第21話 モダン・タイムズ町の一件の決着

「ルキア、大丈夫か!?」

「カルエ……、これくらいで私は死なないわよ」


 彼女の顔は蒼白だが、意識はしっかりあるようだ。


「とにかく、応急処置しないと。もうじきブラッドハウンズの連中が来るはずだから、医療キットを持ってこさせるよ」

「ええ……、ありがとう」


 そんな折、死体の山が広がる倉庫の扉が重低音とともに開いた。カルエは一瞬拳銃を構えるが、彼らがブラッドハウンズの構成員であること──赤を基調にした服装なのを知り、ハンドガンを降ろす。


「よう、大丈夫か? カルエ・キャベンディッシュ」


 そのうちのひとりが、カルエに注射器を投げてきた。痛み止めだ。カルエはルキアの右腕にそれを打ち、彼女の蒼い顔が赤くなるのを確認する。


「相棒の肩が撃たれちまったけど、なんとか全員倒したよ」

「へー、ブルームーンの特攻隊長いるじゃん。やるなあ、オマエら」


 上半身が焦げ、ピクリとも動かず、それでも不気味な笑みを浮かべるレンフェを見て、彼らもカルエたちの実力を理解したはずだ。


「とりあえず、ここはもう安全じゃない。一旦隠れ家に戻れ。車なら用意してあるからよ」


 *


 ところ変わって、ウィング・シティ第3警察署。

 署長室でコーヒーとタバコに巻かれる、黒い薄毛の中年男性アラビカは、いつまで経ってもモダン・タイムズ町の倉庫で武器取引している部下たちからの連絡がないことに苛立っていた。


「アイツら……、横着しやがって」


 そんなアラビカのもとに、ヒラの警官が訪れる。


「アラビカ署長、緊急事態です」

「なんだ?」

「その、例の取引に向かっていた職員が全員死傷したと……」


 アラビカはタバコを灰皿に押し付け、舌打ちし、深呼吸しながら6秒間沈黙した。

 そして、

 報告しに来ただけの警官は、アラビカに撃たれた。


「──クソがァ!! てめェらはカカシか!? なぜ極秘の武器取引が妨害されるんだ!? 誰だ、情報を漏らしやがった野郎、いや……妨害しやがったクソ野郎は!!」


 肝臓を撃たれ、まともに呼吸もできなくなった警官を、アラビカは何度も踏みつける。


「おらァ!! 答えろよ!! もう一発くらいたくねェなら、さっさと犯人を教えろ!!」

「署長、落ち着いてください」


 鼻がへし折れ、口から吐血する警官を憐れんだのか、アラビカを止める存在が現れた。


「あァ!? おれに指示するつもりか!? トラマー!!」

「いえ、署長。犯人の目星はついてます」トラマーという筋肉質な男は、「実行犯はカルエ・キャベンディッシュです。あの野郎、おれたちが武装強化するのを察知していたみてェで、そこをうまく叩かれました」


 アラビカは倒れ込むヒラ警官を蹴り飛ばし、


「そうかよ……。やはり、あの野郎は厄介だな。トラマー、いますぐカルエ・キャベンディッシュのヤサを探し出せ。あのガキ、警察の威信を懸けて生かすわけにはいかねェ!!」


 トラマーは、他の職員に出血多量の警官を回収するようジェスチャーを出しつつ、


「御意」


 頭を下げた。

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