【竜人】
湖の畔にアンナが青白い光と共に現れた。あの後一度地上に出て、レイの飛んでいった方向を確認したアンナはルカと共に彼の後を追いかけていた。そしてここら辺に着地したのを見てワープしてきたのだ。幸いこの湖には昔訪れたことがあった。
レイの姿はすぐに見つかった。湖を挟んで反対側に、黒い大きな塊が佇んでいるのが見える。元の例とは似つかない、異形の姿。その大きさは既に五メートルを越えていそうだ。
「待っていろ…」
再び青白い光に包まれ、次の瞬間にはアンナはレイの側に現れた。
近くで見るとさらに禍々しい。黄昏前なのに、彼の周りだけ夜みたいに暗い。その変わり果てた姿に、アンナは心を痛めずにはいられなかった。
「また会いましたね。アンナ・ミロスフィード」
アンナが苛立ったように振り返ると、そこには奇妙な人物が立っていた。白いローブで全身を隠しているような珍妙な姿だが、会うのは二回めだ。
「貴様、食堂にいた…」
しかしあの時と違って黒い筒状の布袋を背負っていない。
「少しお話ししても?」
「断る」
「私はあなたの事をずっと知っていました。とても特別な存在である、あなたを」
人物はアンナを無視して喋り始めた。
「あなたなら私達の味方になってくれるのではないかと思いましてね。そこの少年と共に」
「何者だ?」
人物は頷き、ローブのフードに手をかけた。フードが脱がれ、その顔が露になる。
「⁉︎」
「ええ。私は人間ではありません。地下に住まう竜人族の一人、シーロウと申します」
たなびく金髪、雪よりも白い肌。蛇のように細い眼光と、耳元まで裂けた口。口元には牙がずらり。耳は尖っていて鋭い。どこからどう見ても人類とはかけ離れた姿にはギョッとせざるを得ない。
「私達は言葉を解しますが、人間よりは動物に近い存在です。故に、他の動物や植物のように人間を憎んでいます」
「何?」
「あなたがた人間を滅ぼすのがこの惑星の総意です。人間は惑星を汚しすぎた。滅ぶべき種です」
「…で、私が味方になると?」
「あなたは人間の愚かさを知っているでしょう。私達に近い存在です。だからあの少年にも引き合わせた。彼に玖宝具の一つを渡してまでね」
「なるほどな。お前が色々仕組んでいたのか。あの少年は何者だ?」
「私達が作った兵器だ。記憶は失っているが、本能的に人間を憎むようになっている。あの姿は兵器としての覚醒の兆しだ」
「お前竜人って言ったな。レイのあの姿、黒竜と関係があるのか?」
「さぁ? それよりどうです? 彼と組んで人間を滅ぼしてはくれませんか? あの桃色の少女も非常に興味深い。きっとあなたと共に仲間になってくれると思うのですが」
「ティアに手を出したらお前を殺す。それかレイを殺しても良いんだぞ。そしたら困るだろ」
「あまり乗り気ではないようですね?」
「私が滅ぼすのはヒヨクのようなクズだけだ」
「ではあなたも人間のように滅ぼしてあげましょう。丁度彼の性能を確かめたかったところです」
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