第16話 報いる方法
「随分優しいな」
『同盟者には誠実なんだよ、暴力主義者は』
「まあ良いや。そっちに向かう。位置情報を送ってくれ」
『あいよ』
電話は切られた。
カルエは顔をタコみたいに赤くするルキアに向き直し、「隠れ家、移すことになったよ」と伝える。
「カルエが私のことを好き? いや、私たちはただのビジネスパートナーであって……」
「どうしたの?」
「なんでもないわよ!!
*
きのう、カルエは見上げてしまうほどのタワーマンションの前で闘ったわけだが、それに劣らないくらい摩天楼みたいなマンションを用意されたらしい。
最前から、(理由は分かっているが)カルエと話そうとしないルキアとともに、ふたりは眼前にいる巨漢へ話しかける。
「やあ。君がマルガレーテの……」
「そうだ。ブラッドハウンズのNo.2のジーターだよ」
落ち着いた雰囲気を醸し出す、170センチ程度のカルエが見上げなければならない男前のジーターは、カルエへカードをわたしてきた。
「部屋番号は2902だ。当然だが、家具も一式揃ってる」
「ありがとう」にこやかに返事する。
「こんな女みてーな顔のヤツが、ウチのボスと引き分けたなんて信じられねェな……」
カルエ・キャベンディッシュは中性的な顔立ちだ。銀髪の長さも相まって、余計に女っぽく見えてしまう。なので、ジーターが疑念に思うのも致し方ない。
「引き分けたおかげで物語のネジをぶっ壊せたんだし、アンタみたいな男前にも出会えたってわけさ」
「なあ、カルエ・キャベンディッシュ」
「なんだ?」
「オマエ、どれくらい計画を立ててるんだ? アラビカのクソ野郎をぶっ潰すって啖呵切ったのは良いが、いかんせんウチのボスは単細胞だ。うまく丸め込まれたのかもしれんと思ってよ」
敵対的な雰囲気である。ジーターはあの場にいなかった上に、原作でも思慮深い人物なので、この程度の追及はされるに決まっている。
「そうだな……。まず、警察署を襲うところから始めないといけないな」
「署を襲う?」
間髪入れず、「そこでヤツが不法逮捕した連中のデータを奪う。そのデータを元に、刑務所を襲う。そして、ムショにいるはずの逮捕されたヤツを確保し、ソイツに証言させる。まさしく監獄ロックだね」つらつらと語る。
これは、主人公勢が“結果的”に行うことを、先にやってしまおうという魂胆だ。アラビカは強引かつ無法な方法で監獄へヒトを送り込んでいる。当然、刑務所から発信はできないので、それが表になることはない。……主人公勢が絡まなければ。
「なるほど……。ボスがオマエを買ってる理由がすこし分かったよ。それをやるには人員や資金が必要だし、だからおれらと同盟を結んだのか」
「そういうことだ。ブラッドハウンズと言えば、マーキュリー区を支配する巨大組織だろ? 人手もカネも持ってるに決まってる。それがなかったおれらじゃ、なかなか実行に移せなかったけど、これでアラビカに報いることができるわけさ」
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