第15話奴隷のドワーフ

 明日から実践訓練が始まるんですよと言うと、さっきまでもう一軒飲みに行こうと騒いでいた、ダインさんが帰ろうと言ってくれた。


 暫く歩いていると、子供の泣きじゃくる声が聞こえてくる。


 その声の方に行くと、高級そうな馬車と泣きじゃくる子供のすぐ後ろで、首輪を付けた血だらけのドワーフの男が倒れていた。


 その後ろに高級そうな服を着た男と、2人のいかつい冒険者らしい男がいて、武器からは血が滴っている。


「子供共々、奴隷ももっと痛めつけろ」


 冒険者らしい男が、剣を振り下ろすとダインさんが瞬時に、その剣を弾き飛ばしこう言った。


「道の往来で暴力を命じるとは、どういうことか話が聞きたい」


「馬車を横切って止めた子供を、叩きのめせと言った命令を拒んだ。奴隷を折檻しただけだ」


「私はカルマン子爵であるぞ、邪魔をすると不敬罪でお前も。ただでは置かんぞ」


「俺は警備兵のダインで、警備隊はこの町の領主グラン辺境伯の。直属である」


「子供だけでなく、奴隷への暴行はこの国では禁じられている。これ以上の狼藉は子爵様でも許さん」


 流石に領主の直属と言われて、冒険者共々馬車に乗り奴隷は捨てていけと、言って去っていった。


 俺が、ドワーフに近寄り何本かのポーションを、飲ませていると。


 騒ぎを眺めていた人達の中から、1人のヒーラーが近づいてヒールかけてくれたが、このままでは危ないと言われた。


 その時俺の頭の中に、話し掛けられた気がしたフローリと、たしかにあの人なら治せるかもしれないと思って、ダインさんに話し掛ける。


「このままでは、ドワーフの命が危ないので教会孤児院の。シスターフローリの所に運びます」


「わかった俺は、この子の親を探しこの場をしずめてから向かう」


(ご主人様、教会孤児院のところまで走って案内しますので。ついてきてください)


 自分の装備とドワーフの斧を、アイテムボックス(小)にしまってドワーフを背負って、リョウに付いて走り出した。


 孤児院についてドアのノッカーを叩くと、シスターリリーがドアを開けてくれたので、急患ですと言って中に入れてもらう。


 背負っているドワーフをみると、いきなりハイヒールをかけてきて院長先生を呼んできてと、他のシスターに呼びかけた。


「奥のベットに運びますよ、アームさんこちらにどうぞ」


 シスターリリーに、言われるままに奥に進み成人用のベッドに、ドワーフを寝かした。


 間もなくシスターフローリが、飛び込んできて診察して危ない状態じゃと言い、ハイヒールと唱える。


 そして、まだだ駄目だと言って目を閉じて祈りハイスペルヒールと唱え、少し間をおいて又診察をして暫くしたら栄養ドリンクを、飲ませるようにシスターリリーに言った。


「アームちょっとおいで、あのドワーフの男は今日の夜が山場だ」


「わしが治療したんだから、きっと助かるだろうな多分」


「フローリ様でも、多分なんですか」


「人は、死ぬときは死ぬもんじゃ」


「それはそうと奴隷だろ、あのドワーフは面倒な事に。なりはしないだろうな」


「後からやって来る、警備兵のダインさんが事の実情を説明してくれますし。保障もしてくれます」


「あのスケベで、お人よしのダインなら大丈夫じゃな」


 けなされてるんだか、褒められるだか良くわからない言い方だな、前になにかあったんですかと聞くと10年ぐらい前に、聖職者のわしを口説こうとしたとの事だった。


「一瞬な消し炭にいてやろうと思ったが、あいつも若かったし泣いて謝ったから許してやった」


 あぶなーい! 今でも、その癖直ってないんですが、もう女神様に祈るしかないかなこれは。


「あとなアーム、あのドワーフの男助かっても極度の栄養失調で。一週間程の安静が必要じゃ」


「治療費が3金貨で、1日に付き銀貨3枚もらうよ」


「治療費が、安過ぎじゃないですか」


「私が治療をしたんだし、とやかくは言わせないよ」


 金貨3枚と銀貨21枚を支払うと、必ず生きるとは言ってないんだが前払いしていいのかい。


「信じてますから」


 暫くすると、ダインさんがやってきた。


 院長は今お忙しいですからと、シスターリリーがかわりにダインさんに事情を聞いている。


 ドワーフが心配だと、椅子に座って見守っていたのだが、いつのまにか寝てしまって朝になって、シスターリリーに起こされた。


「院長が明け方に、もう大丈夫だと言って自室に寝に。行ってしまいましたよ」

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