第5話エルザさんと冒険者登録

 俺は、女将さんに許可を取って、宿屋の裏庭を使わせてもらっていた。


 剣術1を、確かめたかっただからだけど、剣など持ったこともないしまして、振ったこともない。


 でもいざ剣を抜いて構えてみると、それなりにしっくり手に収まった。


 子どものころ、剣道はやっていたが中途半端でやめて、段位もとっていなかったのにな。


 だがゆっくり振ってみると、それなりに形になっているようだった。


 これが剣術1の効果なのかな、中段と上段と下段に構えて振ってみたが何とかなったが、だが真剣は流石に重くて疲れた。


「アーム朝食できたから、はやく食べちゃいなリョウはもう食べたよ」


 女将さんにせかされて、食堂の席に着くと今度は犬耳の可愛いウエイトレスさんが、運んできてくれた。


 ここは天国か!心の中でつぶやいた。


 うーん相変わらずパンが堅い、スープというかポトフだなこっちは美味い。


 食べていると、犬耳の可愛いウエイトレスさんが話し掛けてきた。


「あんた、いいとこの坊ちゃんかい堅いパンはスープにつけて。柔らかくして食べるんだよ」


 冗談めかして言って、厨房のほうに入っていった。


 この宿あたりだな、可愛い獣人ウエイトレスはいるし、宿代は安いしダインさんに感謝だな。


 食堂を出ると、リョウが女将さんになでくりまわされていた。


 こいつ、本当に女将さんにテイムされるんじゃないだろうかと、心配になってきた。


(大丈夫ですよ、もうご主人様にテイムされてますし。複数人にされることは無いですから)


 え いつお前を、テイムなんてしたっけ記憶にないんだけど怖い。


(天界で、ご主人様と再会したとき特別に。女神様がやっといてくれたんですよ)


(魔力が、強すぎてビビりになってる以外は。凄い女神様なんです)


 お前の、女神様に対する忠誠心が歪んでいるように、思えるのは俺だけだろうか。


 そんなことより、今日はギルドで冒険者登録するんだった。


 宿を出ようとすると、女将さんに呼び止められる。


「こんな、時間でていくとはギルドで登録かい」


「なんでわかったんですか」


「朝から、あんな不格好な素振りを見せられたら。大体わかるよ」


「受付で、馬の尻尾亭のエルザの紹介出来ましたって。言ってみな悪いようにはされないよ」


「何で、そんなに良くしてくれるんですか」


「あんたが、名犬のティマーだからさ」


 そう言うと、店の奥に行ってしまった。


 エルザさんの、見た目は30歳前半に見えたが、引き締まったスタイルから20代後半にも見える。


 よし、今度こそギルドに行くぞ。


(それでは、道案内はお任せをシャキッとついてきてくださいね)


 シャキッとって、俺は野菜か何かか。


 そんなことを、思いつつリョウについて行くと、意外と早く10分ぐらいで目的の場所に着いた。


 2階建ての、横長の邸宅と言ってもよいぐらい、大きさの立派な建物であった。


 緊張しつつ中に入ると、受付が5つもありそれぞれの窓口に、美人のおねいさんが待機していた。


 一番すいている、3番窓口にリョウと並んでいると。


「ケッ あんな、ちっこい犬のティマーなんかが。並んでやがるぜ」


 好意的ではない、言葉が聞こえてきた。


 無視していると、受付の順番が回ってきて受付嬢が、綺麗な兎耳の獣人おねーさんである。


 なんと、天然のバニーちゃんに精神年齢がじじーでも、嬉しさがこみ上げてくるし嫌な言葉など、忘れてしまった。


「今日は、どのような御用件でしょうか」


「馬の尻尾亭の、エルザさんの紹介で冒険者登録にやってきました」


 その直後、受付嬢達を含めて周囲の者達がざわめきだした。


「エルザねーさんの、紹介かありゃただのティマーじゃないな」


 一様に、皆そのようなことを言い出した。


 うう目立たないように、しなきゃいけないのに女将さんて何者なんだろう。


(いいじゃないですか、なめられたらなめ返すものですよ)


 お前は犬だからな!


 ざわめきも、落ち着いたころ。


 受付嬢が、少し声をふるわせて問いかけてきた。


「ではこの用紙に、必要事項を書き込んでください」


「大変失礼ですが、文字は書けますか代筆もできますよ」


 なんか妙に、バカ丁寧な言い回しだなと思いながら。


「大丈夫ですよ、読み書きはできます」

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