第34話

 俺は昼寝のつもりで寝ていたのだが、気がつくと夕方の17時くらいになっていた。


 20歳を過ぎてくると、中々時間が経つのが早く感じるものである。


「少しRNOの環境でも見ておくか」


 そう思った俺は、リビングに降りて麦茶を一杯一気飲みした後、自室に戻ってRNOにログインすることにした。



       ーーーーーーー



 RNOの世界にて……。


 俺がログインすると街広場の中心部エリアにある噴水で見慣れた人物がまたしても、通りすがりの男性プレイヤー達の目を引いていた。


 間違いない。闇ドルだ……。


「おーい、闇っ!?……」


 俺は両手をメガホンの様にして、彼女を呼ぼうとしたのだが、彼女に対して何か違和感を感じたので、慌てて声を掛けるのを辞め、木陰からしばらく様子を伺うことにした。


「はぁ〜何やってんだろ……私……」


 確かにいつもの明るい彼女の様子ではなかった。


 そればかりか、彼女は深くため息をついており、かなり落ち込み気味の様子と言うことが見て分かった。


 まいったな……。


 非リア充の俺ではこんな時、女子にどんな言葉を掛けてやれば良いのかさっぱり検討がつかない。


 俺がリア充の中のリア充だったらこんな時、どんなアドバイスを掛けてやるんだろうな……なんか、そう考えるだけで虚しくなってくるぜ……。


 そう思った俺が彼女に背を向け、彼女に気付かれないよう、他のエリアへと転移をしようとした……その時だった!


「姉ちゃん? 今暇? 良かったら俺達と楽しいことしない?」

「あ、いえ! 結構です!」

「良いじゃん! 姉ちゃん見たところまだ初心者っぽいからさ? 俺達がこのゲームのやり方を教えてやるよ!」

「い、いいです! ま、間に合ってます! 離して下さい!」


 突然、彼女に惹かれた、見るからにチャラチャラした数人の男達が彼女を取り囲んでは乱暴に手を引こうとしていた。


 ん? 新手のオンラインナンパか?


 やっぱり何処の世界でも、ああ言う人達は存在するもんなんだな……。にしても、周りのプレイヤー達、無慈悲にもほどがあるだろ!


 彼女が嫌がっているのにも関わらず、周りのプレイヤー達は誰1人として男達に楯突こうとはしなかった。


 そればかりか、面倒ごとに巻き込まれまいと、視線を外しながら歩いている始末だ……。


「はぁ……」


 俺は、彼女の方に向き直ると、彼女に向けて声を掛けることにした。


「おーい、闇ドル〜!」


「あ!……NEETさんっ!!」


 彼女は俺の声がしたと同時に、俺の方へと一目散に走り出そうとしたのだが……。


「ん? 姉ちゃん何処行こうとしてるんだよ! 俺達がいるんだからあんなモヤシみたいなやつ放っておこうぜ?」

「あぅっ!!」


 恐らく、リーダー格であろう、ガタイの良いドレッドヘアーで金髪の男が俺の方を見ては彼女の腕を乱暴に引っ張った。


 しかし……そんな光景を見ても周囲のプレイヤー達は、相も変わらず誰も彼女を助けようとはしなかった。


 ……結局は皆んな自分が可愛いんだもんな。


 俺はとりあえず、リーダー格の前にまで歩みを進めることにした。


「NEETさん! NEETさん!」


 その道中、彼女が俺に向かってずっと助けを求めてきた。


「おい! 姉ちゃんよぉ!」

「きゃっ!」


 男は今度は彼女の後ろ髪を乱暴に引っ張ると、自分の元へと引き寄せた。


 これには、流石の俺も我慢が出来なかった。


「な!? 痛っ! んだよっ! おいっ! モヤシ!?」


「に、NEETさん!?」


 俺は、一瞬でそのグループの中心へと移動しては、彼女の髪を掴んでいた男の腕を力強く握りしめては、彼女の髪から男の手を振り離した。


「ごめん闇ドル……少し遅くなった。怖い思いさせてしまったね……」


 俺よりも男の身長の方がだいぶデカかったので、俺は彼女を庇うようにして自分の後に立たせて、無表情を維持したまま男の顔を睨んだ。


「モヤシ……良い度胸じゃねえか! この俺に楯突いたという度胸だけは褒めてやるよ……」


「そりゃどうも……ごめんけどさ、アンタには俺との一対一のバトル……つまり、『俺vsアンタ』のPvPを受けてもらう。もちろん、アンタに拒否権はない。強制PvP申請なら既に運営に出しているからね! 後何分かしたら、俺達とアンタらはバトル専用エリアに強制的に飛ばされる」


「モヤシのくせに手が早ぇじゃねえか」


「あぁ。それと……俺が勝ったら、今後一切、その娘には関わらないと誓ってくれ」


「はんっ! いいだろう……じゃあ、俺が勝ったら?」

「え? え〜と……」


 まいったなぁ〜。負ける要素ないからそこまでは考えてなかった……うーん、男達が納得してくれる条件、条件……と……よし!


「そうだな。もし俺が負けたら……その時は、……」


「に、に、NEETさん!!?」


「よし! 乗ったぜ!! 漢に二言はねぇぞ?」


「あぁ」


 と、俺はとんでもない発言を口にしてしまうのでした……。


「……NEETさん」


 to be continued……。












 


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