第3話 ツン……デレ?

□皇一たち


「君の守護兵たちがすごすぎてやることがない……」

「ふふふ。ちゃんとスキルをかけてくれているでしょう?」


俺達はここがダンジョンの52層であることが信じられないくらい気を抜いてまったり歩いている。

そしてスキルが効果を発揮したからか、少しは打ち解けてきた。

問題があるとしたらちょっと寒いくらいだ……


「なぁ、ローブの予備とかないのか?」

まだまだ先は長いので一応聞いてみたが……


「あっても貸しません!いえ、あるけど貸しません!」

「なんで言い直したんだよ!」

なんでそんなに顔を真っ赤にして怒ってるんだよ……


「そう言えば名前、なんて言うんだ?」

こうしてスキルが上手くかかったということは今後もチームに入れてもらえるとは思うから、一応聞いてみたが……


「あるけど、言いません!」

「なんでだよ!?」

どういうことだよこの女!

( *´艸`)ウシシ……みたいな表情で逃げるんじゃねぇ!


そこに1体の守護兵が寄ってくる。

「えっ?やりましたね、皇一さん。衣服がドロップしたようですよ」

「マジで?おぉ、ありがとう!」

なんて素晴らしい守護兵さんたちなんだ。

寄って来た守護兵の肩をポンポンと叩いて労った。

するとなぜか黄色く光る守護兵。


「えっ、それ……ちょっと待ってください」

「んん?」

なんだ?叩いたらまずかったか?


「まさか……その守護兵のステータスが20%くらい上がっています……これは?」

ものすごい勢いで俺に顔を寄せてくる女。


やめろ。結構好みの顔なんだから恥ずかしいだろ……今パンツ1丁なんだぞ?


「今、守護兵たちは俺のスキルの影響下にあるだろ?その場合、褒めたりするとなんでか知らないけどステータス上がるんだよ。絵梨華は"応援効果"って呼んでたな」

なんとか心を鎮めた俺は把握してることを説明する。


「えぇ?なんですかそれ?そんなスキル効果、ダンジョン協会の測定結果に出てなかったですよ?」

めちゃくちゃ頭にはてなマークを浮かべてる顔をしてるな……


「そうなのか?まぁ確かに最初からこうじゃなかったな……」

「ちょっと待ってくださいね。鑑定!」

「はっ?」

そして急に俺に魔法をかけてきた。どうでもいいけど先に服くれよ。


「これですね。スキルが増えてますよ。鼓舞、先導……なんかたくさんありますね。あと、なんですかこの職業……軍神って……?資料では隊長って書いてあったと思うのですが……」

戸惑ってるな。

くそっ、一回意識したらそんな表情すら可愛く見えるじゃねーか。


「んん?カッコイイだろ?この前見てもらったときに見つけて転職したんだ」

きりっとかっこいい顔を作って言ってやった。

俺に惚れてもいいんだぜ?


「アホですか?職業を変えたら弱くなっちゃいますよ!」

帰ってきたのは呆れた表情だった。


「いいんだよ、俺は自分で戦うスキルじゃないんだから」

「はぁ、まぁ言われれば確かに。その割り切りはすごいですが……そう言うことですね。調査していて不思議だったんです。なんか弱くなってないかなって。もともと弱いですが」

うるせぇよ!余計なお世話だよ!

俺は罵声をなんとか心の中で耐えた。


「でも、そのお陰なんでしょうね。スキルが増えてます」

「ふふ〜ん」

凄いだろ、凄いだろ?

もっと褒めてくれていいぜ。


「1つお願いなのですが、私のことも褒めてください」

「はぁ?」

なんだよ、俺を褒めろよって思ったけど、まぁいっか。


「効果を知っておきたいです」

ふむ。まぁこいつはかなり美人さんだし、絵梨華と違って寝る間も惜しんで褒め続けろとかいう訳じゃないし、やってやろう。


「……名前教えろよ。褒めるから」

「早紀です」

なんでそんなに恥ずかしそうなの?もしかして……


「早紀、君は可愛いな。スキルも凄い。信じているから頑張ってくれ」

俺は早紀の肩に手をかけながら耳元に囁いてやった。ふふふ、案の定真っ赤でプルプルしてる。


「うぅ……ありがとうございます。本当に私のステータス、20%くらい上がってます……」

「ふふーん」

さぁ今度こそ褒めろ!

さぁ!


「まぁ婚約破棄とチーム追放と実家放逐食らってますので羨ましくはないですが」

「うるせぇよ!てめぇ!って何すんだよ守護兵!離せ!」

「一応言っておきますが私に危害を加えようとすると守護兵が守ってくれるんです」

知らねぇよ!降ろせ!っておい、そこじゃねぇ!やめて……


ばっしゃーーん


俺は川に捨てられた。なんでだよ!





「もう、ただでさえパンツ1丁なんですから気をつけてくださいよね」

俺のせいなの?ねぇ、俺のせいなの?

もうそのタオルでいいから羽織らせて。


へっくしょん!


「もう、1枚だけですからね」

そう言って少し顔を赤くしながらローブを貸してくれた……そんな表情も可愛いなと思いながら受け取ったそれは……


可愛らしい猫のアップリケのついたピンク色のやつだった。


「なんだよこれ!」

「予備はそれなんですぅ〜」

「すぅ〜じゃねーよ!って違うからね、守護兵さん。これはただの口論だ」

「ぷぅ〜っくっく」

このアマ〜……


「というか見つけた衣服ってやつを着せろよ!」

「いいんですか?」

「いいも何もこれよりマシだろ!」

「バニーガールの衣装ですが……」

「ファーッッッッッッ○!!」

誰得なんだよ!




あっ……バニーガールをこいつに着せて今のローブ奪えば……


「バニーガール、キット君ニ似合ウヨ」

「守護兵さんお願い」



やーめーてー……何もしてないじゃん!


ばっしゃーーん!






へっくしょん!


「もう、バカなことしてないで行きますよ?」

くそっ





「頼りにしてるんだからちゃんとしてくださいね」

ほぇっ?

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