第5話 魔法少女じゃないけれど

 オジイ達から授かった『五珠の力』が影響しているのか舞美の怪我は、医師が驚くほど驚異的なスピードで完治していった。入院して一週間目には、歩く事が出来るほどに回復していた。

 しかし、いつ何時『五珠の力』を奪いに悪霊共が襲ってくるか分からない。そこでオジイ達は病室がある五階に結界を張り、怪我を負っている舞美を悪しき者達から隠していた。その間にオジイ達が自分達の名前と一人一人が持つ力の属性を舞美に伝授した。オジイ達が持つ『五珠の力』は、色によって属性の違いがあった。


眉毛が太い、東城虎五郎は赤珠(せきじゅ)、灼熱の焔の力。


白髪髭の、東城孫四郎は緑珠(ろくじゅ)、自然と大地の力。


卵のように頭が艷やかなのは、東城源三郎は青珠(せいじゅ)、真実と浄化の力。


目が細いおジイは、東城又二郎は黄珠(おうじゅ)、知識と剛力の力。


あまり喋らないオジイ、東城彦一郎は白珠(はくじゅ)、治癒の力。


「舞美、悪霊と対峙するとき生身の体では歯が立たぬ。そこでその腕輪を使いお主の体に鎧を纏うのじゃ。今からその作法をお主に伝授する」


「まず、合掌し深く鼻から息を吸って精神統一をする。これを我らは『神の呼吸』と呼んでいる」


「『神の呼吸』、言うは易しだが精神統一するという事は、容易いことではない。しかしまず、これが出来なければ話にならん。まずは神の呼吸からの精神統一じゃ」


「わかった! 合掌して鼻から息を吸って吐く! そして精神統一するのね!」

 舞美は、そう言いながら合掌し、目をつむり鼻からゆっくりと息を吸い神(しん)の呼吸を始めた。一見するとなにも変わりがない舞美の姿、しかし舞美の身体から発する氣が、徐々に高まっているのがオジイ達には見えていた。神守の血筋、「清い力」を持つ者とはまさにこの事! と五人は驚きお互いの顔を見合わせた。

そして『これは好機!』と虎五郎が舞美の心に語りかけた

『舞美、ゆっくり手を広げ拍を打ち『纏(てん)』と称えるのじゃ』

舞美はゆっくり頷き、両腕を広げ胸の前で拍を討った。

『パンッ』

拍の音が室内に響き渡り続けて舞美が叫ぶ!


「纏!」


 すると右手の腕輪が高速回転を始め眩く光り輝き、その光が舞美を包み込みむ。しばらくすると……いや、時にすると一瞬の事だ、その光の中から白く輝く白衣と緋袴を纏った舞美が現れた。それは、神に仕える巫女の装いであった。そしてその腰には鞘に収められた銅剣があった。


「きゃー! なにこれ? はずいけどカッコイー! しかも浮いてる!」


オジイ達が巫女装束を纏った舞美の姿を見て口をそろえて呟いた。


(素晴らしい……)


 続けて源三郎が語る。

「召喚した我らの力は強大で普通の人の体では、耐えられん。そこでそれに耐えうる衣、言わば鎧をお主は纏ったのじゃ。その衣はあらゆる邪気を跳ね返し、きっとお主を守ってくれるであろう」

 舞美は変身した自分の姿に感激し、子どもの頃に友達と遊んだアニメの魔法使いごっこの事を思い出し心が躍った! その衣は、触ってみると透き通るほど薄く、そして絹のような肌触りで衣全体からお香のような香りがした。


「舞美、今お主が纏っている純白の衣は、儂らの「五珠の力」が交わっていないもの。その纏(まとい)に五人の属性が加わってこそ真の力を得ることが出来る」


「つまり我らの力をその衣と同時にその身に纏うのじゃ」


「次は、我らの力の使い方を伝授する。まみえる相手によってわれら五人の力を使い分けることになる。」


「五人が持つ『力』はそれぞれ違う属性を持っておる。対峙する悪霊の気を見極め纏う力の属性を瞬時に判断し纏うのじゃ、それにより纏う衣も変われば使う得物も変化する」


「ついでに言っておくが儂らの力のせいでお主は、ちょっと面倒くさい事になっとるから、驚かれぬようにな」


 (めんどくさいって何?) と思いつつも変身できて魔物? と戦うなんて、まるでアニメの主人公みたい! とさらに心が躍った。

「では、一度やってみるぞ。舞美、青珠の儂を纏って見せよ」

 舞美は言われた通り目を閉じ深く深呼吸をして精神統一を始める。そして拍を打ち

『青纏!(せいてん)』と唱えた。すると巫女装束が光と共に鮮やかな青い花柄の衣に一瞬で変化し、腰の銅剣は黒光りする弓矢と変化した。


「よいか舞美、まずは我らの力を理解し使いこなせるようにならんといかん、どのような悪霊と対峙するかもわからんからな。退院の日まで厳しく指導するからな」

 けが人の舞美に容赦ない激が飛んだ。

 その日から退院の日まで五人のオジイ達から昼夜を問わず指導を受けた。

 腰の銅剣は、纏う者の意志で様々な形態に変えられる。鞭や刀、槍や弓、対峙する悪霊によって変化させる。その為、瞬時の判断力が要求された。こんな格好じゃ目立ってしまうと言うと纏った姿は、普通の人間には見えないらしい。

よかった。

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