第20話 殺人狂(サイコキラー)

「が……ハァ──!!」


 カルエはまるで原作通り、いや、原作以上に冷酷な表情を浮かべたまま、トリガーを引き続ける。ルキアを傷つけたこの男を、決して許すまいと。

 やがて、弾倉が空になり、レンフェは穴だらけになったまま床に転がる。


「クソが」


 カルエは軽機関銃を放り投げ、急いでルキアのもとへ駆け寄ろうとした。

 そのとき、


「あがが……ぎゃひゃはははははは!!」


 カルエの左半身に、鈍い痛みが走った。彼は奇怪な笑い声を張り上げるレンフェのほうを向く。

 そこには、殺人狂サイコキラーに成り果て、目を赤く充血させ大きく開くレンフェがいた。


「あぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」


 レンフェだった者は、カルエとの間合いを一瞬で狭める。カルエの目が恐怖を捉えたときには、青年は倉庫の奥深くまで吹き飛ばされていた。


(クソ!! 身体改造のレベルを上げやがったか……!!)


 身体改造は出力を変えられるものもある。おそらく、殺人狂サイコキラーに成り下がった彼は、痛みのあまり制御しきれないところまでレベルを上げてしまったのだろう。


「どぉした? おらァ、かかってこいよォ」


 ふらふらと身体を揺らしながら、殺人狂サイコキラーは猛り笑い、カルエとの間合いをまたもや狭めた。


殺人狂サイコキラーは時間経過で死に至るけど……、どれくらい暴走状態を続けられるかは未知数。クソッ、原作でもレンフェは殺人狂サイコキラーにはならなかったぞ?)


 殺人狂サイコキラーに陥った存在は、圧倒的な力を手にする代わりに、そのパワーアップは制限時間付きだ。時間さえ過ぎれば、殺人狂サイコキラーは勝手に死んでいく。高性能なゾンビみたいなものだ。

 されど、カルエが考えている通り、レンフェは原作では殺人狂サイコキラーにならなかったし、ならなかったからには、どの程度この状態が続くかも分からない。

 と、更に追撃される。カルエはかろうじて改造してある右手で彼の拳を受け止めるも、義手が吹き飛ぶかと思ってしまうくらい、重たい一撃だった。


「きゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!」

(冗談じゃない。ルキアだって肩撃たれてるんだぞ? もう時間がないのに……!!)


 なにか手立てはないか。カルエは倉庫一面を見渡す。


「うひゃひゃひゃひゃ!!」

(4連装ロケット・ランチャー? なんの弾が入ってるか知らないけど……やってみる価値はある)


 そう、ここは武器取引が行われていた場所だ。

 カルエは次々と追撃してくるレンフェの攻撃をなんとか交わしつつ、滑り込むようにロケット・ランチャーを手にする。

 そして、カルエは倒れ込みながら弾丸を放った。


「ぎゃははははは!! ──!!?」


 その頃には、レンフェだった殺人狂サイコキラーの胴体は燃え盛っていた。ぼおお……という炎の音とともに、殺人狂サイコキラーの身体が燃えていく。やがて、レンフェの上半身は消え去った。


「汚物は消毒、ってな。あばよ、殺人狂サイコキラー


 カルエは、レンフェの動きが完全に停止したのを確認し、上階にいるルキアのもとへ駆け寄っていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る