⑥オレ、百合漫画の主人公と同じで甘党だよ。

「はっ!?私達が漫画の世界の登場人物!?」


「しっ〜!琴梨ちゃん声が大きいよ!

 ほかのお客さんに聞こえちゃうから!」


「あっごめん…」


百合漫画の舞台になるこの世界に来た

オレと雛の妹の琴梨ちゃんは

冷静に話をするために近くの喫茶店に入った。


「まぁ、いきなりこんなこと言われても

 驚くのも無理ないよな、でもわかってくれた?」


「ブクブクッ。やっぱりおねえちゃん…

この世界に来る途中に頭打ったんじゃ…?」


「だから、違うってば!どうしたら信じてくれんのかな…」


「ハァ…頭がゴチャゴチャになりそうだから

 そこは今は考えるのは置いとくね…

 ただ私でも理解できるのは…この世界は私のいた世界とは違うってこと…」


「そこだけは理解してくれたみたいで助かるよ。」


「というか、ここってどこなわけ…?かなり人もいるし…

あの風景とかなんかテレビで見たことはあるような気がするけど…

 絶対に私達の暮らしてる家の近くじゃないよね…?」


「ああ、ここは渋○区だよ?」


「渋○区!?家がある百合恋町からすごく離れてるよ!?

 家の近くの路地裏に入っただけだよね…?」


「それはほら、べつの世界に来たんだから、多少の誤差はあるんじゃない?」


「多少の誤差って…」


「安心してくれ、オレが、いや、おねえちゃんがついてるんだから。」


「あのね、全然、説得力ないから

 誰のせいで私がこんな目に合ってるのか、わかってる?」


「あはは、手厳しいな…」


「こんな事態でお気楽すぎるでしょ…」


「お待たせしました〜季節限定のメガ盛り苺タルトお2つですね〜

 ごゆっくりお召し上がりください〜」


「すごい苺の量…これ、いつの間に注文してたの…?」


「琴梨ちゃん、店に入ってすぐ、お手洗い行ったじゃない?

 その時に飲み物と一緒に頼んでおいたんだよ。」


「そっそうなんだ…?」


「まぁ、甘いものでも食べて、リラックスしようよ?」


「そっそうだね…パクッ。」


「美味しい?」


「美味しい〜!パクッ。パクッ。

 何これ〜!最高〜!」


「よかったぁ、主人公の雛が苺大好きだって、漫画で知ってたし

 もしかしたら、妹の琴梨ちゃんもそうなのかなって思ってさ、注文したんだ。」


「中々、気が利くじゃん…」


「美味しいって食べてる琴梨ちゃん、見てて可愛いよ。」

 

「なっ何を言ってんの…?子供みたいだって馬鹿にしてんの…?」


「そうじゃないって、本当に可愛いって思っただけ。」


「おねぇちゃんなら絶対にそんな恥ずいこと言ってこないから…

 晴都…さん…だったけ…?本当におねぇちゃんに転生してるのかなって思えてきた…」


「ありがとう、少しは信じてくれるようになったのかな?」


「ちょちょっとだけね…まだ信じてない方が上だから…」


「それでも嬉しい。」


「えっと…晴都…さん…?」


「あはは、この姿にその名前だと呼びづらいよな

 おねぇちゃんのままでいいよ?」


「じゃあ…おねぇちゃん…?」


「うん、何かな?」


「おねぇちゃんはタルト食べないの?」


「食べるよ。パクッ。んっ〜!うめぇ〜!」


「甘いの平気なんだ?」


「平気だよ、というかオレも、もともと甘党だから。

 パクッ。パクッ。んっ〜!最高〜!」


「この感じだけ見るといつものおねぇちゃんにしか見ないな。」

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