第2話 私は舞美! クリィミ―舞美!(なんちゃって)

 ここ某県榊市は、県の南側にあり人口は県で2番目に多く、都市部からは結構離れてはいるが近年、インフラ整備が進み福祉、医療なども大幅に見直され口コミで『日本で最も住みやすい街』と全国区で取り程だ。榊市は、緑豊かな街でもあり四方を高い山々に囲まれそのいくつかの山には、神話や伝説がある。

 

 そして今、この街で一番設備が整った榊地域医療センターに一人の女子高校生が瀕死の状態で運ばれてきた。バイクにはねられ全身を強く打ち意識もほとんどない。

 

 「私は東城舞美、地元の県立高校に通う普通の高校1年生。みんなには、マミって呼ばれてる。舞美って名前はお母さんが子どもの頃に観ていた大好きなアニメキャラクターの名前からつけたんだって。その影響なのか私もアニメが大好きな女の子。高校生になっても毎週「プリキュア」は欠かさず見てる(ふたりはプリキュアが一番面好き)他にも「セーラームーン」も大好きだし「カードキャプターさくら」とか昔のアニメをお母さんとアニメ専門TVで観ている。アニメのタイトルで分かるけど私は女の子が格好良く変身したり魔法を使って悪い奴をやっつける美少女物が大好き! そういえば子供の頃、友達と変身ごっこをしてよく遊んでいたなぁ。同じ変身でも仮面なんとかは怖くて見てなかった。男の子とどっちが強いか言い合ってよくケンカになっていた。

 部活は、バスケットボール部。私は小学校三年生からバスケットボールを続けてる。だけど自分で言うのもなんだけど自分自身、結構運動オンチなのでなかなか上手にならない。だから始めた頃からずっと補欠メンバーだ。それでも私はバスケが大好きだからずっと続けている。そういえば……私……どうしたのかなぁ……確かぁ……バイクとぶつかって……ここは、どこ?」

 

 舞美は、そう思いながらゆっくり目を開けた。そして自分の体がふわふわと宙に浮いていることに気が付いた。すると目の前に白い天井が迫りきたので慌てて体をひねり体を下に向けた。下を向いた先には、沢山の機械に囲まれ頭を包帯でグルグル巻きにされベッドに寝ている自分とその横で泣き崩れる母親の姿があった。

「ごめんなさいマミ! 私が頼んだばっかりにぃ!」

 母親は、ベッド横に跪き舞美の姿に向かい叫びながら些細な感情から舞美をこんな目に合わせてしまったという自責心に崩れ落ちてしまっていた。

「そうだ……私、お母さんにお使いを頼まれて……その途中に……」

舞美は、母親の隣にゆっくりと降り立ち、母の両肩に手を添え弱々しく震える背中に頬をあてつぶやいた

「悪くない……お母さんは、悪くないよ……。そんなに自分を責めないで……お母さん…………」

 自分は死んでしまう、家族を悲しませてしまう。でも、もうどうすることもできない。声を出して泣いても語りかけても返事は帰ってこないし聞こえない。

「お母さん泣かないで……。みんな……泣かないで……」お父さんも弟も泣いている。

 「じゃあ……私……いくね……。さようなら……お母さん……お父さん……恭ちゃん……」

 舞美は母親と父、弟に別れをつげゆっくりと立ち上がり顔を上げ指で涙をぬぐった……。

 そしてふとあることに気が付いた。

「んっ?……私……行くって……どこに行けばいいの?」

 アニメや映画でよくあるシチュエーションならば空から天使が降りてくるとか空から光の階段が降りてくるとかあるはずだが……降りてこないし何も起きない。舞美は、急に怖くなり

 「もしかしたら私、成仏できないの⁉ このままお化けになるの⁉ それとも…ひょとしたら、黒くて大きなカマを持った奴が来る⁉ イヤァァァァ‼」

 ここから逃げなきゃと窓を開けようとするが何故か部屋から出られない。どうなってるのと途方に暮れていると何処からともなく声が聞こえてきた。

(慌てるな舞美、お前はまだ死んでおらぬだろ……)

 何処からともなく聞こえてくる野太い声に舞美が問いかける。

「誰! 誰なの⁉」

 すると吐息のような微風とともに微かにあまい御香のような香りが辺りに漂ってきた。そして四方の壁と天井に五つの光が浮かび上がりその光の中からぴかぴか光る何かがにゅ〜っと筍のように生えてきた。

「ギャァァァァァァァァッ‼」

 舞美は、口から心臓が飛び出るぐらいの悲鳴を上げ恐怖のあまり顔が、楳〇かず〇画風になり頭を抱えて蹲ってしまった。

「きゃぁぁぁ! 悪いことしてごめんなさい! 弟のおやつを黙って食べました、ごめんなさい! お父さんのパンツを箸でつまんでます、ごめんなさい! それとそれと……ああぁぁ地獄だけは勘弁してください! お願いしますぅ!」

 恐くて顔を上げられず震えていると、肩に手を添えられ優しい口調で誰かが語りかけてきた。

「舞美、だからお前はまだ死んでおらんて。顔をあげよ」

 舞美は恐る恐るゆっくりと顔を上げるとそこには、頭がつるぴかで仙人のような白い着物を纏ったお爺さんが立っていた。まわりをよく見ると顔は違うが禿げたお爺さんが、一……二……三……四……五、五人立っていた。皆同じような着物を纏っていたが手首や首にそれぞれ色や形が違う首飾りや腕輪をはめていた。舞美はゆっくりと立ち上がり、何が起こっているか分からず引きつった顔をしていると、眉毛が太い老人が近づき語りかけてきた。

 「マミ、落ち着いて聞かれよ」とはげたオジイが言った、

 次のはげたオジイが、

「ようやくお主と話しができるようになった」

 次のはげたオジイが

「我ら五人はお前達の祖先、遠い昔のじいちゃんだ」

 また次のはげたオジイが

「悲しんでいる……母親には気の毒だが……今回の事故は……我らが仕組んだもの」

 次のオジイは

「だからお前は、死なんと言っとろうが!」

と怒り気味に怒鳴った。

 オジイ達は、秩序もなく次々と語りかけてくる始末。終いにはもう目が回り徐々に気分が悪くなってきた。その内に舞美は次第にイライラし始め、ついには大声で怒鳴った。

「ハゲた爺が揃って一度に話かけないでぇ! 誰の話を聞けばいいのっ? 誰か一人が話をしてぇぇ!」

 五人は、顔を見合わせ『それもそうだ』という事で話し合った結果、代表は、太い眉毛が特徴のオジイが話す事になった。名前は東城虎五郎。この爺は、首に赤いガラスのような玉が連なった数珠を掛けていた。落ち着いた舞美に虎五郎が静かに語り始めた。

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