アリとキリギリス
むかしアリ助という働きアリがいた。夏にアリ助たちが草の実を集め、みんなで力をあわせて倒した虫を切り分けて巣に運ぶなどして懸命に働いているあいだ、キリギリスたちは毎日、というか一日中レイブ・パーティーを開いて音楽とダンスに酔いしれ、腹が減るとそのへんに生えている葛の葉や落ちている幼虫の死骸などを食べ、夜になると草むらで乱交をして地中に大量の卵を産みつけていった。アリ助は働きながら、いつもそれを横目で眺めていた。
秋になるとキリギリスは寒さであっけなく死んでしまい、アリ助たちの食べ物になった。
年が明けた翌年の春、地中から大量のキリギリスがはい出てきた。彼らは食欲旺盛で、そこら中の蝶の幼虫やほかのバッタたちを食いつくし、それがなくなると共食いを始めた。そうして生き残って大人になったキリギリスたちは、夏がくるとまた一日中レイブ・パーティーに明け暮れ、乱交して地中に卵を産みつけ、秋になるとみな寒さであっけなく死んでしまった。
アリたちはキリギリスたちの死骸を食べていればほとんど働く必要もなかったが、アリ助はなんとなく生きているのがバカバカしくなって、何も食べずに死んでしまった。
小話集 荒川 長石 @tmv
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