第17話

 結局、俺達は13時になるまで仕方なく、近くのベンチに座って待つことにした。


「ほらよ?」


「あ、ありがとっ……」


 俺は、初音と自分の分の缶ジュースと缶コーヒーを置いてあった自販機で購入し、それを初音に渡した。


「……」


 初音が、まだ申し訳なさそうにこちらを見ているので、その理由を尋ねることにした。


「さっきまでの元気は、何処に行ったんだ? 久しぶりに大好きなお兄ちゃんと『デート(笑)』なんだから、シケた顔なんてすんなよ?」


「う……うん」


 俺は、少し茶化すようにしたニュアンスで言ってみたのだが、初音は下を向いたまま、顔をあげようともしない。


 え? 初音、否定しなかったけど、俺のことマジで好きなの!? それはそれで嬉しいけど、それはそれで困る……。


 と、俺が自分の中で、そんなバカみたいな葛藤をしていると、初音がようやく顔を上げて俺と向き合う。


「アニキ……私のこと怒んないの?」


 俺は、初音の口から意外な言葉が出た事に一瞬驚いたが、すぐに取り繕い、初音が発した言葉の後に続いた。


「怒る? なんで?」


「え? 電車の時間……それに、アニキ私の為に両脚を犠牲にして……」


「待て待て! その発言だと、まるで俺の両脚ちゃんが無くなったみたいじゃないか!」


「え? 違うの?」


「ちげぇよ! 現に両脚ちゃんは、ここに健在だし、ただの筋肉痛だっつうの! それから、いらん心配なんかするな? 俺達は、兄妹なんだから、そんなこと日常茶飯事だろ?」


「あっははは!……そうだよね! 私ったら何を悩んでたんだろ! ごめんね、アニキ!」


「おう!」


 初音が一瞬、心なしかどこか悲しそうな表情を浮かべたようにも見えたが、気のせいだったらしく、俺達は電車が来るまでベンチに座って2人で談笑した。



   ーーーーーーーーーーーーーー



 博多駅にて……。


「アニキ、早く!!」


「お、おう!」


 俺は博多駅に着くと同時に、結局バスセンターまで初音に連れられ、その道中に結局走らされることとなった。


 ごめんよ!! 両脚ちゃん!! アイツの為にもう少しだけ頑張ってくれ!! 帰ったら、たっぷり冷やしてやるからな!


 俺達は、人混みを掻き分けるようにしてバスセンターに到着すると、タイミングが良かったらしく、そのままバスへと乗り込んだ。


 バスの車内で俺は、ずっと気になっていたことを初音に尋ねることにした。


「な、なぁ初音?」


「何〜?」


「実は、家出る前からずっと気になってたんだけど、そのナ○キのエナメルバッグの中には、一体何が入ってるんだ?」


 今度は、初音が俺を茶化すようにして言う。


「え〜? 何々〜? アニキ、妹のバッグの中身とか気になるの〜?? 妹の裸体の次はプライベートの詮索ですか? 流石はロリコン? と言うか変態?」


「なんでそうなるの……あれは、不可抗力だ! 大体、俺が麦茶を飲もうとしたタイミングで、お前が浴室から出るのが悪い!」


「アニキそれ、ほとんど自己中の考え方だし!! もう少しは、女の子の気持ちとか考えて行動した方がいいよ!」


「だぁあ! 俺のことはほっとけ! 今はそんなことより、そのバッグの中身だ! 普段から、外出の際は出来るだけ荷物を少なくしようと計算しているお前が、そんな大きなカバンを持って出ていたら普通気になるだろ??」


「///……」


 気のせいだろうが、俺の言葉に初音が頬を少し赤らめたような気がした……。


「そんなところも、見てくれてたんだ……」


 初音は何か言ったのだろうが、バスの運転手のアナウンスで掻き消されてしまい、俺の耳には何も聴こえなかった。


「ん? どうした?」


「なんでもないし!! バカ!」


「イテッ! いきなり、何すんだよ?」


 何故かよくわからないが、俺は初音に軽く胸を突かれてしまった。


「……着いたみたい! 早く行こ!」


「あ、おう」


 これも何故かよくわからないが、初音は目的地に着くまで、御機嫌斜めだった……。


「なぁ? 初音?」


「……プイッ」


 なんだよ。無視することねぇじゃんかよ……。



 to be continued……。




 










 

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