⑫オレ、百合漫画の主人公の妹と初めて一緒に登校したよ。

「ふわぁぁ…結局、あの後…二度寝しちゃった…

 お母〜さん、もう朝ご飯出来てる〜?」


「おはよう、琴梨ちゃん。」


「おっおはよう。」


台所に居たのはお母さんではなくエプロン姿の雛(晴都)だった。


「朝ご飯なら、もう出来てるぞ。」


「あっうん、ありがとう…顔洗ったら、食べるね…」


「わかった、用意して置く。」


そうだった一日目経ってすっかり忘れてた

この世界にはお母さんもお父さんもいないことになってて

家には私とおねえちゃんに転生した晴都さんの二人しかいないんだった、なんか今の恥ずかしい…

というか、あの朝に弱いおねえちゃんが朝、寝坊しないで

私より早く起きて、朝ご飯作ってくれてるとか、すごい違和感でしかないな…


「頂きます。」

「頂きます…」


「ズルルッ…あっ美味しい、味噌汁…」


「よかった、口に合ったみたいで

 朝はやっぱり、味噌汁だよな。」


「なんかほっとする味…お母さんが作ってくれたみたい…」


「そっか、愛田家の味を100%再現できる自信はないけど

 お母さんの料理で食べたいものがあったら言ってくれ、作ってあげるから。」


「晴都さん…」


「あっそうだ、今日から琴梨ちゃんも学校だよね、着替えとか用意して来ようか?」


「そっそこまで子供じゃないから!

 自分の着替えぐらい、自分で用意出来るって!」


「そうか?」


「それに下着とか…見られるの恥ずかしい…」


「そっそっか、それは気づかなくてごめん!」


「うっうん…それは私の問題で…」


「でもさっき洗濯物干してる時に

 見ちゃったんだけどな、あはは、あはは。」


「そっそれを先に言えー!」


怒って、一発、頭を叩いた!


「痛たぁ、言うの遅れただけじゃんか、叩くことないだろー」


「ふん、知らない!」


「思春期だなぁ。」


朝ご飯を食べ終わった二人は洗面台で交代で歯を磨いて

それぞれの部屋に戻って、着替えや準備を始めた。


「これで着替えは完了と…

 後は今日の授業に必要な教科書を調べて…

 そういえば、昨日、晴都さん…」


《ブラとかつけたことがなかったから

 つけ方わからなくてさ》


「とか言ってたな…まさか今日は流石に着けるよね…?」


琴梨は心配になって、部屋に様子を見に行った。


「晴都さん?」


「ほえっ?」


すでに制服に着替えていた。


「今日はちゃんとブラつけてる?」


「ああ、ブラは着方を調べて、出来るようになったぞ。」


「よかった…そういえば、昨日、思ったけど

 髪型はポニーテールにしなくていいの?」


「あっそっか、すっかり忘れてた!

 雛が愛用してた髪を結んでるリボン…リボン…あった!

 あれっ…?結構、難しいなぁ…?」


「仕方ないな、今日は私がやってあげるよ?」


「ありがとう。」


「お礼とか、べつにいいから…

ご飯作ってくれたり、家事してくれたりしてるし…

 これぐらいはさせてよ…」


「琴梨ちゃん…」


「今度からは自分でやってよね…?」


「うん、やれるように練習する。」


「はい、出来たよ…?」


「おぉ、そうだった、そうだった!

 漫画で雛はこの髪型してたな!」


「あっ時計見て、もう7時50分!

 そろそろ家を出なくちゃ!」


「本当だ!」


二人は急いで支度をすませて、玄関を出た!


「鍵も閉めたし、じゃあ、行こうか。」


「おねえちゃんと一緒に登校とか、本当ならレアなことだな…」


「あはは、そうか、本来の雛って朝に弱くて、遅刻ばっかだもんな。」


「なんかちょっと嬉しいな…」


「んっ?何か言った?」


「なっ何でもない。」


「あっ!待ってくれよ!」


琴梨は照れた顔を隠すように、少し早く歩いた。

そしてその様子を天界からあの方が見ていた…


『フッフッフ、妹ちゃんったら可愛いわぁ。

 やっぱりあの子にも試練を与えてもよかったかしら?

 まぁでもいいわ、いよいよ始まるんだから

 わたくしのお楽しみ〜、べつの世界から女しかいない世界に迷い込んだ〜

 恋愛経験ゼロの少女による〜!女の子攻略、ハーレム物語〜!』


そんなやばいテンションの女神を遠くの木に隠れて見ていた者がいた…


『くっくっく、あいつはボクの計画には気づいていないようだ…

 青依晴都…果たして女に転生した君はどんな行動を見せてくれるんだ?』

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