第2話

「は〜い」


 ガチャッ!


「アニキ〜 おひさ〜!」


 ドアを叩いたのは、妹の初音はつねだった。


 俺とは、6つ離れている、「」だ。


 妹の方は、今は母親と一緒に住んでいるので、俺とは一緒に住んではいない。


 その為、母が用事でこっちに来る時に一緒に来ては、こうして、よく家に上がり込んでくるのだ。


 因みに言うと、俺と初音の容姿は全くと言っていいほど似ていない。


 どれくらい似ていないのかと言うと、俺が妹を紹介する時は「冗談は顔だけにしてくれ」と毎回の様に冷めた目をして言われるくらいだ。


 どうして、誰も信じてくれないんだ! 同じ遺伝子から産まれてるはずなのによ! 俺が並の精神力じゃなければ、とっくに人生ドロップアウトしてる所だぞ!?


 初音は容姿も整っているし、猫を被る性格だから近所では良い意味で話の種だ。それと、母から聞いたのだが初音は学校でも友達が多く、人望も厚いらしい…それに比べて俺はと言うと…。


 うん。悲しくなるから考えるのはやめておこう…。


 要約するとだ。


 初音は、"俺に無いものを全部持っている" という事だ。


 あと、これは母さんから聞いた話で、初音からは直接聞いてはいないのだが……。


 初音は、母さんの目の前で入学早々、同クラスの男子23人全員から告白を受けていたらしい……。


 まぁなんでも? 好きなやつがいるらしく、全員丁重にお断りしてたみたいなのだが……。


 その当事者が、「ニコニコ」と俺に笑みを浮かべながら、部屋の前で話しかけてくる。


「アニキ? 今、何してるの〜?」


 初音は、その透き通る様な綺麗に纏まった茶色のロングヘアーにお似合いの茶色い大きな瞳を「ぱちぱち」とさせながら、学生服姿でこちらを見ている。


「あぁ。呼吸をしている」


「いや、そういうこと聞いてるんじゃなくて……」


「あぁ。正確に言えば、身体に新鮮な酸素を取り入れて身体の外に二酸化炭素をだな……」


「もういいよ……頭、痛くなるから……」


 初音は、こめかみを押さえながら俺から視線を晒す。


「悪い悪い。んで、初音は何しにきたんだ?」


 初音は俺の方に視線を戻すと、照れ隠しのつもりなのか、ため息混じりに言う。


「……アタシは、お母さんの仕事でこっちに寄る用があったから、アニキがちゃんと生きてるかどうかをお母さんに見てくるように頼まれたっていうか……別に……私は……」


 初音はそう言うと、カールが掛かった髪をくるくると指で巻きながら、片足で反対側のふくらはぎのあたりを触っては、何処か落ち着かない様子だ。


 そわそわすんなよ……一応兄妹だろうが。


「おい、初音? もう見にこなくていいからって、俺がそうやって言ってるって、先週母さんに伝えてくれたんだろ?」


「だって……私が思うにアニキはたまに見に行かないと誰もいない所でひっそり死んでるかもしれないから……」

 

「どう言う理屈だよ! 俺は放し飼いの猫かよ! 兎に角、俺なら大丈夫だ! ほら、もう帰った帰った!」


 俺が眉間にシワを寄せながら初音に対して左手で「シッシッ」とあしらう。


 しかし、初音は俺に対抗しているつもりなのか?


 同様に眉間にシワを寄せては一歩も引こうとはしなかった。


「……帰るんだ!」

「いや!」


 部屋の前で俺たちが睨み合いを始めてから、その間、既に10分程経過していたと思うが、どちらも互いに引かない展開が続いていた。


 このまま時間だけが流れていくのだと、俺が諦め半分、そう思った矢先……初音が先に動いた……。


 きっと、初音自身もこのままでは、ラチがあかないと思ったのだろう……。


 いきなり初音が俺に『金的蹴り』という、世界共通(男限定)で「こうかばつぐん」であろう野蛮な戦法を繰り出してきたのである。


「……隙あり!!」


 初音から繰り出された、一切無駄のないその人蹴りは、綺麗な弧を描きながら俺の秘部へ……「うごぉおぉおおぉぉおお!!!!!」


 俺は、地面に倒れこむと、半泣き状態になりながら床を転がりまわった……って、デジャヴーかよ!


「うわぁ〜……痛そう。ごめんね?」


 初音は、心配しているかのようにわざとらしい演技を取った後、何事もなかったかのようにして、俺の部屋へと入って行った……。


 to be continued……。


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