1話目 過去からの来訪者
【ご注意】
この小説は、「グループSNE」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する「ソード・ワールド2.5」の、二次創作となります。
ソード・ワールド2.5 ノベル+シナリオ
ストーリーフラグメンツの過去からの来訪者を下地にしています。
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ここではない場所。
今ではない時。
3本の剣が造りし世界、ラクシア。
剣と魔法が息ずくこの世界。
そこには富や名声を求めて世界中を走り回る冒険者と呼ばれる者たちがいた。
そんな冒険者...人族と遥か神話の時代より、不倶戴天の敵としての存在、
そんな蛮族の中でも、その総数の大半を占めるのが、「妖魔」と呼ばれる者達である。
そんな数多くいる妖魔からの突然変異体が
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最近頻発している地震の影響で、地面が陥没し、長い間眠り続けていた前時代の遺跡が露出した。
遺跡探索は、冒険の第一歩だと言う者がいる。
遺跡探索は、冒険の華だと言う者もいる。
遺跡には巨万の富が眠っているとも言われているし、遺跡に眠る技術や知識を持ち帰るのは、文明復興のための使命だとも言われている。 約三百年前に滅びた
ラクシア世界全土にまでその影響を広げたこの偉大にして巨大な文明は、それこそ世界中に数々の遺跡を残していた。
しかし、そういった遺跡は大抵危険であり、
薄暗い奥の部屋には、異様な静けさが漂っていた。天井からの細い光が、埃を舞い上がらせながら床に届き、散乱する残骸をぼんやりと照らしている。その中には、仕掛けの番兵の残骸と思わしきものがあった。巨大なハンマーのような手や、球状の車輪が無造作に転がっており、彼らが最後の瞬間までこの場所を守ろうとしていた痕跡が残されていた。
「見ろよ、こんなに簡単に入れるなんてナァ!」
金属鎧を身にまとったゴブリンが、錆びた機械部品を手に取りながら笑った。
「こりゃあ、楽勝だゼ。なァ、アルム。」
「アギャッス!!」
彼の仲間たちも、戦利品を物色しながら談笑を続けていた。
「前に入った遺跡よりも全然手ごたえがないわね。もう少しスリルというかワクワク感が欲しかったわ。」
大鎌を担いだメドゥーサは少し不満げに口を尖らせた。心なしか髪の白蛇の動きがシナシナである。
「おいおいルプティ、そっちの部品は私のだぞ。」
使い古されたフードに笑顔の仮面を被ったフッドが冗談混じりに言いながら、ご機嫌に機械の残骸を蹴飛ばした。
「見なよ二人とも、この大きな魔動部品。街に持ち帰ったら高値で売れるかもな。」
「そうねインテゲル。街に潜入している他のメンバーに頼んでみましょう。」
彼らが油断しきっている間も、遺跡の深部からは微かに機械の音が聞こえてきた。まだ完全に息絶えていない魔動機の一部が、そのハンマーで遠い昔の使命を果たそうとしているかもしれないが、誰もその音に気づく者はいなかった。
「ちょっと休憩しようぜレプティ。こんな楽な漁りは久しぶリダ。」
ゴブリンがそう言い、
「そうしましょうか。ここで少しのんびりしてから、さらに奥を探してみましょう。
ローグ、魔力の回復に魔香草でも使ってくれるかしら。」
メドゥーサが同意し、彼らはその場に座り込んだ。
彼らの無警戒な態度は、遺跡が孕む本当の危険をまったく感じ取れていなかった。地震によって開かれたこの新たな入り口は、彼らにとって大きな機会であり、同時に未知の恐怖を孕んでいる場所でもあった。
その瞬間、遺跡の奥から突然轟音が響き渡った。振り返った妖魔たちの目の前に、長年休眠していた番兵の一体がガバリと起き上がった。赤い目が再び光り出し、巨大なハンマーを持ち上げた。
その場にいた全員が武器を構えたが遅かった。番兵のハンマーが振り下ろされ、ローグは瞬く間に吹き飛ばされた。衝撃音と共に彼の身体が壁に叩きつけられ、鈍い音を立てて崩れ落ち、瓦礫の下敷きとなった。
「ちょまぁあっ!?」
「ロォーグゥー!?」
笑い声は驚愕の声に変わり、部屋は再び静寂に包まれた。機械の番兵は、静かに元の位置に戻り、再び警戒態勢に入った。その赤い目は、次なる侵入者を待ち受けるかのように、冷たく光り続けていた。
普通のゴブリンでは原型が残らぬ一撃であった。
「痛ってえなゲボカスがァァ‼行クゾォ!アルム!」
「アギャッハァーー!」
だが、それは普通のゴブリンであればの話である。
彼は金属鎧に身を包んな重装騎士。
ゴブリンキングでも単騎で退けれる彼はその程度で倒れない。
瓦礫を殴り飛ばし、
「あ、馬鹿。もう!私達も突っ込むわ!インテゲル援護!」
「了解だ。私の魔動機術が上だってこの弾丸と鉤縄で教えてやる!」
そこに、魔神使いの魔法剣士であるメドゥーサと
魔動機術を操るフッドが襲い掛かるのだ。
三百年間警備を続けていた機械仕掛けの番人は、哀れ押入り強盗の前に敗れる事となったのだ。
「糞ッタレ~。」
ローグは痛む腕を押さえながら、傷を手早く手当てしていた。魔動機の一部を撃退したものの、いくつかの軽い怪我を負ってしまった。
彼は
「油断してるからだ。しかし、ここで行き止まりか?」
インテゲルは周囲を見渡し、光がない部屋の奥に目をやった。
