第22話 どうせチビペッたんですよ!!
そんな密談があったことなんてつゆ知らず、カルエとルキアは隠れ家に戻ってきていた。
「落ち着いた?」
「ええ……、あまり口径が大きくなくて助かったわ」
ルキアは肩に器用に包帯を巻いている。顔色は悪くなく、軽傷で済んだのは間違いない。
「それにしても、カルエ」
「なに?」
「貴方、
「まあね。おれにかかれば、お茶の子さいさいさ」
「しかも
「近いうちにブラッドハウンズへ飲み込まれるかもね」
ブルームーンは、大した組織ではない。ブラッドハウンズとまともに抗争すれば、まず勝ち目はない。それは資金力においても、力技であろうとも。
だから、警察と取引してでも、資金が必要だったのだろう。原作通りに進めば、裏社会の組織はいつしか大抗争を起こすことになる。それを知ってか知らずか、ブルームーンは最善を尽くしたというわけだ。
「それで? 私の傷は2日もすれば治るわ。ジーターへ語ったように、やっぱり警察署を襲うの?」
「もちろん。3日間、準備期間があれば充分勝機はある」
「具体的には?」
「マルガレーテとアラビカをぶつけさせる」
椅子にもたれながら、カルエは軽い口調で言い放った。彼は続ける。
「まず、マルガレーテとブラッドハウンズの連中に騒ぎを起こさせる。連邦保管庫強盗あたりが好ましいかな。そうすりゃ、市長もアラビカほどの戦力を出さざるを得ない。でも、それはただの陽動作戦さ。アラビカが出張ったあと、おれたちが警察署を襲ってデータを奪取する。まあ、いまのところの計画はそんな感じだね」
ルキアはポカン、と口を開け、手を広げた。
「連邦保管庫を襲わせる? ウィング・シティでもっとも警備の堅い場所を? そんな世迷い言をマルガレーテが承諾するとは思えないわ」
「そうかな? マルガレーテは暴れるのが大好きな女だぞ? たくさんの警察や警備員を相手して、大暴れできるってなれば、彼女も大喜びで乗ってくれるはずさ」
この街でもっとも危険な女、マルガレーテ。最重要指名手配犯──MWFに指定されていることも、彼女が異常な暴力主義者だからだ。
「ともかく、その図面で行く。あした、マルガレーテに伝えておくよ。きょうはもう遅いしね」
グラスに入ったウィスキーと氷を揺らしながら、カルエはなにもないカーテンを見つめる。
(……。問題はどこで主人公勢が関わってくるか、だな。アイツらは補正を持ってる。どんなに計画を立てても、どんな兵隊を使おうとも、それらを主人公補正だけで倒してしまう)
「どうしたの? 急に黙り込んで」
「なんでもないよ。さあ、ルキア。もう寝よう。寝ないと、肩の痛みも身長もバストサイズも伸びないぞ?」
「な、なによ!! 今更成長期なんて来ないわよ!! どうせチビペッたんですよ、私は!!」
顔は可愛らしいが、低身長でスリーサイズも貧相なルキアは、顔を真っ赤にした。
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