第18話

 アニメ○ト併設のとあるビルにて……。


「着いた! 14時前……うん! 時間も間に合ってる! ほら! アニキ! 早く早く!」


「あ、おう!」


 先程までご機嫌斜めだった初音さんは、ア○メイトに着いた途端、通常運転に戻っていた。


 スゲェな……流石は、アニメ○トだぜ……。


 そして、入り口のチラシを手に取った後、俺達は、エスカレーターでお目当てのアニメ○トのある7階を目指す。


 その道中、『まん○らけ』や『らし○ばん』や『BOOK ON』などがあり、ゲームや本が好きな俺は、途中立ち止まりそうになるが、当然、初音はそれを許してはくれなかった。


 一応、俺も頑張って抵抗はしたのだが両脚ちゃんがプルプルしてしまうのもあってか、上手く踏ん張れずに、抵抗虚しく初音にズルズルと連れて行かれてしまう始末だった。


「もぅ! そんなの後で見に行けばいいでしょ!! 今は、アニメ○ト!!」


「人気ゲームとか掘り出し物関連の商品とか入荷時に買っておかないと、戻ってきた時には売り切れてるかもしれないだろぉ〜!!」


「そん時は、そん時だし!!」


「そんな、殺生なぁ〜!!」


「ほら! 早く!」


「大体、『気になる物があるから!』って言ってたけどさぁ! それは、今すぐに行かないと買えないものなのかよ!?」


 俺の問いに対して、初音が無言で俺にチラシを見せてくる。


「……なんだよ?」


「アニキ! 今渡したチラシの1番下の文章を見てみて!」


「1番下?……14時半から特別ゲスト……『amuse』に会えるチャンス? amuse……って、そう言えば初音がこの間言っていたアイドル名だ……」


 と、俺がチラシに目を通しているところで、俺達は、目的地のアニメ○トに辿り着く……が、しかし、そこで目にしたのは想像を絶する光景だった。


「な、なんだよ! これは!?」


「予想はしていたけど、はるかに予想を上回っていたわ……」


 エスカレーターを上がってすぐの所から、店内にある仮設ステージの所まで、2列で構成された長蛇の列が読んで字の如く、大蛇の様に続いていた。


 恐らく、ここにいる人達のお目当ては初音同様、皆んな、その『amuse』という特別ゲストがお目当てなのだろう。


 長蛇の列の中では、各々が違った行動をとっていた。手元の時計を何回も確認したりする者もいれば、スマホのソシャゲ等をして時間を費やす者、中にはその『amuse』というグループの顔写真がプリントされている「大きなうちわ」を手に取っては、左右に動かし始める者……そして、光るペンライトの様な物を手にとっては、いそいそと準備を楽しむ者もいた。


 やっぱり、世の中には色んな人がいるんだよなぁ〜。


 だって、『みんな違って、皆んな良い』という言葉があるくらいだもんな……。


 昔の偉人さんは、よく人を観察していたんだろうなぁ……いやぁ〜流石ですわ!


 そして、ここで俺は「うんうん」と頷きざまに、隣にいた初音の方に視線を向けることにした。


 すると、初音もその場の空気に圧倒されたのだろうか、少し怯んでいるようにも見て捉えることが出来たので少し呼び掛けてみることにした。


「初音?」


「ひゃあ!? なんだ、アニキか……もぅ〜、びっくりしたし〜」


「なんだってなんだよ……なんか、俺で悪かったな!」


 初音のトーンからして、本当に期待ハズレだったんだろう……俺は、「少しだけ」肩を落として何事もなかったような風を装って、前に向き直った。


 少しだけだぞ!? 本当に少しだけだからな!? 別に、妹に残念がられたくらいで落ち込むような、俺はそんな男じゃないからな!


 ……うん。なんか、悲しくなるからもう、なんだっていいや。


 と、俺が言い訳じみた事を1人、心の中で呟いていると店内のアナウンスが鳴り響いた。


「あ……」


 それと同時に、素人の俺でも分かるほどの強力なオーラを放つ、衣装を身に纏った5人の存在が、セキュリティの人達に囲まれた状態でステージ上に現れる。


 そして、店内の空気が一瞬にして調和し始めていく。


 それは、先程まで、各々が違った行動を取っていたが、5人が現れた途端にペンライトや大きなうちわといった物を取り出すという、皆同じ行動をとり始めたのだ。


「これが、アイドルの力か……」


 と、俺がそんなことを呟いていると、隣にいた初音が突然、大声をあげた。


「あ、明日香さん!!!」



 to be continued……。





 


 







 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る