⑧オレ、百合漫画の主人公の妹と少し心が近づいたよ。
「よかった…この世界にも私達の家はちゃんとあるみたい…」
「だから言っただろ?漫画で家はあったって」
「確かにそうだけど…でもまだ、私達が漫画の世界の住人っていう
子供の空想みたいなのは信じてるわけじゃないから、そのつもりで…」
「わかってる、焦らずに信じてくれるのを待つよ。」
「そっそう…勝手にすれば…」
「まぁでも琴梨ちゃんの今日1の安心した顔が見れて、オレもほっとしたな。」
ドキッ。
「そっそういうのいいから…家に入るよ!」
「あっうん?」
琴梨は照れたのを誤魔化すように鍵を使って、家に入った。
「はぁ〜よかった〜!
家の中は特に変わった様子はないように見える〜!」
「あのさ、琴梨ちゃん?
一つ大事なことを伝えるのを忘れてたんだけど…
実はな…この世界には…」
「お母さん〜!お父さん〜!ただいま〜!
二人ともいるんでしょう〜!帰ってきたよ〜!
あれっ、おかしいな…どこにも居ない?
もしかして二人で出掛けてるのかな…?」
「なぁ聞いてくれ!琴梨ちゃん!」
「聞きたくない!」
「えっ…?」
「言わなくても、もうわかってるよ…
この世界にはお母さんもお父さんも居ないんでしょ…?」
「どっどうして…わかったんだ…?」
「玄関も靴箱にも二人の靴がないもん…あるのは私達の靴だけ…
それにさっき見に行ったら、二人が使ってるはずの部屋すら空だった…」
「そっか…」
「ねぇ…おね…いや、今は晴都さんって言わせて…?
晴都さんがそれを知っているのは
ここも漫画の世界で、読んで知ってるからだよね…?」
「その通りだよ…本来は君のお姉さん、愛田雛だけが
この世界に迷い込むはずだったんだ…
だから俺が読んだ漫画では君すら、この世界には居ないことになってた…
でも君は転生したオレと一緒にこの世界に来た…だから…」
「私もこの世界で存在してることになった…」
「だとオレも考えてる…」
「あはは、あはは。」
「琴梨ちゃん…?」
「私、本当に漫画の住人で、それでいて、べつの世界に来てたんだね、夢じゃなかったんだ
ようやくこれで晴都さんが言ってたこと、すべて納得できそうだよ。」
「本当…?」
「でも…」
「でも…?」
「こんな納得の仕方、いやだなぁ…」
振り向いた琴梨ちゃんは大粒の涙を流していた。
「琴梨ちゃん…」
「あれっ…そんなつもりないのに…涙が止まらない…」
こんな時…姉ならどうしたらいい…
今は転生して姿だけでも、オレはこの子の姉なんだ…
泣いてる妹を慰めるには…そうか、これだ…
「えっ…?」
雛(晴都)は泣いてる琴梨をそっと胸に抱き寄せた。
「転生したとはいえ、今、オレは琴梨ちゃんのおねえさんだから
遠慮せずにオレの胸で泣いていいんだよ…?」
「訳わかんない…でもありがとう…うっうっ…」
琴梨はひたすら胸に顔を埋めて泣き続けた…
そんな妹を慰める姉のように、泣き止むまで
雛(晴都)は微笑みながら、髪を撫でてあげた。
「もうこれくらいでいい…」
「いっぱい泣いたな。」
「うっうるさい…」
「ふっふ。」
「それよりもさ…」
「んっ?何だ?」
「感触でわかったけど…どうしてブラしてないの…?」
「えっ!あっ朝、着替える時に
ブラとかつけたことがなかったから
つけ方わからなくてさ、あはは、あはは。」
「本当にー?」
「なっなんだよ、その疑いの目は…?」
「ということは、おねえちゃんの裸を見たわけだ?」
「そっその言い方はやめろ!鼻血出るだろ!」
「変態。」
「そっそれは仕方ないだろ?今は君のおねえさん、雛の体なんだから?」
「まぁ、仕方ない、今回は許しておいてやろう。」
「ほえっ?あっうん、ありがとう…?」
「その代わり、私の裸を覗こうとか、許可なく触ろうとかしたら
容赦なく、ボコボコにするから覚悟してね?」
「そっそんなー?
姉のスキンシップだとしてもか?」
「晴都さん?」
「はっはい、すみません…肝に銘じます…」
(姉妹百合も好きな俺からしたら、辛いじゃんか〜)
「うん、よろしい。」
転生おねえちゃんの雛(晴都)とその妹の琴梨のドキドキ姉妹生活が始まった。
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