42. 告白
「…………ある日突然“悪魔”になっちゃった妹さんに、ホンモノの厄祓いをする神社のクラスメイトさん…………ですか」
改めて、結衣里と羽畑さんとも合流した上でフードコートに戻り、瑞希に事情を説明した司。
案の定と言うべきか、当の瑞希の頭上には終始
「……まあ、説明されたってそう簡単に信じられないのは分かる」
「あ、あはは…………でも、実際にこの目で見ちゃってるワケですし。なんていうか、すごい世界ですね…………」
若干遠い目をしながら、瑞希は正面に座る少女たちを見ていた。
「あの……悪魔といっても、わたしも何が何だかよく分かってないんですけど……」
「うう、人前でやるのは失敗だったかなぁ」
結衣里も羽畑さんも、見た目はごく普通の女の子だ。
そんな女の子たちが、よくわからない小鬼を相手に、邪気だの何だのとよくわからないことを言い合っていたのだから、瑞希が困惑するのも無理はない。
瑞希はあくまで、今日出会ったばかりの一般人なのだ。
いきなり司たちの事情を聞かされたところで、全て理解してもらえるとは思っていない。
「本当は俺たちだって何も知らないただの一般人のはずなのに。一体どうしてこんなことに……」
「そ、その、ごめんねお兄ちゃん……」
「あ、いや結衣里は悪くないよ。うん。妹のために全力で謎を解明するのは兄の役目だ」
「出たよ司くんのシスコンモード」
「あはは……」
結衣里が申し訳なさそうな顔をしたのを見て態度を180°切り替える司に、羽畑さんも瑞希も苦笑い。
仕方のないヤツだと呆れた表情にさえ見える。
「結局あの子たちにはロクに説明もできないままだったけど」
「混乱して、状況もよく分かってなかったみたいですし。停電に続いて乱闘騒ぎに巻き込まれたサイアクとか、なんかそんなことを言ってました」
「まあ、良い具合に自己完結してくれたのなら良しとするか」
ちなみにあの小鬼に取り憑かれていた女子は我に返り、瑞希や司に一言謝ると、周りの子たちと一緒にそそくさと立ち去ってしまっていた。
仲が良いとまではいかないまでも、元々険悪な仲ではなかったという瑞希の話は本当なのだろう。
あるいは、あの小鬼が何かしらの影響を与えていたのか。
今後学校で瑞希との間にトラブルが起こらないか心配だが……
「何かあったら遠慮なく頼ってくれよ? RAINにでもSOS送ってくれればいつでも駆けつけるから。もう
「! ……えっと、はい。たぶん大丈夫だと思いますけど……」
“友達”という言葉に、嬉しそうに目を細める瑞希。
「あ~…………その、お兄ちゃんの『駆けつける』は、気を付けないとたぶんホンキで言葉通り来ちゃうから……」
「え」
「
「結衣里が
「…………気を付けます」
結衣里の話を聞いて、瑞希の目がヤバい奴を見る目に変わった。解せぬ。
とはいえあの子たちについてもあまり心配は要らなさそうだ。
不安は残るものの、とりあえずはひと段落と言って良いだろう。
停電も収まり、多少の混乱はあったもののショッピングモールは普段の様子を取り戻していた。
「それで、司くん? 私たちには紹介してもらえないの??」
「ああ〜…………うん」
それはさておき、とばかりにずずいと妙な圧力をかけてくる羽畑さんに、司は露骨に目を逸らした。
「えっと……あの、司先輩……?」
「ああいや、そうだね」
言外に責められている立場的に気は進まないが、このままだと瑞希も気まずいだろう。
はぁ、とため息をひとつ吐くと、司は観念して話し始めた。
「この子は
「結衣里ちゃんのことを
「それは悪かったってば……」
「あ、あの! 先輩はボクのことを助けてくれて……! それで、ボク友達いないから…………一度、してみたかったんです。“友達”と一緒に遊ぶの」
明らかに司を責める羽畑さんの威圧感に、慌てて司を擁護しようとしてくれる瑞希。
「だからって、結衣里ちゃんを
「いやまあ、うん……それはなんというか、申し訳ないです、ハイ」
「あ、あの
何やら義憤に燃えた様子の羽畑さんに司はすっかりタジタジで、結衣里がフォローに回ってくれる始末。
神社での一件以来、何かと結衣里のことを気にかけてくれるようになった彼女としては、結衣里をおざなりにした司のことを許せないのだろう。
「ううん、結衣里ちゃん。ここはちゃんと怒らないとっ! 練習とはいえ結衣里ちゃんとのデートだったのに、途中で投げ出した挙句他の女の子に
きっぱりと言い切る羽畑さん。
こういう所は生真面目な委員長らしく、決然としている。
が……
「女の子、ねえ…………」
「…………あぅ」
司は苦笑いしながら目を逸らし、瑞希に至っては赤面して俯いている。
「…………あ、あれっ……?」
微妙な空気に肩透かしを食らったように首を傾げる羽畑さん。
「あの…………非常に言いづらいんだけど、たぶん大きな誤解があるよ。……瑞希?」
どう言い出していいものか分からず、司は瑞希に視線を送る。
瑞希は恥ずかしそうにしばらく目を左右に迷わせたが、やがておずおずと小さく頷く。
「えっと、その……………………あの、こんなカッコしてますけど…………ボク、いちおう
消えそうになりながら小さくそう告白した美少女(?)は、ぷしゅぅ……と音を立てて沸騰し、黙り込んでしまった。
「え…………えええええええぇっ!?」
至極真っ当な驚きの声が、ショッピングモール中に響き渡った。
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