エピローグ

 六本木のとあるゲイバーでは、その日も常連の窪田がマスター相手に酒を飲んでいた。

「マサト君がいなくなって、もう一年かあ。マサト君、今頃元気かなあ」

 マスターがおかしな顔をした。

「何言ってるんですか、窪田先生。マサトは亡くなったんですよ」

「うん、でもさ、生まれ変わってどこかで元気にやってるんじゃないかなって、ふと思って」

「ああ、今どき流行りの、転生したらなんとか」

「マサト君もどっかに転生してないかな」

「絶世の美女に生まれ変わっていたりして」

「いいねえ、女装したマサト君、見たかったな」

「窪田先生だったら、どういう世界に転生したいですか」

「う〜ん、俺だったらやっぱり、飛鳥時代の日本がいいかな」

「好きですものね、飛鳥時代」

「うん、謎が多くて知りたいことだらけだもん。一番は、謎多き人物、藤原鎌足がどういう考えでいたのか、知りたい。鎌足と天智天皇ってどんな関係だったんだろうとかね」

「藤原鎌足ですか」

「古代日本って、高貴な人間は死穢を嫌うでしょ。天皇なんか、死人が出ると宮を引っ越ししたりするくらい。なのに、天智天皇って鎌足が死んだ三日後に鎌足の家に行ってるんだよ。現役の天皇が、親でも子でもない、臣下の遺体に対面するなんて、ありえないのありえない。これだけでも、二人はどんな関係だったんだろうって、興味湧く」

「ひょっとして、ラブ、ですかね」

「でしょ。興味深いでしょ。会ってみたいな、鎌足」

「フフ、会えたらいいですね」

「うん、楽しみだなあ。転生して藤原鎌足と会うの」

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