第2話 それぞれの朝 竿谷日向(さおや ひなた)
竿谷日向の朝は早い。起きてまず、歯磨きと顔を洗ったら、洗濯機を回して、そのままご飯づくりに取り掛かる。まずはご飯を炊く。ジャガイモを切ったら、鍋の中に入れて、その間に玉ねぎを切って入れる。かぼちゃせいやっ!割ったら、綿を取ってレンジに入れる。その間に鮭とえのきを味付けして、グリルに入れる。その間にいったん使ったまな板などを洗いながら、レンジのチン!の音がしたら、鍋に移し替えて調味料を入れて落し蓋をして煮詰めた。そうこうしている間に鍋のお湯が沸騰したので、火を消して味噌を解く。もう一度温めたら、鍋敷きに移して、卵を割る。うんと甘めの卵焼きをせっせと作った。その間に鮭のアルミホイル焼きもいい加減で卵焼きを巻きながらグリルの火を消した。
一通り料理の作業を終えたら、今度は洗濯機が呼び出すので、手早く浴室乾燥機に干していく。それから家中くまなく掃除をしてからようやく、日向はテーブルについた。
「いただきます」
ご飯にぬるくなった味噌汁、そして卵焼きの切れ端をかじる。日向の母親は看護士だった。今日は夜勤だ。それまでにお腹を満たすだけのものは作れただろう。
「ごちそうさまでした」
そう言って、皿洗いをすませ、ようやく学校へ行く支度を始めるのだ。制服に着替え、鏡に映った日向は目は丸く大きいがちょっと鼻が大きく、口が小さい。いわゆる美人の類ではない。けれど日向は自分の顔を余すことなく愛していた。動きやすいように長い髪の毛をきれいに解いて動きやすいように高めの位置でポニーテールにする。そうして、父の仏壇の前に行き、「いってきます」と手を合わせる。
日向は父が大好きだった。
底なしに明るい、とは父のような人のことを言うのだと、竿谷日向は思う。「ありがとう」の声がひと際大きな人だった。今日も聞こえるその声に、竿谷日向は元気よく「いってきます!」と言って外へ出た。
自転車で海辺のこの街を走るのは心地よかった。9月に入ってもまだ、夏の後はしっかりと残っていて、切る風はぬるめだが、それでも通り過ぎて行く速度が気持ちいい。さあ、雨洞氷雨を迎えに行こう。ようやく上がりだした太陽に竿谷日向は足を思い切り広げて思った。
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