【あなたの道】
「じゃあ行くか」
「うん、そうだね」
二人はのんびりとロキロキの街を歩いていく。目指すは北の門。背中には大きな皮袋を背負っている。
「やっぱり寂しいね」
「そうだな。だがこの街は今いい方向へ向かっている。私達みたいな化け物は必要ないさ」
「だね」
「安心しろ。私の方はティアとジュンで何とかしてくれる。お前の方はこれから一緒に探せばいいさ」
「玖宝具集めだね」
「ああ。お前の体を調べたり、どうにか出来るものもあるかもしれないからな」
「ありがとう」
「まぁ、ゆっくり二人旅を楽しもうさ」
北門には見知った顔が待っていた。ダニー、フライド、ダンケル、トトケル、アーサー、アルト、ティア、シューくん。
「行くのか、レイ」
フライドの問いにレイが頷く。
「そうか、元気でな」
「フライドさんこそ」
二人は握手を交わした。
「アンナちゃん、お父さんに会いに行かなくて良かったの? お城に来てくれれば会わせてあげられるよ」
「私の父さんはサイガさんだ。私達家族だろ? アルト」
「そうだね。家族だ」
アルトは嬉しそうに微笑んだ。
「二人とも元気でねぇ〜。大怪我したら許さないから♡」
「ピュー!」
「なら怪我はできないね」
「ティアは怒らせると怖いからな」
三人は笑い合った。
「じゃあな、みんな」
「皆さんもお元気で」
みんな名残惜しそうに手を振り、二人も手を振り返す。
「お前ら、ちょっとだけそこそこ大好きだ」
二人は門を抜けた。ロキロキから出て、待つのは広大な自然と大冒険だ。
「さて、どっちへ行こうか」
「僕、海ってものを見てみたい。きっと綺麗なんだろうな」
「ああ。とっても綺麗だ。私の次くらいにな」
「はいはい。アンナが一番だよ」
暖かい風が吹き、木々が揺れる。花の良い香りが漂ってきた。
「自然ってこんなに綺麗だっけか」
アンナは思わず深呼吸をする。
「この世界は最初から美しいんだよ。最初から最後まで、ずっと」
レイの言葉が今ならわかる気がした。
「お、二人とも遅かったな」
木の影から小包を持ったルカが姿を現した。アンナは呆れたような顔で言う。
「何だお前こんなところまで。痴漢野郎じゃなくてストーカーだったか」
「旅は道連れ世は情け。俺もついて行くよ」
「えぇ〜」
「嫌そうな顔をするなよミロス。折角弁当も用意してきたんだから」
そう言って持っていた小包を見せるルカ。
「…中身は?」
「キノコのシチューと梨タルト」
彼がそう言い終わらないうちに、アンナは包みを奪い取った。
「なら許可しよう」
そう言ってアンナはにっこりと笑った。
変異歹 ~sacrifice girl~ 赤座かえ @akazakae
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