第44話
『市街地』にて。
俺達は市街地に転送されると…真っ先にカイルが声を上げた。
「流石はザルーザだわ。さぁ! 引きニート! 相手はあのザルーザよ! 気を引き締めて行くわよ!」
「だから、引きニートはやめろこの"尻軽女"が! 大体、ザルーザがどんなプレイヤーなのかも俺は知らないんだが?」
俺がそう発言すると、赤裸々な表情を浮かべたカイルが俺の首根っこを掴んでくる。
「ちょっ! 誰が"尻軽女"ですって!? 尻軽女って言い換えたら"ビッチ"ってことじゃないの!! 私はビッチなんかじゃないわよ! この引きニート!!」
「だぁあ!! また言いやがったなこのアマ!? や、やめろ…苦し…だ、誰か助けて…ゴホゴホッ!」
その時だった。
「ふふふ…。良かった。ちゃんとチームワークが取れているみたいで僕達も安心したよ」
「「何処がだ(よ)!?」」
俺達は声の聞こえて来た方へ、振り返り様にほぼ同時に反応した。
そこには2人の男が立っており、1人は黒髪単発で細身体型で武士面をしていた(時の人)と、もう1人の男(ザルーザ)は一瞬何処かの王子様か!? と思わせるくらいにモデルの様なスタイルに綺麗な金髪で整った顔達もしており、俺にはない"強者のオーラ"というものを漂わせていた。これを例えるならば、"クラスの中心人物"とでも言うのだろうか。
カイルが掴んでいた俺の首根っこから手を離すと同時に今度は取り繕うような態度を見せた。
「…ザルーザ? こ、これは違うから! 別にそんなんじゃないから!! この引きニートが!」
ザルーザが一度俺の方を見ては、もう一度カイルの方へと視線を戻す。
しかし、俺は見逃さなかった。この男が俺の方を見た際に一瞬ではあったが、眉間にシワを寄せる仕草をしたという事を。
「やぁ。カイル。元気そうで良かった。一応お隣さんにも自己紹介をしておこうかな。僕は"ザルーザ"…えっと、君の名前は?」
来た来た! 陰キャの俺でもこういうキラキラした陽キャの人達と対等に会話を交わせる事ができる最高のイベント! これぞ自己紹介!!
そして、俺が咳払いをしては俺史上、最高にカッコ良い自己紹介をしようとしたのだが…。
「俺か。俺の名前は…」
「紹介するわ! コイツは"ただの引きニート"よ!」
は? 今、このアマなんつった?
「え? ひ、引き…なんだって?」
こんのアマぁ…俺の1番大事な台詞を…よくも…
困惑するザルーザを横目に俺は"尻軽女"へ軽い空手チョップを入れた。
「痛いっ! いきなり何すんのよ!? 引きニート!!」
「"何すんのよ!?" だって!? それはこっちのセリフだ! この尻軽女っ! よくも俺史上最高にかっこいい見せ場を台無しにしてくれたなこのヤロォ! 少しは反省しろ!」
「よくわからないけどっ! あ、痛い痛いっ! ご、ごめんってば! 謝るからっ! ちゃんと謝るから! だから、髪だけは引っ張らないでよ!」
「はんっ! 俺は"男女平等主義"である"フェミニスト"だぞ? その気になれば男だろうが女だろうが、"ブレンバスター"をかませるんだよ!」
「わ、分かったからっ!! 髪だけは離してよぅ〜! 髪とかの神経は繊細だからほぼリアルの痛覚設定になっているんだからっ!」
俺とカイルが夫婦漫才のようなことをやっていると、ザルーザと時の人は少し呆れた様子だった。
to be continued…。
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