第23話 妹? の登場
「もしかしたら来るかもしれないだろ? 人間限界はないのさ」
「うるさいわね! ムカつくこと言われたから眠れないわ! おかげさまで!!」
「そのうち収まるよ。じゃ、おれは部屋行くから」
「ちょっと待ちなさいよ──!!」
カルエはベッドの置かれている、自分の部屋らしき場所に入り、ベッドに倒れ込む。
「はーッ!! 疲れた!!」
簡単な感想とは、すなわちそれだ。兎にも角にも疲れたのである。
「つか、原作通り進めばカルエって7回負けるんだよな。アラビカにオルタナに、読者の反応的にはマルガレーテへも。だけど、もう2回ひっくり返してるのか」
実は人気投票で5位を獲得している、噛ませ犬。あの小説の作者からも、人気のみで出番を勝ち取ったと言わしめた魅力あふれる男。
その小説の世界に入り込んだ少年は、カルエになった少年は、ニヤニヤと気味の悪い笑顔を見せる。
「いやー、死んで良かったと思える日が来るなんて。カルエ、ぼくは必ず君を勝たせてみせるよ。主人公を越えてやろう」
*
眠り始めた時刻が3時半ほど。起きたのは15時。およそ11時間以上眠っていたことになる。
ただまあ、睡眠不足のヒトは泥酔状態と変わらないとも言うので、これくらいがちょうど良いだろう、とカルエは、洗顔と歯磨きをするために部屋から出た。
「あれ?」
ルキアが起きていた。鬼の形相で。そこまでムカつくことを言ったのだろうか。
いや、カルエの発言は関係なさそうだ。先ほどから「ビューン!!」とか言いながら走り回っている子どもの所為だろう。
「…………カルエ、貴方妹いたの?」
「は?」
壁に落書きしまくる女児をよそに、ルキアがカルエに怪訝なことを訊いてきた。
「いきなり部屋に押し入ってきて、『あたいはカルエの妹!』とか言って、ずっと暴れてたのよ。うるさすぎて眠れなかったわ」
妹? いや、原作でカルエに妹の存在が示唆されたこともないし、ファンブックでも同様だ。
原作でも起こり得なかった出来事にカルエが硬直する中、その銀髪で緑色の目の女児は、カルエの袖を掴む。
「兄ちゃん! 会いたかったよ!!」
ここで、カルエは彼女の正体に気がついた。ロングヘアに分類される銀髪、銅器のように美しい緑の目、天真爛漫な表情、そして背中に小さく生えている白い翼。
名をカリナ。本来ならば、主人公サイドの連中が救い出す、全身改造人間。カルエたちと直接対峙することのない、しかし恐ろしい実力を持つ幼女。
「…………カリナか」
「おー! やっぱり……えーと、なんだっけ。えー、警察署の副署長の言う通りだ!」
(警察署の副署長? おそらくトラマーだな)
「トラマーって名前のヒト?」
「うん!! 確かそう!」
目をキラキラさせながらカリナは答えた。
カリナ。彼女は原作で出てくるとき、警察署の留置所に勾留されている。爛漫な性格が裏目に出て、街を壊しまくり、なんとアラビカと交戦したのである。結果、アラビカがかろうじて勝利を収め、彼女は刑務所に送られるために閉じ込められていた。
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