん、どうしてプラプラしているのかわかるかい?」
「これは折れてますねぇ。骨折です」
「なんと……骨が折れているからプラプラしていたのか」
錯乱している様子もないので惚けた様子の問診を眺めていると、馬車の扉が吹っ飛んで中から人が飛び出してきた。
「やい! そこのお医者さん! とっても偉い僕から治療しろ!」
「元気そうですから、貴方は後で治療しますね」
飛び出してきたのは豪華な服を着た子供だ。
元気そうなのでセラは後回しにするつもりみたいだが……。
しかし相手はお邪魔系住民の代表格である貴族の子だ。引き下がることなく腰から杖を抜くと、こちらに向けてくる。
「僕を優先しろって……言ってるでしょ! ファイアボール!」
「おっと!」
怒りの声とともに飛んできた炎弾を棒きれで跳ね返す。
本来ならば魔法攻撃を避けながらの治療という変わったミニゲームが始まるのだが、それは俺がキャンセルだ。鍛えておいたパリィスキルが火を吹いた。
俺に弾かれた炎弾は、空へ打ち上げられて消えていく。
このミニゲーム、失敗するとセラの体力が大幅に減ってしまう嫌なタイプのやつなのだ。彼女を休ませるために手伝っている俺にとっての……敵、ということだ。
「あわわ! 覚えてろよ〜!」
俺が炎弾を跳ね返したので尻餅をついた貴族の子。
彼は馬車を魔法みたいな馬鹿力で復帰させると、他人の振りをして野次馬になっていた御者兼役の馬獣人にムチを打ち、馬車を引かせてすごい勢いで逃げていった。
貴族という存在は人々を守っていた者達の末裔なので、魔法を使えたり、あり得ないほど頑丈だったり、力持ちなのだ。その力を人々のために役立てて欲しい。
「ありがとう。お医者さん」
「どういたしまして。アレ? もう一人の患者さんは?」
「急に元気になって帰ったぞ。患者もいないし俺たちも帰ろう」
「なるほど、元気なら何よりです」
セラは治療に夢中でこちらに気がついていなかったらしい。
どうやら、彼女はお人好しすぎるだけじゃなくて目の前のことに集中してしまうタイプみたいだから、こういったミニゲームはやらせないほうが良さそうだ。
また一歩寄生から遠のいた気がするが、いずれは絶対に寄生してやるぞ
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