第2話 捨てる神あれば拾う神あり
「ふむ、すまんかったの」
ニヤニヤしながら言うんじゃねぇよおっさん!優しいと思ったのになんだよ!
「もう最悪です。お嫁にいけません」
まだ泣いてる女の子……うん、まぁこんなに若くて可愛らしい子だとは思わなかったし、もう思い出したくねぇよ。
「そこはこの四鳳院皇一くんに責任を取ってもらうとして、今日呼んだ理由を説明しよう」
なんで俺の責任なんだよ!ふざけんなよ!
可愛い子だけど、そういうことじゃねぇよ!
「皇一くんのスキルが予想通りの効果を発揮したなら、恐らく世界はまた変わるだろうからな」
ん?
俺の怒りも女の子の涙も全く気にせずおっさんが話した内容をまとめるが、まずこのおっさんはダンジョン協会の会長らしく、その時点で衝撃的だった。
えーと、はじめまして。
実家のコネを使って素性不明な人間にギルドカード発行しろとか要求してすみません……
200枚も。
で、この女の子はこのおっさんの姪っ子でダンジョン協会所属らしく、彼女主体のチームを作るために俺を呼んだらしい。
聞けばこの子は世界42位。
おっさんは83位……。
あの……俺は世界3600万位くらいだけどいいのかな?
「死ぬほど嫌だけどあなたのスキルが必要なのよ……」
ぷいっと顔をそむけながら言い放たれたが、1000人くらいのチームでも作るのか?
俺自身は戦わないぜ?
なにせ、俺のスキルなんて進軍と軍隊強化だぜ?
200人の部隊なら全員強化される上に、数が多ければ多いほど自分も強くなるからそこそこ便利だったけど、そもそもの個人戦闘力は3,600万位くらいで、はっきり言ってゴミだぜ?
いや、泣けてくるな……
「不思議そうな顔をしているが、まぁ実践してみたらいいじゃろ」
おっさんはそう言うとなんと俺を女の子と一緒に皇居ダンジョンに放り込みやがった。
ふざけんなよ、パンツ以外の服もよこせ!
「はぁ……どうして私はパンツ1丁の人と一緒にダンジョンを探索しないといけないのでしょうか……?」
「いや、他の服も返せよ!なんでパンツだけなんだよ!」
「もうダンジョンに入ってしまったので少なくとも……えっと今41層だから70層のボスを倒さないと出れません」
ふざけんなよ!!
死んだ……
70層ってなんだよ……
「この前200人引き連れて新宿ダンジョンの40層のボス相手に壊滅して命からがら逃げ帰ったんだぞ?」
その場にへたり込む俺……
「えっと、私は40層をクリアしてますし、あなたのスキルが予想通りなら70層なんてたいしたことないはずです」
「はっ?」
俺の頭の上から降ってくるのは幻聴か何かかな?変な子なのかな?
あと、スキルがダメだったらどうなるの?
「その目はやめてください。私はまともです」
世界13位と18位がいて他にも200人もいたのに、壊滅したんだぜ?
でも、こいつはそんな40層はクリア済みなのか……。
「パンツ1丁の人とずっと一緒にいたくないのでとっとと行きますよ。発現!みなさまお越しください!」
いや、好きでパンツ1丁なわけでは……
そんなことを考えてる俺の前でその女の子が右手を掲げてスキルを使うと、次々に光り輝く何かが現れる……
その数はどんどん増えていく。
5……
10……
30……
えっ?まだまだ増える……
これ100超えた?
もう見えねぇよ……
まだまだ増える……
なんか本当に軍隊みたいなんだけど……
どんどん増えていく……
「これで全部です。総勢1万の光の守護兵です!」
女が細っこい腰に手を当てて威張っているが……マジですごい光景だ。
光の守護兵とやらは出現するたびに規則正しく整列していった。
「さぁ、あなたのスキルをかけてください」
これ行けるのか?
俺のスキルの対象に?
行けるならすごいが……
マジで?
俺、役に立つのか?
「どうしたのですか?まさか婚約しないとスキルが発動しないとか言わないですよね?」
唖然としてる俺に女が素頓狂なことを言ってくる。
悪いな……ちょっと驚いたんだ。
「そんなことはない……ただ荘厳だなと……君、凄いな」
「せめて服を着ていたらそんな褒め言葉も少しは心に響いたかもしれませんね……」
うるせぇよ!それ俺のせいじゃねぇよ!
「行くぞ!軍隊強化!進軍!」
俺がスキルを発動すると、目の前の女の子と自分……
そして光の守護兵たち全てを青と緑の魔力が包み込む……
ははっ……すげえなこれ。
ちゃんと発動してるよ……
「予想通りです。これなら70層の暗黒騎士なんて余裕です!
行きますよ!
前進!!!」
女の子の合図で光の守護兵たちが進んでいく。
なんて勇壮な光景なんだ。
□九条絵梨華と四鳳院竜司(皇一たちが向かうちょっと前…)
「なんとか40層のボスを倒しましたわ!」
「前回のことは大きな痛手でしたがまずはクリアを喜びましょう。お疲れ様です、絵梨華さん」
興奮する絵梨華と、そんな彼女を労う竜司。
彼らは前回阻まれた40層を突破することに成功していた。
絵梨華、竜司の二人に加えて、藤堂礼、駿河春樹、富岡誠之の3人を加えたパーティーはスキルと魔力を活かした戦い方でなんとか白騎士に打ち勝った。
「ありがとう、竜司さん。今回は白騎士が出てきて幸運でしたわ。疫病神が消えたことで運も良くなったのかもしれないですわね」
そして既に皇一は疫病神扱いだ。
前回現れた黒騎士は戦いの中で敵を倒すごとに強化されていく厄介な特性を持っていたので、そういう意味では皇一は運が悪かったとも言えるが……
「前回までのように物量で押す作戦よりも数人で守りを固めて相手の動きの癖を読んで攻撃していく方法のほうが明らかに効果的だった……」
竜司が自信満々に戦いを分析している。
「そうですわね。亡くなった方々には申し訳ないことをしました」
「それもこれも全部、強引に進めたあいつのせいであって、絵梨華のせいじゃない。気に病むな」
戦いで自信をつけた竜司は絵梨華に対して敬語を使うのをやめるが、絵梨華は気にせず、むしろ将来の夫としての信頼を強くして竜司に寄り添う。
そしてもう皇一のことは過去の戦犯扱いだ。
チームで決めた攻略なので当然ながら絵梨華も竜司も積極的に数を集めて攻略に突き進んだのに、それらの事実は塗り隠してすべての責任を皇一に被せていた。
「前回の汚名はここで拭って私達は未来へ向かうのよ」
「そうだ。無事僕達が40層をクリアしたことで、あいつの無能さは更に際立つだろう。次は70層をクリアしてまずは日本の中で僕達の優位を見せつけてやろう」
彼らは少し休んで回復したあと、41層に向かっていった。
その先に眠るものの強さなど全く理解せずに……
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