第14話

〇〇の自宅にて……。


 彼女はベッドから起き上がり、光沢がはっきりとした、黒髪のサラサラロングヘアーを両手で解きながら、部屋の電気をつけては、ベッドに腰を掛けると、ただ一点を見つめた。


「……」


 彼女が見つめる視線の先は、自室の壁だった。


 その壁には、セーラー服が掛けてあり、その両隣には、女性アイドルのポスターらしき物が何枚か飾ってあったり、綺麗に切り取られた1枚の週刊誌のページも飾ってあった。


『超有名アイドルグループ〇〇 無期間の活動休止発表か!?』



 その、切り取られた1枚の週刊誌のページを見ながら、彼女が1人呟いた。


「はぁ〜もう一度、会いたいなぁ。もう、会えなくなるなんて、そんなの……嫌だよ……〇〇さん……」


 彼女は、どんどん緩くなる涙腺を抑えることが出来ず、遂には大粒の涙を何度も流した……。



   ーーーーーーーーーーーーーー



 翌朝、俺は床で目が覚めた。


 おかげで全身が筋肉痛だ……。


 俺は上体を起こして、軽いストレッチでもしようと立ちあがろうとした時だった。俺は、あることに気づいてしまう。


 なんと、丸まったティッシュが床に幾つか散乱していたのである。


「おぅふ……また、出ていたのか……」


 誤解を招かないように一応言っておこう。


 コレは決して、闇ドルの事を考えてそのまま「〇〇○ー」をしたとかでは無いぞ! 断じて違うからな!


 これは、つまりアレだ! ほら? 夜中に起こりやすいと言われている、『ハウスダスト』というやつだ! それで、寝ている間に寝ぼけながら、知らず知らずのうちに鼻をかんだのだろう。


 俺は、そう思いたい……いや、そうであってほしい。


 俺は、下半身に視線をやったが、その様な痕跡は見当たらなかったので、やはり、そうではなかったのだと確信した。


 と……。



 ブー! ブー! ブー!



 俺が、胸を撫で下ろしていると携帯のバイブレーションが鳴り響いた。


「ん?」


 電話主は、初音だった。


「……」


 俺は、電話主を確認すると、すぐに携帯の電源を落とした。


 その間わずか、1秒も立っていなかっただろう。


 もし、オリンピックに「携帯の電源早切り」という種目があれば、俺は間違いなく上位の成績を残せるだろう。


 と、その時だった!


「スマホの電源切んなし!!」


「ぎょぇえぇぇええぇ!!??」


 なんと、俺が携帯の電源を落としたその数秒後に、突然、初音が部屋のドアを強い力でこじ開けてきたのだ。


 ロックが掛かっていたはずだが!? なんつう馬鹿力だよ! てかコイツ、まじ俺のなんなの!? あ、実の妹でした……。


 俺は、突然目の前に出現した破壊神もとい、初音の方へ哀れみの視線を向けると、初音はニッコリと微笑んでから俺に尋ねてくる。


 昔とちっとも変わってないな。


 初音がニッコリ笑っている時は、「か・な・り」キレている時だ。


「ねぇアニキ? 今日、暇?」


 勿論、その状態の初音に対しての俺の答えはこうだ。


「お、おう! 今日だよな!? 全然空いてるぞ!? どうした? お兄ちゃんに久しぶりの人生相談か?」


「いや、私アニキに人生相談なんかしたことないし! 何処の妹と間違ってんだっつうの!!」


「ブベラァァアァア!!」


 俺は、初音の怒髪天を少しでも緩和しようしてみたのだが、どうやら失敗してしまったらしい。


 初音の言の葉が終わらないうちに繰り出された右ストレートは、見事に俺の左頬に炸裂した。


 その勢いで、床と睨めっこをする様な形になってしまった俺は、そのまま気を失ってしまうのだった。


to be continued……。


「あ、ちょっと! アニキ〜? もしも〜し! こりゃダメだ……」






 

 

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