第49話

 俺達の前に現れたのは光り輝く銀色の装備に身を包んだ"見慣れた白髪の女騎士"。そう――ハバネラである。


「えっ!引きニート!? 貴方ハバネラさんと顔見知りなの!?」


「いや。顔見知りと言うよりかは…"旧友"だな…」


「"殿堂入りプレイヤー"のハバネラさんと旧友って…」


 俺とカイルの会話の途中にハバネラが聖剣を突き立てては、ため息混じりに溢した。


「はぁ〜。NEETよ…私は浮ついた心はあまり感心しないぞ? お前には"闇ドルちゃん"がいるだろうに…」


「…え?」


 ハバネラの言葉にカイルが少しだが動揺したような気がした。


 この時の俺は、何故彼女が動揺したのかを深く考える事はしなかった。


「ちょっと待てハバネラ! 別に俺と彼女は別にそんな間柄じゃない!」


「いいや!女の私には分かる!彼女闇ドルちゃんは間違いなくNEETに惚れてる!」


「えぇ!?」


 更に、カイルが動揺し出す。


「いきなり何を言い出すのかと思えば…そんな事あるわけないだろ…」


「はぁ〜。(良かった…)」


 俺がそう言うと、カイルが安心したのか。何故か隣で「ホッ」と胸を撫で下ろしている。


「おい!さっきから、リアクションが少し煩いぞ?"尻軽女"!」


 と…。カイルが俺の首を絞めようとしてくる。


 その光景を見ていたハバネラは何かに気付いたような素振りをすると、また溜め息を1つ溢した。


「カイルよ?もうその辺にしておきな。NEETも可愛い女の子をからかうなよ?また嫌われるぞ?さて!ではそろそろ始めようか!」


「カイル…なんでもいい。とにかく防御系の詠唱スキルで構えておけ。これは、正直厳しい戦いになるぞ…覚悟はいいか?」


「誰に言ってるのよ引きニート?これでも私はザルーザに続いて仮にもNo.2の実力者なのよ。私もいつまでも貴方に助けられるのはごめんだわ。私だってちゃんと出来るって所を貴方にちゃんと見せてあげるんだから!」


「そうかい。まぁ。無理はすんなよ」


「ふふっ…。上等よ!」


「フフフ…NEETが相手なら私も久しぶりに思う存分全力を出せるってものだ! では…いくぞっ! ハァアァアァァァァァアァアァァアァァァア〜!! 来い! 闇の全知全能の神龍・ゼウスディボロスΖゼータ!! さぁ! これが私の全力だ! 2人共全力で来い!」


「ああ。望むところだハバネラ! 発動! 真・世界・GD !! そして!現れろ! 神龍・ラグナロクΩオーガ!!」


「(す、凄い…流石は引きニートとハバネラさんだわ…。でも!だからって私も負けたくない!)さぁ!来なさい! 爆水龍・リヴァイアサンGグレート!!……」


 …………


 ………


 ……


 …


「…流石はNEETだな。悔しいが…私の負けだ。NEET、カイル。優勝おめでとう! 殿堂入りプレイヤーとして私から、改めて言わせてもらうよ! おめでとう!」


「や!やったぁあぁあ〜〜!! やったわね!引きニート!!」


「あぁ。そうだな…」


 嬉しさのあまり勢いで俺にハグしてくるカイルとは裏腹に、俺はハバネラの一言が耳から離れないでいた。


 …(女の私には分かる!彼女は間違いなくNEETに惚れてるよ!)か…。闇ドル今頃何してるんだろうな…。やっぱり俺、嫌われたのかな…。


 やがて、ファンファーレが鳴り響くと共に、ハバネラは静かにフェードアウトして行った。


「闇ドル…」


 優勝が確定したにも関わらず浮かない表情をしていた俺の事を気遣ったのか、カイルが話しかけて来る。


「引きニートってば! 優勝したんだからもっと喜びなさいよ!って…貴方?もしかして泣いてるの?」


「!?」


 闇ドルの事を思うあまり…。気がつくと、俺の両目からは温かい涙が頬をつたっていた。


「引きニート…?」


「…なんでもない!あとそれと、今回の1000万の分配だけど。アンタ?両親はちゃんといる?」


「え? あ、うん。いるけど…」


「分かった。なら。俺は150でいいから、後の残りは全部アンタにあげるよ。それで親孝行でもしてあげるといい今日はありがとう。楽しかったよ。それじゃ…」


「え!?あ!待って!」


 彼女の呼び掛けに答える事なく。俺はログアウトボタンを押した…。


 to be continued…。


 

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