第17話 相思相愛

 ジーターはカルエの説明を聞いて、慎重に考え込む様子を見せた。その目はカルエを鋭く見据え、本心を探るようだった。


「……。まあ、ボスがオマエのことを認めてるんだ。おれもオマエを信じるよ。だが、裏切ったら容赦しねェぞ?」


 カルエは苦笑いを浮かべ、軽く肩をすくめる。


「裏切ったところで得がない。だったら一蓮托生さ」

「ふん、上等だ」


 ジーターはカルエにカードキーをわたしてきた。


「こっちも人員を用意するのに時間がかかる。しばらく隠れてろ」

「ありがとう」


 カルエは手を上げ、先ほどからぶつぶつ(カルエの他愛もない言葉に悩まされ)独り言を垂れるルキアを連れ、タワーマンションへ入っていく。


「すごいね。きのうまでボロアパートだったのに、いまじゃタワーマンションだ」

「……、カルエ」

「なーに?」

「私も貴方を愛してるわ」

「そりゃあ、どうも」笑みを交える。

「だったらもう、私たち付き合ってるのよね?」

「いや? おれは相棒として愛してるって言っただけだよ?」


 ルキアは顔を真っ赤に染め上げ、いますぐにでもカルエに殴りかかりそうだった。カルエはひとまず、小柄な彼女の拳を交わし、下を向きながら嫌味な笑みを見せる。


「なんで避けるのよ!!」

「殴りかかられそうになったら、避けるに決まってるでしょ」

「ヒトの心を弄んだくせに!!」

「ルキアはおれのこと好きなの? 本当に?」

「当たり前でしょ!! 貴方がいなければ、私はただのストリート・チルドレンで終わってたんだから!!」


 ファンブックに記載されていたが、ルキアはストリート・チルドレン出身だ。それによれば、カルエはルキアを誘って一連の出来事にいざなったらしい。

 だから、ルキアなりにカルエへは感謝しているのだろう。


「そりゃあ、ありがたいな」カルエは涼しげな顔で、「でも、まだ付き合えないよ。おれはまだ、この街の頂点に君臨してないからね」


 ちなみに、原作ではカルエもルキアに恋愛感情があったという。まさしく相思相愛だ。とはいえ、原作通りに進んでしまうと、ルキアはカルエをかばって死んでしまうので、まだまだ恋人関係になるには早いだろう。せめて邪魔立てする連中をあらかた片付けてから、だ。


「……頂点に立って歴史を塗り替えましょう。カルエ」

「もちろん」


 ふたりは2902号室にたどり着いた。


「広いな。本当にふたり用なの? ここ」


 広々とした部屋だった。ふたりで住むにしては、あまりにも広すぎるほどに。

 とはいえ、しっかり裏社会の連中が用意したものだ。食事用の机には『M6A1』という最新のアサルトライフルが置かれているし、グレネードランチャーも、『M2011』も二丁用意されていた。


「食べ物はあるのかな」


 カルエは冷蔵庫を見て、中に一週間分は保つ肉やら野菜が配備されているのを知る。


「こりゃ良い。さぁーて、飯でも食べながら作戦練りますか~」


 すぐ食べられるチキンとコーラを取り出し、カルエとルキアは椅子に座り、早速情報屋レイ・ウォーカーに電話をかけた。

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