⑰百合漫画の主人公の妹の琴梨は友達との百合フラグに気づかない。

「どの教科書を見てもすごいな…

 本当に女の人しか出てきてないじゃん…」


私、愛田琴梨、中学2年生は私のおねえちゃんである

愛田雛に転生した晴都さんと一緒に、女の人しか居ない世界に来たわけですが

正直、まだ慣れないことばかりで戸惑っています…

たとえば教科書だと歴史上の人物達が全員、女の人だったり、昔の人が作った恋の短歌も女の人が女の人へ書いたものだったり

さっさらに…女同士で…どうやったら子供が出来るとか…書いてあったりだとか…

とっとにかく、前の居た世界とは全然違う事がいっぱいで、頭が混乱しています…

そして何より、慣れないというか、驚くことがあります…それは…


「好きです、琴梨先輩!付き合ってください!」


「ごめんね…申し訳ないけど…付き合えない…」


ズーーン!


「そっそうですか…」


なぜか私、さっきから告白されます…


「ふぅ…」


「琴梨っ!」


「ひゃ、なっ何?」


「私だよ、私?」


「何だ、咲ちゃんか…」


後ろから抱きついてきた彼女は同級生の福路咲、去年から同じクラスで

前の居た世界でも仲良くしていた友達の一人、私は咲ちゃんと呼んでいます。


「さっきの休み時間も告られてたじゃん?

 今日だけで一体、何人に告白されたんだ?」


「3人…」


「くぅぅー!相変わらずモテててるなー!」


「やっぱり私、モテててるんだよね…」


「おいおい、何だそれ?

 まるで自覚ないみたいな言い方だな?」


「どう反応すればいいか、分からないだけ…」


「素直に喜べばいいじゃん?

 私なんか人生でまだ一人ぐらいしか告白されたことないぞ?」


「へえ?一人はいるんだ?」


「何だー?その上から目線はー?

 私に告白するやつなんか居ないと思ってたのかー?

 このっこのっー。」


「ひゃははっ、思ってない!思ってないから!

 お願いだから、くすぐらないで!」


「本当かー?」


「ハァハァ…ちょっとだけ思ったけど…」


「思ってんじゃねぇか!おしおきだー!」


「ひゃははっ、冗談、冗談だってば!」


「冗談に聞こえなかったつーの!

 どうせ私はおまえみたいに可愛くないからなー!」


「そんなことないよ…?」


「えっ?」


「私は咲ちゃんの方が可愛いと思うよ。」


「なっなっ…今の本気で言ったのか…?」


「そうだよ?そんなに驚くこと?」


「おまえって…本当に無自覚たらしだよな…」


「今、小声で何か言った?」


「なっ何でもないつーの!このっこのっ!」

 

「ひゃははっ、やめて、やめて!」


【ねぇ…私がお手洗いに行ってる間に

 何、二人だけで仲良くしてるの…?】


「えっ?」

「えっ?」


険しい表情をして現れたこの子は眼路乃岬、この子とは小学校が同じで

咲ちゃんと同じように前の世界でも仲良くしていた友達です、私は岬ちゃんと呼んでいます。

何で険しい表情なのか、わからないけど…?


「お帰り、岬ちゃん?」


「もう、戻ってきたか」


【私が居ないからって、琴梨ちゃんを独占するなんて、福路さん、ズルいよ…?】


「べつにいいじゃんか、琴梨はおまえの彼女とかじゃないんだから

 いちいち許可なんかいらないはずだろ?」


【だったら何なの…?私はただ大事な琴梨ちゃんに

 下心で近づくなって言ってるだけだよ…?】


「下心なんかしてねぇよ?」


「なっ何で二人とも睨み合ってるの?」


「ニコッ、何でもないよ、琴梨ちゃん

 二人で仲良くしてたのにちょっと妬いちゃって

 私がわるふざけしただけだから、ねっ?福路さん?」


「えっあっああ、私もそれに合わせただけだ。」


「何だ二人でふざけてただけか、もう驚かせないでよね?」


「ごめん、ごめん。」


「すっすまん。」


「そろそろお昼休み終わっちゃうし

 私、飲み物買ってくるね。」


「わかった。」


「行ってらっしゃい。」


琴梨は教室を出て自動販売機に向かった、するとすぐに…


【琴梨ちゃんの手前、仲良くしてるけど…

 私、あなたのこと嫌いだから…】

 

「こっちのセリフだ」


【あんたになんか、琴梨ちゃんは渡さない。】


「だからこっちのセリフだ」


そしてそんなことをつゆ知らず、琴梨は自動販売機で頭を抱えていた。


「そんなー!私の好きな苺味のジュースがないじゃんー!」

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