第29話
「闇ドル!」
「はい!
幻想的なアートが所狭しと蔓延る建物の中に全長2メートルくらいの奇妙な格好をした道化師が、1メートルくらいの大玉に乗っては「ぽんッぽんッ」と飛び跳ねながら闇ドルの方を見ては、まるで挑発でもしているかのように不気味な笑みを見せている。
前回のあらすじ……。
あの後俺達は、彼女が他のプレイヤー達から聞いて来てくれた、例の効率の良いイベクエに向かった。
そして今、俺達はそのイベント限定ボスに挑んでいる所である。
「キィ〜シシシシシシシシシィ……」
この甲高い不気味な鳴き声をしているモンスターが今回の目的で、イベント限定モンスター『道化師・ペティグリー』である。
闇ドルと同じくレベルは35で、イベント限定というだけあってか、そう簡単には討伐出来るモンスターではないらしく、得意の無属性を使ってプレイヤー達を苦しめているらしい。
とは言え、俺がその気になれば秒殺なのだろうが……。
と、俺がそんなことを考えては、道化師・ペティグリーの方に視線を向けると、今まさに、彼女が詠唱した『蔦の柱』によって現れた無数の蔦が、道化師・ペティグリーに向けて襲い掛かろうとしている最中だった。
「キ〜シシシシシシシィ……」
無数の蔦が、ペティグリーの胴体を捉えても、ペティグリーは常に余裕の表情をしていた。
そして、次の瞬間……。
「キ〜シシシシシシシィ……ハィヤァアァア!」
「え!? きゃあぁあ〜!」
ペティグリーが、掴まれている自分の胴体をマジックの如く切り離すと、見事に蔦から逃れると同時に、彼女に向けて無属性の追撃をお見舞いした。
「闇ドル! 大丈夫!?」
「は、はい! 大丈夫です! とりあえず、治癒魔法で回復します!」
「分かった!」
「
「キ〜シシシシシシィ……」
しかし、ペティグリーが闇ドルに対して一切追撃の手を緩めることはなく、不気味な笑みを浮かべ続けては、嘲笑うかの様にして彼女の方を見ていた。
そして、そこからはジリ戦が続くと戦い慣れしているペティグリーが優勢な展開が続き、徐々に彼女のMPが乏しくなってくる。
「はぁ……はぁ……」
「闇ドル! 大丈夫!?」
「は、はい! 大丈夫です! まだ私、やれます!」
「無理は禁物! OK!?」
「はい!」
俺の問いに彼女がそう答えると、彼女は、そのまま深呼吸をしては呼吸を整え始めた。
「行きます!
「キシシシ!?」
やがて、先程まで余裕の表情を浮かべていたペティグリーに次第に焦りが見え始める。
「まだまだぁ〜!
「キ、キシシシシシ……ハィヤアァア!」
お、おぉ!! やるじゃないか! 闇ドル!
彼女もペティグリーの行動パターンがわかって来たのだろうか、ペティグリーの行動パターンを先読みしては、今度は彼女が徐々にペティグリーを追いつめる。
そして遂に……。
「これで最後です!
「グ……ギギギギギギ……シシシィ……」
彼女の詠唱と共に、ペティグリーに向かって炎を纏った瓦礫が幾つも飛来しては、ペティグリーが乗っていた大玉を燃やすと、乗るものを失ったペティグリーは、落ちて来てそのまま地に足を付けると同時に瓦礫と共に全身を炙られ、甲高い悲鳴と共に消失していった……。
やがて、勝利を知らせるファンファーレが鳴り響くと彼女は駆け足で俺の方へと寄ってきた。
「NEETさん! NEETさん! 私、やりました! 『大猪の森』以来、1人でボスモンスターを討伐しました!」
「いや、本当に凄いよ。あのペティグリーを1人で倒すなんて……」
実際問題、ペティグリーよりもレベルが高いプレイヤーでも、なすすべなくやられている事例はあるらしいし……コレは本当に彼女の努力と相手をよく見る洞察眼が優れているのだろう。
これが、持って生まれた才能って奴なのかな。
まぁどっちにせよ、彼女がこのゲームの『中心人物』になるのは時間の問題だな……とは言え、今はまだまだひよっこだけどね。
俺は、無邪気に飛び跳ねている可愛らしい彼女に向けて優しく微笑むと、彼女も俺を見ては、惹きつけられるような微笑ましい表情を浮かべては、「ニッコリ」と微笑み返してくれた。
「ありがとうございます。NEETさん……」
to be continued……。
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