第10話 変態、ストレッチを教える

 訓練場に整列する第一騎士団。なぜか回りが騒がしい。みんな第一騎士団の服装に驚いている様子だった。



『見世物ではない!!』



 紺ブルマ姿のアリアさんが一喝すると、一瞬で野次馬共が消えていった。



(物凄い威圧感。アリアさんが真剣な時は、何人たりとも寄せ付けない迫力がある。まさに鬼の騎士団長という雰囲気)



 俺は紺ブルマに包まれた、アリアさんのお尻を見ながら思う。


 アリアさんが団員の前に立つ。第一騎士団の精鋭中の精鋭がおよそ30人、直立不動で微動だにせず整列している。


 全員が紺ブルマを穿き、体操服を着ている。



「よし!!綱登り50回!!」



 アリアさんがいきなり言い放った。



「ちょ、ちょっと待って!!」


「ツバサ殿、どうしましたか?」


「ウォーミングアップ…ストレッチとか柔軟はしないのですか?」


「ストレッチ?柔軟?何ですかそれは?」


「えっ!?」



 俺はアリアさんの言葉を聞いて、思わず絶句をした。



「普通はトレーニングをする前に筋肉をほぐしたり、筋を伸ばしたりしないといけない」


「そうなのですか?確かに怪我や故障が多い気がしますが…気合で何とかなるものなのでは?」


「……………」



 俺はアリアさん、否、この世界の脳筋ぶりに言葉を失ってしまった。


 

「そんなわけが無いでしょう!!アリアさん、あなたは団長なのでしょう!!団員の体の事も考えなくてはいけませんよ」


「確かに…。実はみんな怪我ばかりして困ってはいたのです。しかし、私は団員が精神的にたるんでいるだけかと思っていました。私もそう教えられて来ましたから…」


「断じて違いますから!!…良かったら俺が教えましょうか?」


「異世界の知識は、非常に役に立つものが多いと聞いています。ぜひお願いします」


「分かりました。お任せください!!」



 俺は体育教師でも、運動部の顧問でも無かったので、実は専門的な事はよく分からない。


 ただ…スケベなポージングのストレッチには詳しかった。俺も急遽、短パンと体操服を作り、ストレッチを指導する事にした。



(ふふふっ、これは意外な展開!!俺のお気に入りのストレッチを教える事にしよう!!)



 真剣な顔をしてこんな事を考えている俺は最低であるが、許して欲しい。男とは、こういう生き物なのだ。



「まずは、二人一組になって…。アリアさんは俺と組みましょう」


「分かりました。お願いします」



 アリアさんの真剣な表情に少し胸を痛める…が、スケベな心には勝てない。俺は心が弱い人間なのだ。



「みんな、俺達の真似をしてくれ。まずはお互いに向き合って脚を広げて座って…出来るだけ広げて…そう、良い感じです。相手の手首をつかんで交互に引っ張って、筋肉や筋を伸ばしていく。最初は軽く、徐々に力を入れていく感じで…」



 俺は指導しながら、アリアさんの大きく広げられたお股に視線がいく。



(真っ白な太ももが素晴らしい!!あと…紺ブルマを穿いた股間も…素晴らしすぎる!!も、もっと近くで見たい!!)



 俺は不埒な思い全開で指導を続ける。



「アリアさん、もっと力を入れて引っ張って下さい!!」


「は、はい」



 アリアさんは俺の不埒な思いなど知りもせず、素直に俺の指導に従う。俺の体はアリアさんに引っ張られ、顔が少しずつアリアさんの股間に近づいていく。



「も、もう少し…もう少し!!」



 目の前にアリアさんの股間が迫るが…



『グギッ!!!!!』



 俺の腰から嫌な音が…一瞬で頭の中が真っ白になり、腰に激痛が走った。



「ギャーーーーー!!」



 この世の終わりかと思うくらいの激痛が俺を襲う。息もできない。



(き…き…きし…起死回生)



 何とかスキルを発動し、危機から逃れる。アリアさんが心配そうな顔をして俺に寄り添う。



「申し訳ありません。力を入れ過ぎましたか?」


「い、いえ、大丈夫です。自分が無理をし過ぎただけなので、アリアさんは無関係です。こちらこそ失礼しました」



 申し訳なさそうに俺に謝るアリアさんを見て、不埒な思いを心から悔やむ。



「みんな、力は加減してください」



 と言い、気を取り直して、俺はアリアさんと何種類ものストレッチを続ける。団員のみんなも俺の指示に素直に従ってストレッチを行ってくれた。



「では、これが最後になります。みんな、四つん這いになって!!」



 アリアさんをはじめ、30人が四つん這いの姿に…。俺は指示を出しつつ、ごく自然に後ろに回り込んだ。



「良い感じです。もう少し、頭を下げてお尻を上げてね。背筋から腰にかけて、しならせるイメージを持って…」



 俺の目の前には、四つん這いになった女性騎士。そして紺ブルマに包まれた鍛え抜かれた巨尻が…30尻も!!たまらん!!



「しばらくその体勢を維持します。背筋が伸びて、怪我の防止になるからね」



 俺はこの世の絶景を楽しみながら、それらしい指示を出す。



「うっ!?痛っ!!」



 団員の一人が痛みを漏らした。明らかにこの団員だけ背中が曲がっていない。



「どうしました?」


「腰を痛めていて…これ以上は曲げられないのです」


「それはいけない!!俺が見てみましょう!!」



 俺はそう言い、彼女の背中から腰のあたりを撫でる。



「ひゃっ!?」


「どうしました?痛みがありましたか?」


「い、いえ…続けて頂けますか?」


「もちろんです!!」



 俺は彼女が心配のあまり、体を擦り続ける。背中からわき腹、そして腰の周辺を重点的に…。そして最後に『起死回生』を使い、回復させる。最初からスキルを使えばいいと言われるかもしれないが、物事には順序というものがある。断じてスケベ心ではない。



「あっ!?こ、腰の痛みが無くなりました!!」



 彼女は膝立ちになり、嬉しそうに回復した腰を振る。



(その確認の仕方はどうかと思うよ…)



 俺はそんな事を思いながら、嬉しそうに腰を振る彼女の姿を見つめるのであった。






【アリアルーナ視点】


(訓練を始める前に体の筋を伸ばし、筋肉をほぐすですか…。確かに理にかなっていますね。ツバサ殿の案、採用しましょう)



 私はツバサ殿と組んで、ストレッチといわれる体操を行う。


 大きく股を開き、ツバサ殿と向き合う。



(ブルマを穿いてこの体勢は、結構、恥ずかしいものがありますね。でも、私の思いを悟られるわけにはいきません。それに…目の前にはツバサ殿の股間も…)



 私は短パン姿で大きく股を開いたツバサ殿を見て思う。しかも、その短パンが大きく盛り上がっているように見えるのは気のせいでしょうか。胸が高鳴ってしまいます。


 ツバサ殿が私の手を引っ張ると、徐々に私の体がツバサ殿に近づいていく。もともと体が柔らかい私の目の前には、ツバサ殿の股間が…も、もう少し、もう少しで…。



(理性を保て!!アリア、団員が見ているのだぞ!!)



 私は自分自身に言い聞かせ、何とか平常心を取り戻す事に成功したのでした。



「みんな、四つん這いになって!!そう、頭を低くしてお尻を高く。猫の様に背筋をしならせて!!」



 私を筆頭に、団員が全員四つん這いに…。



(確かにこれは肩や背中、腰の筋肉や筋をほぐす効果がありそうですね)



 私はツバサ殿のスケベ心になど気が付かず、感心をしてしまうのでした。

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