⑬オレ、百合漫画の主人公になって、最初の攻略相手に会ったよ。
「じゃあ、私はこっちから曲がるから、ここで。」
「うん、学校、頑張ってな。」
「そっちもね、くれぐれもおねえちゃんの名に傷をつけるような
行動だけはしないように?わかった?」
「はいはい、わかってるって、それじゃ。」
「本当かな…?心配…」
主人公の愛田雛が通っている高校は家の近所にあって
前の世界では共学だったらしいが、そこは女しかいない世界、ちゃんと女子校になっている。
「いよいよこの門をくぐったら
始まるんだな、オレの愛田雛としての物語…
あの素晴らしい百合がオレを待ってるんだ。」
オレはこれから始まる百合漫画の展開を思い出しながら
期待で胸を膨らませて、学校の門をくぐった!
するとさっそく、オレのテンションを上げる人物がいた!
(あのジャージの先生は確か!)
「藤崎先生、おはようございますー。」
「おう、おはよう!」
「おはようございます。」
「おはよう!」
「藤崎先生、おはようございます!」
「おう、おは…えっ!?
愛田、おまえ、今日は寝坊せずに来れたのか…?」
「はい!」
「ぐすんっ…偉いぞ…先生は感動した…
あの遅刻記録最多のおまえがな…
やっと改心してくれたんだな…」
「あはは、そこまで喜ばれると本望だと思いますよ。」
(やっぱり漫画に度々出てきた熱血体育教師の藤崎先生だー!)
「この調子で、遅刻しないように頑張れよ?」
「はい!」
雛(晴都)は漫画の登場人物に会えて、ウキウキ気分で、学校の玄関に入ると
雛の靴箱の靴に履き替えて、迷わずに教室に向かった。
「1年A組…ここだ…雛のクラスの教室は…
スゥゥ…ハァァ…行くぞ!」
雛(晴都)は深呼吸して、教室に入った。
「えっ!?」
「愛田さんが遅刻せずに学校に来た!?」
「うそ…マジ…?今日は台風にでもなるんじゃないの…?」
「おはよう…」
(あはは、みんな、面白いぐらいに驚いてるなぁ…)
「おはようー!ひよっちー!」
「ひゃっ!おっおはよう!」
(うおぉぉぉ!あの豆っちだぁぁ!)
オレは叫びたくなるほど興奮していた!
なぜならこの無邪気に抱きついてきたツインテールのロリな子は
豆山兎姫、あだ名は豆っち、雛と鶴子の中学からの友達で
漫画で5人目に攻略対象になる重要なキャラなのだ!
「今日は遅刻しないで来れたかー!
めずらしいこともあるんだなぁー!」
「まっまぁね!」
小さくて可愛いすぎるぅぅ!本当に同い年の高校生なのかって思うレベルなぐらい幼いなぁぁ!
「おっおはよう…雛ちゃん…」
「はっ!君は!」
うおぉぉぉ!ついについに現れた!
この大人しい雰囲気の三つ編みおさげの眼鏡美少女こそ
主人公の雛、つまり転生したオレが最初に攻略しなくてはならない攻略相手!!
幼馴染の鏡原鶴子だぁぁーー!
「あっあれっ…?雛ちゃん…?」
「おーい、ひよっちー?」
「あっおはよう!鶴子ちゃん!」
「よかった…いきなり黙るから…
体調でも悪くなったのかなって…心配したよ…」
「鶴子ちゃん…」
漫画の通り超優しいぃ…それに漫画じゃわからなかったけど…すっごい癒やしのボイス…
あの声で子守唄とか歌ってもらったら、速攻で寝ちゃいそうだぁぁ…
「雛ちゃん、今日は早起きなんだね…?」
「だろー!私も驚いてた所だー!」
「あはは、頑張ったら、起きられたよ。」
「そっか、偉いね…」
「偉い!偉い!」
「ぐおっ、二人とも可愛いすぎる…」
「どっどうかしたの…?」
「なっ何でもないよ!」
だがしかし言葉とは真逆にあまりの尊さに鼻血が出た!
「キャー!雛ちゃん!鼻血が出てるよ!?」
「本当だ!どうしたんだ、ひよっち!」
「こっこれは朝食に大量のチョコを食べてきたからかなぁー!」
「そっそうなの…?」
「あっうん、だから心配しないで!」
「あはは、ひよっちも私みたいな子供っぽいことするんだなぁー?」
「ふっふ、本当だね、雛ちゃんもそんなことするんだね…?」
「まっまぁね、あはは、あはは。」
ふぅ、とっさの言い訳だったけど、何とか誤魔化せたみたいだ…
でも少し気をつけた方がいいよな、興奮して鼻血を出したなんてバレて、二人に引かれるなんて事態になったら
攻略どころじゃなくなっちゃうもんな…
はっ!というかそうだった!漫画の重要登場人物の二人に会えて、テンション上がっちゃって、すっかり忘れてたけど!
本来の目的、転生したオレが果たさなくちゃならないこと、最初の攻略相手、あの鏡原鶴子を攻略をすることだよな!
「雛ちゃんの新たな一面が見れて嬉しいな…」
この子を攻略する方法は漫画で見たから知っている
鏡原鶴子は主人公の雛に幼い頃から一途に片想いをしていて、おとなしい性格から、ずっとそれを押し隠していたのだ。
だから、彼女を攻略する方法はただ一つ、『こっちから告白すること』
漫画で見て、ちょうどいいタイミングもわかってる、これは漫画通りにやれば勝てる戦なのだ…でもそのはずだけど…
「ぐおっ、鶴子ちゃんの微笑んだ顔が可愛いすぎる…あっ…」
「えっ!?雛ちゃん、雛ちゃん、しっかりして!」
「ひよっち!?」
「グヘヘ…あの鶴子ちゃんに抱いてもらってる…
いつくたばってもいい…」
「雛ちゃん〜〜!」
雛(晴都)は漫画のキャラがあまりに可愛いすぎて、どうやらファンとしての興奮を抑えきれないらしい
鼻血の出し過ぎで、貧血状態になったのだった。
そしてちょうどその頃、琴梨はというと…
「おね…晴都さん…だいじょうぶかな…
今頃、興奮とかして、鼻血とか出してたりしなきゃいいけど…」
琴梨の予想は見事に的中したのだった。
「琴梨ちゃん、心配そうな顔して、何か悩み事…?」
「なっ何でもないよ!」
「そう…?でも何かあったらいつでも相談してね…?
同級生として…力になりたいから…ねっ…?」
「あっありがとう…岬ちゃん…」
(ああ…琴梨ちゃん可愛い…)
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