第38話

 番組の司会者らしき男性が1人の女性に質問を振っていた。


 

   ーーーーーーーーーーーーーー



 番組内での会話にて……。


「そう言えば、〇〇ちゃんが最近ハマっているゲームがあるんやってね?」


「あっ! そうなんですよ! 最近特にハマってて……」


「へぇ〜! そうなんや! あ、因みにそのゲームの名前ってなんなん?」


「『RNO』って言う名前のゲームなんですが、〇〇さん知っていますか?」


「アホ! RNO言うたら、めちゃくちゃ有名なオンラインゲームやないかい!?」


「えぇ!? 〇〇さん、知ってたんですか!?」


 その女性の一言がきっけで、会場が溢れんばかりの笑い声と歓声に包まれる。


「俺はおっちゃんやからやってないけど! 今、やってる人多いみたいらしいやんな!?」


「ですです! 〇〇さんも絶対やった方がいいですよ!?」


「いや、俺はおっちゃんやからついていけんわ! 見るだけにしとくわ!」


「えぇ〜!? 〇〇さんもやって下さいよぅ〜!」


「おっちゃんは遠慮しときます!!」


「え〜! あ、皆さんもまだやられてないよって方は是非、RNOをよろしくお願いします! マジで面白いんで! 本当に私もやってます!」


「あ、こらぁ〜! 勝手に番宣すんなや! あっ、皆さん、RNOを是非よろしく頼むわ!」


 

   ーーーーーーーーーーーーーーー



 流石、司会者だ……。


 その司会者の発言によって再び会場が「わっ!」と歓声と笑い声につつまり、他コーナーへと移っていった……。


「と! そんなことより! 今映っていた人って!」


 俺はテーブルに置いていた携帯を脊髄反射レベルのスピードで手に取ると……。


「今の映像は前撮りしていたものだろうから……すぅ〜はぁ〜……よし!」


 俺は深呼吸をし、勇気を振り絞り、ある人に電話を掛けてみることにした。


 〜♪〜


 今流行りの歌が着信音として流れてくる。


 と……。


「も、もしもし……」


「あっ! そろそろ掛けて来る頃だと思っておりましたぞ親方様!」


 この聞き覚えのある声と変な口調の主こそ、先程映像に映っていた人物――"浜辺 優奈はまべ ゆうな"その人である…。


 って! 芸能人だったのかよ!!!!?


 俺は自分が芸能人と話せていることに対して、一瞬だけ、口元が緩んでしまったが、直ぐに持ち直してみせた。


「だ、だから……親方様はやめろっての! てか君!芸能人だったのかよ!」


「あ。そう言えば。親方様には教えていなかったでござるなぁ〜。いやぁ〜拙者としたことがかたじけないでござる! オホン! え〜改めまして! 一応、女優とモデルをやっております! 拙者、浜辺優奈と申します!」


 にしても……この変に癖のある喋り方は調子が狂ってしまうな……。


「いや、別に良いけどさ……て言うか、さっき普通にテレビ越しで喋れてたじゃん?キャラ作りとか無理しないでいいからさ? 普通に喋ってみてもいいんだよ?」


「ん? あー! あの放送見てくれたんでござるね!感謝するでござる!」


 そこまで言うと、先程までオートマシンガンの様にひたすら喋り続けていた彼女が、急にしおらしくなると共に俺達の間に沈黙だけが流れて行く。


「そ、その…実は私根っからの"腐女子"なんです!」


 え? あんな華やかな人が?…


 それは、俺の脳内に強烈な落雷が落ちたようなそんな感覚だった……。


「なのでこのような喋り方をしてる時の方が心が楽なのですが…親方様はいやですか?」


「え?いや?」


「親方様…こんな私は嫌ですか?…」


「うっ……」


「親方様…?」


「だぁあぁあ〜!! そのあざと可愛い感じの言い方やめろ! 一瞬、マジできゅんとしてしまっただろうが!!」


「はっはっはっ! これは失礼したのう!」


 くそぅ〜…調子が狂うぜ……。


「兎に角! 俺はそんなの気にしないから、君の好きにしたらいいと思うよ?」


「ふふっ。親方様ならそう言ってくれると信じてましたぞ。あっ、ではこれから収録があるのでまた後日!」


「あ、おい!」


 ……。


 今でも信じられない。この冴えない俺が有名人と連絡のやり取りをしたなんて……。


 余韻に浸りながら自分の髪を掻いていると、「チラッ」と掛け時計が目に入った。


「22時過ぎか……とりあえず、寝るか!」


 俺は食器を片し、明日のPvPに向けて早めに就寝することにした。


 to be continued……。






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