第16話
「アニキ〜! 早くして〜!」
「おーう! 今行く〜!」
初音から呼ばれて、俺が部屋を出ようとした時だった。
ピコン……。
突然、RNOのメッセージの通知が、PCを通して部屋中に鳴り響いた。
「……ん?」
天から譲り受けた類稀なる特殊能力によってRNO界隈でもぼっちを極めてきていた俺だが、これまで、運営の告知のお願い以外は、メッセージ通知等来たことはない。
ハバネラとは旧友だが、メッセージのやり取りなどしたこともないし、告知は先週したばかりなのでこの瞬間から、2つある可能性の種子は消失したこととなる。
その為、俺は恐る恐る、自分のPCを覗いた。
……$暗黒騎士$闇ドル?
なんと送り主は、闇ドルだった。
俺は、そのまま開いて内容を確認しようとしたが、初音が大声で叫んだので、仕方なく一階へ降りることにした。
「もう、アニキ遅いし! 早く行くよ!?」
「悪い、行こう」
俺達は、身支度を済ませ自宅を出ることにした。
ーーーーーーーーーーー
駅の道中にて……。
俺達は、2人乗りで自転車を漕いでいた。
勿論、言うまでもなく、ペダルを漕いでいるのは俺だ。
そして、地元でも有名な勾配の登り坂に差し掛かった時、後ろで何やらニコニコと笑みを浮かべては、俺の背中でゆらゆらと揺れている初音に、俺が尋ねた。
「はぁ……はぁ……そ、そういえばさ! で、電車って何時発なんだ?」
「えっとね〜! 12時半だったかな?」
俺は、手元の時計を確認し、覚悟を決めた。
「はぁ……はぁ……後、10分しかねぇじゃねぇかぁぁあぁぁあ!! うぉりゃあぁぁあぁあ!!!!」
「キャァァアァァア! ちょっと! アニキ!」
俺は、振り落とされまいと俺の背中に必死にしがみついている初音を少し気にかけながら、自転車をかっ飛ばして一気に坂を登り切った……。
はぁ……はぁ……。
前に護身術でやってた空手の脚力が役にたつ日が来るとはな! やはり、人間なんでもチャレンジしておくのは大事だと言うことだな。
そして、俺達は見事、ギリギリで駅に到着した……。
「アニキ! 早く! 早く! 電車来ちゃうってば!」
「はぁ……はぁ……お、おう!」
初音は、そう言い残して俺の前を突っ走って行くと、誰もいない階段を勢いよく駆け上がっては、我先にとホームへと掛けて行った。
「あ、おい! 初音!」
クソっ!
当然、頑張ってペダルを漕いでくれた俺の両脚ちゃんは、プルプルと痙攣しており、とても走れる状態などではなかった。
頑張ってくれ! 俺の両脚ちゃん! もう少しだ!
俺は、間違いなくこの日1番の貢献者であろう両脚ちゃんを奮い立たせ、なんとか駅のホームに辿り着こうとしていた。
そして、ホームへ続く階段の、最後の一段に俺が片脚を乗せたとき、手元の時計を俺はチラッと確認した。
この時、手元の時計の針は、間違いなく12時29分を差していた……。
しかし、ホームについて俺は、衝撃の事実を突きつけられることになる。
ホームへ先に着いていた初音が、変に共同不審な行動をしては、電光掲示板を眺めていた。
その初音が遅れて到着した俺を見ては、こちらに駆け寄り、申し訳なさそうな表情を浮かべては、電光掲示板の方を見つめた。
「あ、アニキ……その……」
俺は、初音が向いてる方を静かに目で追った。
「……」
それは、博多行き……『13時00分発』という文字だった……。
「ぬ、ぬわんだってぇえぇぇええぇえぇ!!!! 後、30分もあったのかよぉぉおぉおぉお!!!!」
初音の性格が『ずぼら』という事は知っていたつもりだったが、ここまでだったとは……。
こんなことなら、断らずに俺が自分で時間を調べておくべきだった……と、深く深く、俺は後悔しながら、ペシャンっと地べたに情けなく崩れ込んだ。
ごめんよ!!!! 両脚ちゃん!!!!
「あ! アニキ!!!!」
to be continued……。
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