第22話
「そうだ! 眼が乾いていた! 彼女……笑っているように見えたけど、心の底からは笑っていなかった!」
「えっ? アニキ、いきなりどうしたの!?」
俺は、先程起こった事を考えていると、無意識のうちに、つい考えていた事を口に出してしまっていた。
「あっ……なんでもない」
俺は、咳払いをし、何事もなかったかのように手元のお冷を一気に飲み干す……ことが出来ずに、半分くらい飲んで盛大にむせてしまった。
「ゴホッ!! ゴホッ!! ゴホッ!!」
「アニキ、大丈夫!?」
「おう、大丈夫だ! あっ、初音?」
「ん?」
俺は、気になっていたことを初音に尋ねてみることにした。
「amuseについて、初音が知っている事を教えて欲しい。その、世間的な知名度とか? ほら、あれだ! ファンになる以上……もっと、俺もよく知りたくなったって言うかさ?」
初音は、俺のその言葉に合わせるかのようにして、持っていたフォークとナイフを置いた。
「じゃあ、アニキに質問ね? まず、amuseの知名度ってどれくらいだと思う?」
「世間を騒がせるくらいの知名度だから、〇〇坂系くらい?」
「ブー! ハズレ! 確かに、〇〇坂系グループもめちゃくちゃすごいけど、はっきり言って、amuseとは比にならない程なんだよ!?」
「そ、そうなのか? 〇〇坂系グループは、テレビを見ない俺でも知ってるくらいだから、結構有名な方だと思ったんだが……。なら、amuseの知名度って一体どれくらいなんだ?」
初音が声のボリュームを上げて語り出す。
「まず、amuseは日本だけじゃなく世界からも支持されていて、しかも、その知名度はなんと世界的に有名な女性K-POPアイドルグループで知られる、あの
「げぇ! ま、マジかよ!? あっ、悪い! すぐ拭くわ!」
俺は、あまりの衝撃で、持っていた手元のお冷をテーブルにこぼす……。
せっせとテーブルを拭く俺を見ては、初音が溜め息を吐き、声を徐々に荒げる。
「でもね……そんな人気絶頂中だったはずのamuseが、突然の『無期間の活動休止』をさっき発表したんだよ!?」
「あぁ。そうだな……」
「私、そんなの……信じられないよ……嫌だよ」
さきのライブが終わってからずっと我慢していたのだろう。初音は人目を気にせずに俺の前で「わんわん」と号泣しては、テーブルに突っ伏した。
俺は、持っていたハンカチを、そっと初音の手元に置いては、初音の隣に移動して背中を優しくさすってあげることにした。
「……ありがと。アニキ」
「初音、無理しなくていい。泣きたくなったら、好きなだけ泣けばいい。そうやって、人は強くなっていく……そういう、生き物なんだよ、俺達は……」
「……うん」
……。
初音が、ある程度泣き止んだ頃合いを見て、俺達は喫茶店を出ることにした。
その後、喫茶店を出た俺達は、バスに乗ると、それから少し歩いて、ようやく博多駅へと辿り着いた。
博多駅には、母が車で初音を迎えに来ていた。
「アニキ! 今日は付き合ってくれてありがとね!」
「俺の方こそ、中々楽しかったよ。またな!」
初音と別れた後、俺は今回の事が気になったので帰宅路にあるコンビニへと寄り、amuse関連の週刊誌を購入し、自転車を漕いで自宅に帰り着いた。
「ただいま〜」
……。
シャワーを浴び、保冷剤を手に取った俺は、闇ドルからメッセージが来ていた事を思い出したので、部屋に向かいPCを開いた。
えっと〜……あ、これだな。
俺は、闇ドルから送られて来ていたメッセを開いてみる事にした。
闇ドル : NEETさん! 朝からすみません! 今度、時間がある時で構いませんので、一緒にレベル上げを手伝って下さい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
10:45
妹以外の赤の他人にこれまで頼られたことが一度もなかったので、少しだが、俺は内心嬉しかった。
俺が闇ドルに「俺でよかったら。明日とかどう?」という文章で送ると……。
ピコン!……。
もう直ぐ21時だと言うのに、秒で返信が帰ってくる。
闇ドル : こんばんは。私は、全然大丈夫です! あ、あの! よろしくお願いします!!
20:57
ニート駅前 : 了解です。なら、『始まりの街』に、AM:10時集合でどう?
20:59
俺は、明日の時間と集合場所をメッセで送信した後、深い眠りに着いた……。
to be continued……。
闇ドル : 分かりました。それで、よろしくお願いします!
21:00
闇ドル : あっ、それと……NEETさんにお話ししておきたい事があります……。私の素性についてなのですが……ごめんなさい! やはり、名前も知らない見ず知らずの方にいきなりこんな事を言うのは可笑しいですよね。すみません。
21:05
闇ドル : 『闇ドルさんがメッセージの送信を取り消しました……』
21:05
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