第13話

そして、闇ドルを案内した後、ハバネラは自身の前に出現している『鍛冶屋』《アーナメント》のボタンを何個か選択して、完了マークを押した。


 すると、何処から現れたのか、俺達の前に突如『紫色の女性用ローブ』が出現した後、さらに、ハバネラが慣れたボタン操作でそのローブを闇ドルのアイテムボックスへと送って一言呟いた。


「よし! これで完了ね!」


 それからしばらくすると、闇ドルが試着室から出てくる。


「き、綺麗だ……」


 試着室から出て来た闇ドルを見た途端に俺は、反射的に椅子から立ち上がってしまった……。


 背丈は160くらいで、コバルトブルーがよく似合うボブヘアーに、蒼い綺麗な瞳。腰のくびれのメリハリはしっかりしていて、脚や腕は細すぎずに、華奢な身体付きをしており、胸は丁度良いサイズ感で、ローブのボタンの隙間から谷間が見え隠れしていて、見事にスタイルも抜群だった。


 前に見た時のお人形さんのような可愛い容姿とは打って変わって、今回の闇ドルは大人のお姉さんを漂わせる様な、そんな雰囲気に包まれていた。


 そう……まさに、「絶世の美女」そのものだった。


「おーい、NEET〜? 心の声が漏れてんぞ〜?」


 ハバネラが俺の方を見て言った。


「え? 嘘!?」


 恐らく、リアルでも、今の俺の顔は真っ赤になっていることだろう。


 と、闇ドルが、もじもじしながら俺達の方を見て尋ねてくる。


「NEETさん、ハバネラさん? ど、どうでしょうか? 私こういった、コスプレ?……と言いますか? 経験がないので……少し恥ずかしいです……」


「闇ドルちゃん!! 凄く似合ってるよ! ねぇ? NEET!?」


「あっ、う、うん。に、似合ってますよ! 凄く!」

 

「ほ、本当……ですか?」


「おーい、NEET〜? 急に敬語になってんぞ〜?」


「大丈夫ですか? NEETさん?」


「あっ、うん。大丈夫です。はい……」


 闇ドルのあまりの、変わりように俺は思わず、敬語になってしまった……。


 そして、俺が闇ドルの容姿に慣れるまでは、少し時間が掛かった。


 長年のNEET生活の弊害が、こんなにも、でかいとは……。


 そして俺は、軽く深呼吸をすると、アイスコーヒーを手に取り、それを一気に飲み干すと溜息を1つこぼした。


「ふう……」



  ーーーーーーーーーーーーーーーー



 NEETの自宅にて……。


「ふわぁ〜あ」


 俺は、VRゴーグルを外し、ベッドから起き上がるとその足でリビングへと向かい、時計を確認した。


 時刻は、午後11時を回っており、携帯には初音から5件の不在着信とLINEが……。


 あいつ、意外とツンデレなのかもな……。


「にしても、結構インしてたな〜。さてとっ! 今日は、何にすっかなぁ〜」


 俺は、身支度を済ませると、デリバリーイーツに電話をしてご飯を届けてもらうことにした。


 今日の夜飯は、ナポリタンスパゲッティとポテトサラダだ。


「うぉお! 美味そう! いっただっきま〜す!」


 あの後、公式PVPイベントが1週間後に開催されるとの情報がワールドチャットで流れたので、俺は準備をする為に、2人より先にログアウトすることにした。


 今回の内容は、前大会のようなポイント制ではなく、バトルロワイヤル形式で行われるらしい。


 まぁ、俺はいつも通りやるだけだが……。


「にしても……闇ドルさん……綺麗だったなぁ……」


 俺は1人、まだ余韻に浸っていた……。


 to be continued……。

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