第11話

闇ドルは、俺の方へ視線を向けると、またハバネラの方へと視線を戻す。


 闇ドルは、再びその言葉をハバネラに向ける。


「ハバネラさん? 一体、何があったのですか?……」


そして、闇ドルのその言葉に合わせるかのようにしてコーヒーカップを置いたハバネラも、闇ドルの方へと視線をやる。


「NEETが、いきなり! 勢いよく突っ込んで来るもんだから! 私達も、とりあえず迎え撃つことにしたんだけど……ぷっあっははは……」


 突然、ハバネラが机を叩きながら大笑いし始める。


「ど、どうしたんですか!? ハバネラさん!?」


「闇ドル、心配しなくていいよ。毎度のことだから」


「は、はぁ……」


 少し戸惑う闇ドルを見ながら、ハバネラが、また話し始める。


「闇ドルちゃん、ごめんねぇ〜? 私、もう、これが、おっかしくて、おっかしくて〜! あははは……」


「何が、そんなにおかしかったのですか?」


「いや、もうさ! その時のNEETがめっちゃくちゃ強くてさぁ〜! 400人いた私達のギルドを、たった1人で、壊滅的にまで追い込んだんだよ? 400人だよ? 400人!? これって普通に凄くない!?」


「流石は、NEETさん……確かにすごいです!! 凄すぎます!! それで、そのPVPの結果はどうなったのですか?」


「どんどん、目の前で私の仲間が倒れていき、最後に残った、この私とNEETの一騎打ち! お互いにMPが尽きて、そこからは、ジリ戦にもつれ込んだんだけど、どっちも決め手に欠け、タイムアップ。で、HPとMPを沢山保持していた、無名のギルドが優勝して、波乱の結果で幕を閉じたって訳……」


「え!? それじゃあ!? NEETさんと、ハバネラさんって互角なんですか!?」


「まあ……当時は、確かにそうだったんだけど……今は、私じゃ彼を止められないわ……」


「え? それってどう言う……?」


「恐らくこれは、私の勝手な憶測なんだけど、今の彼に膝をつけさせる事が出来るプレイヤーはいない!……なんてね! どう? 闇ドルちゃん? それが、NEETと私の馴れ初めよ!」


「なるほど……歴代最強だったハバネラさんと、そのハバネラさんと互角のNEETさん! 私! 感激です! こんな、凄い方達といっぺんに会える事ができたのですから! 私……」


「あっ、おい! 闇ドル〜? あっ、これはダメだな……」


「NEET? 闇ドルちゃん、どうしちゃったの?」


「心配ないよ。……そっとしておけばいい」


「……?」


 俺は、唖然とするハバネラの肩を軽く叩き、ハバネラに対して闇ドルが気絶しているという事を簡単に説明した。


 すると、ハバネラも納得したのか、闇ドルを店内のソファーに横にさせ、コーヒーを淹れに店の奥の方へと向かって行った。


 そして、店内は闇ドルの意識が戻って来る間、嫌じゃないむしろ心地良い静かさが包み込んでいった。


 ハバネラは、ホットコーヒーを、俺は、アイスコーヒーをお互いに笑みを浮かべて照れくさそうに飲み直すことにした。


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