第三章 結論から言うと、芸能人とは芸能人であって、芸能人ではないものなのである……。

 第30話



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『ワールドチャット』


〈ザルーザさんが、『アギラマの住む森』を最速クリアしました!〉


 時の人:やっぱり、ザルーザさんは、ぱねぇわwww


 やっぱり加藤:アギラマつったら、高難易度ダンジョンだよな!?


 ジミー笹西:そそ!


 ギリギリの会社員:流石は、ザルーザさん……。俺なんか、高難易度のアギラマは、おろか、中難易度のヘキラマでさえ、クリア出来てないんだが……。


 ジミー笹西:ま、マジかwww


 やっぱり加藤:俺はこの間やっと、ヘキラマをクリアしたわ!!


 時の人:お、おまいら……それで、 PvPに出るつもりだったのか……。


 ジミー笹西:お、俺は一応、ヘキラマも、アギラマも倒してるからな!


 やっぱり加藤:男は度胸!


 ギリギリの会社員:上に同じく! 度胸なり!!


 時の人:お、おう……。



 その、数分後……。



   ーーーーーーーーーーーーーー



 負けない男:ザルーザに挑むのは、この俺達だ!


 キャーリー大佐:うん、幾らザルーザさんが相手でも、元『魔導の道』のメンバーである僕と君のタッグなら!


 負けない男:あぁ。目に物を見せてやるさ。



   ーーーーーーーーーーーーーー



「ザルーザ……何処かで見た名前だな……」


「……どうしたんですか? NEETさん?」


 俺達は、ペティグリーを攻略した後、3回ほどペティグリーを周回してからハバネラの店に向かうことにした。


 理由としては前回、獲得することが出来た『エリオン鉱石』で闇ドルの装備強化をしてもらう為だ。


 俺は、こちらを向いて俺の様子を伺っている彼女に、ザルーザというプレイヤーについて尋ねてみることにした。


「あっ、そういえば闇ドルはさ? ザルーザってプレイヤー知ってる?」

「え!?……もしかしてNEETさんは、知らないのですか?」


 彼女の反応が、そのザルーザというプレイヤーの事を物語るのには、十分過ぎる程の反応だった。


「ザルーザさんは、歴代の猛者達が打ち上げてきた、これまでのレコード記録を全て1人で塗り替えて行っていることから、ついた異名が『新世代の皇帝』……しかも! その実力は、我々一般のプレイヤーからだけでは無く、RNO運営側からもお墨付きらしく、間違いなく! 最強格プレイヤーと言っても過言ではないとのことらしいです!」


「なるほどね。『新世代の皇帝』か……」


 え!? 何、そのめちゃくちゃ格好いい通り名みたいなもの!? 俺がランキングに入っていた時、そんな風に呼ばれたことなんて一度もなかったんだけどぉ!?


 俺は過去の事を思い出しては、軽く唇を噛み締めた。


 すると、彼女が前を向いたかと思えば、急に歩みを止めては俺の方を見つめて静かに言った。


「確かに、ザルーザさんは凄いのかもしれません……ですが、私はNEETさんの方が凄いと思っていますから!」


 彼女の言葉に胸を打たれたのか、俺の胸の奥底が何か「ジーン」と暖かくなっていくのが分かった。


 彼女は間違いなく、ええ娘や……。


 と、俺はそんなことを思いながら、彼女の方へと向き直り、どこか吸い込まれるような、そんな綺麗な彼女の蒼い瞳を見つめてから、彼女に向けて言った。


「ありがとう。でも、闇ドルの方が凄いよ……」


「!……NEETさん?」


 一瞬、俺の言葉に対して、彼女は目を見開いていたが、ゆっくりと微笑んでくれた。


「そんなことないですよ。ふふ……でも、ありがとうございます」


 そしてようやく、ハバネラのお店に俺達は、到着したのだった。



to be continued

 



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