妖魔たちは多くが暗視能力を持っており、闇の中でも周囲を見渡すことができたが、彼女は暗視を持っておらず道具に頼る必要があった。それを使用するにも魔力を使用するので暗視持ちに閉ざされたこの場所を詳しく調べる必要があった。
「この部屋は、実験施設のようだな。」
謎の機械が壁に沿って並び、床にも散乱している。奥には、人間が入れるほどの大きな円筒形のガラス容器がいくつか並んでいるが、どれも中身は空のようだ。
「なにか色々あるけど私達じゃわからないわ。魔晶石をあげるから調べてくれる?」
魔動機を使用した彼女は鉤縄を構えながら慎重に割れた容器へ近づいた。赤外線の視界の中、
「これは...ルーンフォークの製造場所みたいだな。
この容器はジェネレーターのようだ。」
ルーンフォークは、いまは失われた魔動機文明によって生み出された人造人間だ。その容姿は、人間とほとんど見分けがつかず、身体の一部が機械であることだけが唯一の違いだ。彼らは、人族に仕えるよう造り出されたために奉仕精神が強い種族で、魔動機文明が滅びて自由の身となったいまでもなお、自らが仕えるのに相応しい主人を探し求めているという。
「なんダ。んじャ、ここはそんなに危険は無イカ。」
学習能力がないのか、またしても油断した妖魔たちは前へ出る。
「それじゃここでちょっと休憩しましょうか……」
深いため息をつきながら、背中が重く感じられる。
しばらくは安全だと安心しきっていた3人。
急の戦闘に疲れていたため、注意が少し緩んでいたのだろう。レプティは、 目の前の石造りの台座に、無意識のうちに腰を下ろした。
だが、その瞬間——
[カチッ]
お尻に伝わる小さなままとともに、かすかに聞こえたスイッチの音。心臓が一瞬で凍りついた。まさか、ここでまた何かが……?
「レプティ?どうした?腹でも下したか?」
「レプティは食事は必要ないんだから下す腹もないだろう。」
焦りからか、のんきな二人の声が遠くに聞こえる。二人に声を掛けようと立ち上がった瞬間、
[ブスッ]
小さい針が飛び出し、レプティの尻に突き刺さる。
「フギャッー!!」
勢いよく立ち上がり、後ろを振り返る。台座には、苔に隠れた小さなボタン、そして飛びでた針はレプティの血が付いてる。
針がゆっくり台座に戻りしまわれていく。
その時、床下から低いうなり声のような響き始め、遺跡全体がかすかに振動し始めた。古代の技術が息を吹き返したかのように、天井や壁面に散りばめられた光が脈打つように強まっていく。
「ごめん、変なボタンを押しちゃった!」
「あの台座か。全く、レプティまで油断して。」
「ギャハハハハ!「フギャッー」だってよ。」
「アギャッギャッギャ!」
直ぐに武器を構え戦闘の準備をするが、敵の現れる気配はない。
だが、振動は大きくなるばかりだ。
何が起こっているとと3人とも疑問に思っていると、
『
「インテゲル!これ《魔動機文明語》よね?何て言いってる?」
「音ずれが酷くて一部わからんが、ジェネレーターが起動するらしい。」
「ってコトは、ルーンフォークか?」
暫くたって振動が収まると、一つのジェネレーターの蓋が開かれる。
重騎士のローグを
「「「
「赤ん坊……? いや、もう少し大きいかも……。」
「俺は大体冒険者しか人間を見なイガ、生まれた手でハなさそうダナ。
生まれたばっかはもっと不細工のはずダ。」
「判断基準そこ...?」
割れた巨大なガラス容器の中には、一歳か二歳ほどの小さな子供がいた。小さな胸には機械のような装置が取り付けられ、その装置から管が伸びている。生きているのか、死んでいるのかは分からなかったが、胸が動かなく呼吸の気配もない為、ほぼ絶望的だろうと彼らは判断した。
「私のせいかしら。」
「どちらにしても古い施設だ。しゃーない、しゃーない。切り替えていこう。」
「おシ!、これも遺跡漁リの報酬としテ今日の夕飯にすルカ。」
死にかけた赤ん坊を前に人間のする会話ではないのだが、残念、彼らは
ピクッ...
しかし、その手が微かに動いたのを見て、彼らは驚き、ルプティは慎重に子供を抱き上げた。
透き通るような白い肌、溶けたプラチナのように輝く髪。子供の体は意外にも柔らかく、温かい。彼らが助け上げると、子供は「ごほっ」と咳き込み、口から液体を吐き出し、大きく息を吸い込んだ。
レプティは驚きつつも、背嚢を下ろして中から清潔な布を取り出した。その間にも、幼子は身じろぎし、ゆっくりと目を開いた。オレンジがかった茶色の瞳が、不思議な輝きを湛えて彼らを見上げていた。
「ごしゅじん、さま……?」
幼子の口から発せられた
「「「マナを……注入せよ……?」」」
彼ら全員は口に出してつぶやいた。その瞬間、ほとんど無意識のうちに、自身の体内に宿るわずかなマナを幼子に向けて解放した。
「何だぁああああァアァアアア!?」
「アギャババババッババッァ!?」
「きゃあぁああぁあぁああぁ!?」
「ぐぅおぇええぇえええええ!?」
赤い光の糸のようなものが、彼らと幼子との間に結ばれ、すぐに消えてしまったが、胸の奥にはほんのりと温かい感覚が残った。それは幼子にも感じ取れるのか、その澄んだ瞳に淡い光が灯ったように見えた。
この出会いが、すべての始まりだった。
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