第11話 戦う理由と仲間
『俺と結婚して下さい!!』
あぁ。俺は本当に何を言っているんだ……。
ジャパニーズ土下座までして。
俺が一目惚れなんてするとは思わなかった。しかも少女に。たったそれだけの事で、殺し合いに首を突っ込むなんて……。でもそう思ってしまったんだよ。
ダダン本来の精神年齢に引っ張られているのだろうか。
「カーミカミカミ! 最高に面白いじゃん!」
「馬鹿馬鹿馬鹿ダダン! なに言い出してんだよ!」
分かっているよリッキー。リッキーが何を言いたいのか痛い程分かるよ。
「ダダン。キミが今何を言っているのか分かってるんですか? キミは平民。ソフィー様は王族です」
そんな事は、最初から分かってるんだよ。無理って事ぐらい……。
恐る恐る顔を上げていき、ソフィー様の顔を見る。
どんな心情なのかは読み取れない。胸の前に手を合わせ真顔だった。
そんな顔も恐ろしい程、美しい。
「分かりました。私が女王になった暁には結婚しましょう」
「え!? マジで!? 本当ですか!?」
「ええ本当です」
「ソフィー様!?」
「やったーー! 聞いたかリッキー! やったやった」
俺は飛び跳ねて喜んだ。
男ってのは、いや俺って生き物はこんな単純で不純な理由な程燃えてしまうものだ。この子を死なせない。勝たせたいと本気で思った。その為には何でもしよう!
「はぁ〜。もう何を言っても無駄だなこれは……俺様も手伝うしかないか」
「ではソフィー様に協力してくれるという事ですね!」
「ああ」
「とんでもない事に巻き込まれていくじゃん!」
「その殺し合いというのは、いつ始まるんだ?」
「一年後の今日です」
一年後の今日から殺し合いが始まるのか。一週間後とかじゃなくて良かった。
まだ準備する期間がある。
「ヘイヘイヘーイ!!」
バタンッと扉を開けて、今の状況下の部屋に入ってきた一人の人間が。
男? いや、女性だよな?
そう勘違いしてしまう程の体格をし、身長は軽く190は超えている。服から出ている腕は、丸太かと思うほど太い。
「ちょうどいい所に来ましたねリタ。これで全員揃いました」
「全員とは?」
「王を決める戦いは、リッキーを含めたここにいる五人で戦います」
「五人って! 本当かよ! 正気じゃねえだろ!」
リッキーの言う通りだ。五人で戦う? 何でもありの戦争なのに?
貴族も手伝うのなら、てっきり軍隊のような人数で戦うものだと思ったけど、どうやら違うみたいだ。
「私達の戦い方は、むしろ少人数の方が好ましい。それに人数が多くなればなるほど動きづらくなります。私達はこの人数で挑みます」
「ガーハッハッハッハ。結構結構! 十分だ!」
リタと呼ばれた大女は、俺の背中をバシバシ叩きながらそう言った。
「息が――でき――ない!!」
叩かれる強さが強すぎて息が止まる。
「おお悪い悪い! ところでお前誰だ?」
俺の顔を覗き込むリタ。
「ソフィー様と一緒に戦う仲間のダダンです」
「そうか! 私はリタってんだ! よろしく! 気軽にリタ姉って呼んでくれていいぞ!」
右手を差し出された俺は、同じように右手を出した。
「よ、よろしくリタ姉……」
握手した腕は上下に激しく揺さぶられ、腕が千切れそうになる。
い、痛い……。
「リタに頼みたい事があります。一年でダダン君を仕上げてもらえませんか?」
「コイツをかい!? 私がやったら死ぬかもしれないよ?」
「お任せします」
「って事でダダン! あんたは私が鍛える事が決まった。一年みっちり鍛えてやるからよ!」
えっ!? マジで!?
この人に鍛えてもらうの?
なんかスゲェ筋トレしそうだし、スゲェ脳筋そうだから嫌なんですけど。
「ちょっと待てよ筋肉バカ女!!」
リッキーがリタ姉の目の前に出ると、見えない速さでいつの間にか掴まれていた。
「おい! なんだこの人形……人形が喋りやがった! それよりなんて言ったこの野郎。バカはいい! 筋肉って何だよ! 私はこんなに華奢な女だぞ?」
いやいや、どう見たって筋肉が取り柄でしょ!?
「カーミカミカミ! リッキーいい気味!」
「うるせぇーナイツ! リタって言ったな? 一年後の殺し合いまでにダダンを本当に強くする事が出来るのか?」
「どれだけ強くなるのかはダダン次第だが、ちゃんと付いてきたら別人にしてやるよ」
「実力が見たい! 外に出ろ! 俺様と戦え!」
「いいぜ! やってやるよ!」
「やれやれ。血の気が多いですね」
リッキーとリタは、部屋の窓を破って外へと飛び降りた。
マジかよ……ここ二階だぜ?
「二人の戦い面白そうじゃん! 見に行こうじゃん」
俺は急いで屋敷を出て庭へと向かう。到着すると、二人はすでに戦っていた。
あまりにも激しい戦いに、どうなっているのか全く分からない。
二人の姿は見えず、リッキーの攻撃だろうか? 炎や雷などの魔法攻撃が散見される。
あれだけ図体の大きいリタ姉の姿が見えない。バコンッバコンッ! と大きな音がする度に地面が凹んでいるのが見えるだけ。
どっちが勝っているかなど、全く分からない。
戦っている音が消え、舞っていた砂埃が消えていく。
リタ姉の姿が見え、手にはリッキーが握られていた。
「なるほどねぇ〜! ジェノ侯爵があんたらを仲間に引き入れた意味が分かった気がするよ」
「俺様を捕まえるとはやるじゃねえか!」
「おや? もう終わりましたか?」
後ろを振り返ると、ジェノ侯爵がソフィー様を支えながらこっちに向かってくる。
「おっと〜〜??」
俺は急にリタ姉に担がれた。リタ姉の逞しい肩と背中の筋肉。
「ジェノ侯爵、ダダン持って帰っていいかい?」
「構いませんよ! 存分に鍛えてやって下さい!」
「任せろ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
リタ姉は、ロケットのような常軌を逸したスピードでその場を立ち去り、俺達をどこかへ運んでいく。
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